黒本次郎
「人生はクソだ」
私は9歳のときに両親を失った
飛行機事故だった
私は叔父夫婦に引き取られ育てられた
学者だった叔父は私に食事を与え、勉学に没頭出来る環境を与え、何不自由のない生活を与えてくれた
叔父夫婦が愛情のない人たちだったのではない
ただ単に私が感じることが出来なかっただけだった
俗に言う 無償の愛というものを、、、
私には優秀という能力があったために、人の思いに主観というか損得というか、不純物を感じてしまう。
これには答えの無いことも理解していた
私はこんな思考があったせいか、生物学にのめり込んでいく
そんな折に妻と知り合う
妻は賢くはないが、愛嬌がある女でいつも笑顔で、笑みが似合う女だった
私は両親を失った後、初めて人の笑顔に不純物を感じなかった
「あなたは頭が良いんだから、ヒソアリの薬を作って、みんなを救うべきよ」
妻の屈託ない笑顔と不純物のない提案に、私は人々のためではなく、妻の喜ぶ顔のためにヒソアリの研究を開始した
私たちには子供も産まれ、私個人としても難関なヒソアリの研究にも充実感を感じていた
「人生はクソだ」
私は神に祈った、、、、誰でも構わない私の家族を救ってくれと祈った、、、、
私はまた家族を失った
人工知能無人トラックが暴走し、妻と息子の乗る車に、、、跡形もなかった
私は無になった
私は食事の欲も、睡眠の欲も、女を欲する欲も失った
当然、ヒソアリの殺虫剤の研究など全く興味がなくなった
そんな時に民間研究施設に勤める私に声をかける政府の人間が現れる
ヒソアリの殺虫剤の話ではなく、ヒソアリの生物兵器への運用は出来ないかという話だった
私は微笑した。ヒソアリは生まれつき生物兵器だったからだ
生物が誕生する目的は、子孫の繁栄のためである
しかし、ヒソアリの誕生の目的はテリトリーの拡大にあった
完全に何者かによって生存をコントロールされている
ヒソアリにオスはいない、一匹の女王蟻がオスを必要とせず、千個の卵を産み、そのすべてはメスである。
そしてその働き蟻のメスはまた千個の卵を産み、爆発的に増えていく
そしてキッチリ一ヶ月後に女王蟻が死ねとすべての働き蟻はそれに準じて死滅する
明らかに何者かの意図を感じる
更にヒソアリが緑色なのは葉緑体のためである、この蟻は光合成を行い、捕食は行わない。
そして毒をもって襲うのは人間のみである 捕食のためでなく、殺すために人を襲う
自然の摂理に反している。
自然に生まれた生物にしては不自然である
しかもこの蟻は死滅した後にゲノム編集され復活する
そのせいで昨年のヒソアリのために作られた殺虫剤は復活したヒソアリには効かない。イタチごっこだった。
私はこの事実を知っていたが殺虫剤を作り続けた。理由は言うまでもないだろう
おそらくどこかの大国がミスを侵して、このヒソアリは世の中に解き放たれたのだろう。よくある事だ。
それを今更、生物兵器にとスーツの男は私を誘う
「人生はクソだ」
私はそれならば人類を滅ぼすほどの生物兵器を生み出してやる事にした
ヒソアリの完全体を作るにはそれほど時間はかからなかった
私は時間に制約のないヒソアリを作り上げた。一度、解き放たれればすべての人間を根絶やしにするまで襲い続ける生物兵器を
そう言えば、家族が死んでから唯一楽しい思い出があった事を思いだした
私がヒソアリの完全体の研究している時に、新庄という男と知り合う
新庄は優秀な男で間違いなく私と同類だった
我々はよく幼稚な遊びもした
それは暗殺ゲームといい、大国の指導者をどうやって暗殺するという滑稽な遊びだった
私はシュミレーションとして、日本の首相を暗殺するための幻想の暗殺者を妄想した
普段は人間のように擬態しているが、
戦闘時になると硬質な外骨格な鎧に戻り、
カマキリを思わす鋭い鎌を持ち、
攻撃範囲を広げるために毒針を飛ばし、
カエルのような脚力で100メートルを二歩で飛び、そのジャンプ力で突然目の前に現れ、
トカゲのような再生能力をもつ暗殺者
人間の顔を選ぶときに少し迷ったが、よくテレビに首相とともに映るSP 警護官 七三の黒髪オールバックの男の顔を起用した
私はこの男にミンチと名付けた
幼稚な遊びだったが気晴らしには役に立った
話はズレたが、
私はヒソアリの完全体を完全させると、今まで以上の虚しさに襲われる。
ヒソアリなど何の意味もない。何故なら、何もしなくても人類はいずれ滅びるのだから、千年後か一万年後になるか分からないが、生物にはいずれ終わりが必ず訪れる。
私はこの虚しさに勝てなかった。
そして自分の身体に安楽死用の薬を入れる事を決める
私は自分の作品の完全体ヒソアリが無知な人間に渡る事が尺に触り、何重ものセキュリティをかける事にする
何重にもかけたセキュリティの最後が網膜に隠した生体フィルムに書き込んだ暗号だった
この網膜に隠した生体フィルム暗号は、生きてる人間でなければスキャン出来ない優れものだった
この時から生体フィルムのせいか私の瞳は青くなった
これで私が死ねば完全体ヒソアリは二度と世の中に出る事はない
私は死体処理業者を探し、完全に消滅させる契約を結んだ
私は薬剤を挿入し、見事に目的を達成する
しかし、思いもよらない誤算が生じる
死体処理業者が私の死体を消滅せず
契約を破り、死体を転売したのだ
私は激怒した
私はブロック細胞の持ち主で死体はかなりの価値があったからだった
私の網膜に仕掛けた暗号は
いつも時計ばかり気にして、悪趣味な革の上着を着ている男に移植された
それから私は何度もこの男に話しかけ警告しているのだが、この男を全く気づきもしない
なんて愚かな男なのだ、、、、、




