行く先
要塞の様な研究所は静まりかえっていた。
泣く者も笑う者も言葉を発する者もいない
どれほどのヒソアリが解き放たれたのか 優秀な生物兵器のこの蟻は、ものの数十分もしない内に研究所に勤める人間を抹殺してしまった。唯一、新庄の研究室の人間のみを残して
十字はライに自分たちは何のために巻き込まれたのか問いただす
赤毛の女は無邪気に
「あなたの青い目が必要なの。逆らえばリリを殺すわよ」
不敵な態度のライは新庄にも、
「あそこの部屋が怪しいね」
また無邪気に問いかける
新庄にとっては思いもよらない事が幾つも起こり困惑していた
国家秘密のカミカゼウィルス 完全体ヒソアリの存在を承知し攻撃してきた上に生物兵器の蟻を意のままに操り、Ai兵器をコントロールする
まるで神のようだ イヤ悪魔か、、、、
こんな事が出来るのは人間ではない、、、
まさか、、、、
新庄が閃いたと同じ頃合に
鎌の化物を殺した円盤型のAi攻撃ドローンのキルスイッチが作動し、シャットダウンすると、すぐに再起動する
再起動に意表を突かれ、手動でキルスイッチを入れようとドローンにライは近づく
そこに新庄が問いかける
「お前はイコール、、、、かぁぁ」
新庄の言葉がライに届くか届かないかの瞬間に、無数の弾丸が空を切り、熱を帯びて肉に食い込む
新庄と十字をかばったリリに再起動した円盤型攻撃型AIドローンがサブマシンガンの銃口を合わせ無数の弾丸を放つ
新庄は無数の弾丸を浴びて瀕死の状態だった
十字は自分をかばったリリを抱き寄せ、言葉も出ず震えている
リリの全身に開いた穴からは止まらぬ血液が流れ出し、体温を徐々に失っていく
リリの身体は徐々に死んでいった
俺がリリを殺してしまった、、、、
十字はライを憎むなどの怒りよりリリを巻き込んで殺してしまった自分の罪に押しつぶされてしまった
放心状態の悪趣味な革ジャンの襟を血まみれの新庄は渾身の力で引き寄せ
「ライをアイツを、、、、、、、」
新庄は悪趣味な革ジャンのポケットに黒い拳ほどのマシンを静かに忍ばせる
ライは手動で円盤型攻撃ドローンのキルスイッチを入れ、細切れの鎌の化物が残した、金属製のニードルガンを打ち込み、ドローンを破壊する
「これ以上、邪魔をするなイコール」
ライは無人ドローンの命を完全に絶ったのを確認すると
瀕死の新庄にカミカゼウィルスの保管してある厳重なセキュリティルームの解除を命令する
「ドアを解除すれば痛みから救ってやるよ」
新庄は笑い口から血を吐きながら答える
「ロックは暗証番号だけだ。暗証番号は※※※※※※※だ」
新庄は記憶だけが誰にも読まれず盗まれないと信じ暗記していた暗証番号をライに伝えた
ライは厳重なドアのロックが解除されたのを確認すると
待機させていたヒソアリを開放し用済みになった新庄にトドメをさす
新庄は無数のヒソアリに覆い尽くされ、絶命する
「もう痛くないでしょう」
この女は誰も救う気などない、、、、、
生まれつきの殺人鬼なんだ、、、、、
十字の直感だった。
正義感や人のためなどではなく
十字はリリの死と、自分の死期を感じ、腹が座る。
簡単に言えばムカついたのである。
十字は分厚いドアの前に立つライの目玉にコイン手裏剣を投剣すると
走り込みライに思いきりタックルし、女を厳重なセキュリティの部屋に押し込めると、引き戸の分厚いドアを閉める
十字はカミカゼウィルスが保管されるそれほど広くない部屋に自分とライを監禁する
ライは目玉を押さえながら血を流し怒ると、手先であるヒソアリを通気口などから無理やり厳重なカミカゼウィルスの部屋に侵入をさせようと試みる
十字は新庄から受け取った黒い拳ほどの
超電磁波小型兵器バグを一つしかないドアに取りけると
バグはドアの電子ロックを破壊し、中からも外からもドアは壊れ開かなくなった
「俺の目玉が欲しかったら、くれてやるよ ここから出れたらな」
外界から完全に隔離された部屋は人工知能もネットも存在せず、気密性も高く、虫の這い出る隙間もなかった
ドアが破壊され空調も止まり、完全な密室になる
十字を押しのけ、発狂したように絶対に開かないドアを蹴りまくるライに
「もっと暴れろよ 大事な酸素がなくなるだけだ」
十字は笑いながらライを蔑む
先程まで絶望していた この人間の死を恐れない態度にライの苛立ちは頂点に達していった
新しく生まれた生命体のライには
日本人が切腹を選ぶような、自己犠牲の精神は全く理解できなくて当然だったのかもしれない
十字は床に大の字に寝そべり、自分の死を受け入れた
ライは計算外の結末に精神が追い付けず断末魔の叫びをあげるのだった
いくら騒いでも、もう二人はこの狭い部屋から二度と出ることは出来ないのだった。




