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ついに 魔王がログインしました。

いつもありがとうございます。


評価、非常に励みになっています。

 



  元いた世界のみなさん、お元気ですか。


 あれから早いもので2ヶ月が過ぎました。


 今は季節も夏です。


 その間に起こったことは、サイロと家畜小屋(大)とビニールハウスを建てました。

 ビニールハウスは建ててみたら、ガラス張りの豪華な温室でしたけどね。


 これでもう1年中、わたしの大好物のナスとトマトとカブと山うどと三つ葉とスナップエンドウとそら豆とか…が食べられる。


 フルーツとか木の関係も、温室に移したので、こちらも1年中。


 家畜小屋では、鶏とブタさんと牛さんを飼ってる。


 ブランドの。


 ブランドのお肉は買ってなかったと思ったんだけど、買ってたみたい。

 おっかしーなー。いつ買ったんだろう。


 これも毎日、すっごい値段で売れてます。



 それから、王子の提案は、フルーツについては契約を結んで、野菜関係はお断りしたよ。


 わたし、自分の以前の仕事場のことを思い出してね。


 鮮魚と野菜のお店。


 あそこの賑やかな雰囲気が、本当に大好きだったの。

 おばさんたちが新鮮な野菜をカゴにいっぱい入れて、嬉しそうに買い物してて。

 ご夫婦がわざわざ県外から来てくれたりね。


 ああいう風に、自分の野菜も買って欲しいなと思ったの。


【王室御用達】も本当に素敵だと思うけど、普通の家庭で、お父さんとお母さんと子供がみんなで食卓囲んで、お母さんが「今日の大根はいい買い物だったわー」なんて言って、喜んでくれる。


 わたしには、そういうのが必要だったの。


 だからアレクサンダーには、「フルーツを専属で卸す代わりに、野菜はあきらめて欲しい。買い占めたりしないで欲しい」とお願いしましたよ。


 聞き入れてくれたんだけど、うちのブランドのお肉を食べたら、また考えが変わったみたい。

 今度はこの町でレストランを開店するって言ってる。

 そして、そこでうちの野菜とブランドお肉を使いたいんだって。


 まぁ、買い占めないなら良いかな。





 そしてわたしは今…。


 温室で、盗人が来るのを待ち構えている!(どどん)


 どうも最近フルーツの収穫量が少なくて、これは誰かが盗っているんじゃないかと思って。

 温室に張り込んで、かれこれ2時間。午前0時を過ぎました。とほほ


 これ、いつ来るかわからないのに無理ゲーすぎたかなぁと思い始めたそのとき。


 温室のドアが開いたっ。


(来た来た来たっ!来たよっ!)


 小さな影が5つか6つ、トトトッと入ってきて木にするすると登り始めた。

 上にいるヤツがりんごをもいで、下にいるヤツに投げる。


 上手にキャッチ、できましたー☆


 他の木でも同じことが行われている。


(こ、こいつぁやり慣れてやがるぜっ!まさに組織的な犯行!)


 下のヤツが両手に1個ずつフルーツを握って待っていて、上にいるヤツが片手に抱えて降りてくるところを、1匹の首根っこ引っつかんだ。


「ごるぁああああっ!この盗人めがー!」


 大声を出してやると、一斉に『ぴゃーーーーーーっ!』とないて、わーっと逃げ出していった。

 掴んだヤツが手足をバタバタさせるが、離さないぜ!


『ぴゃ、ぴゃ、ぴゃーーーーー』となきながら暴れるソイツの顔を見ると、まぁ、思ってたとおりのヤツだった。


 ゲームで見てた、魔王の手下。


 ぷるぷるぷるとあまりに震えてるので、振動がこっちまで伝わってきた。

 ぷるぷるぷるぷるぷる、ぷるぷるぷるぷるぷる…

 こっちの腕も、ぷるぷるぷるぷる……。

 あんまりにも震えるもんだから、噴き出しそうになった。


 が、その前に手下の持ってた桃が落っこちた。

「あっ!」『ぴゃっ!』


 桃が落ちたことに思わず声が出たら、手下も「しまった!」って感じで声を出した。

 手下を放して「ありゃ~」と言って桃を拾うと、薄い皮にヒビが入りへこんでいた。

 当然売り物にはならない。


 手下は桃をダメにしたことがショックだったようで、ぷるぷるぷるぷるしたまま

『ごべっ、ごべなしゃっ、ごべんなしゃーぃ!』と悲壮感満載で温室を走り出てった。


 その後姿はまるで、ドラマで女が元彼に「あなたにはもっと相応しい人がいるわ。さよなら!」と言って走り去る場面を髣髴とさせた。


「今度からあんまり持って行き過ぎないでよー!」と声をかけたが、聞こえただろうか。


 はぁ…。寝よ寝よ。






 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






 翌朝、いつものように飲み物片手に昨日の売り上げをチェックチェック。


 今はサッカーコート二面弱、くらいの畑を所持してる。

 これくらいを維持しようかなと思ってる。ちょうどいい。


 それから外で、今日の出荷物を選別して出荷する。


 この時間が1日のうちで1番好きかも。

 何がどれくらい収穫できたのか知ること。

 それを確認するのが毎日楽しみで仕方ない。

 この綺麗に実った真っ赤なトマトの美しいこと。

 ピッカピカで、皮がパンパンに張って、新鮮そのものの姿。

「今すぐ食べて!」って言ってるみたいなの。

 これをどんな風に料理して、何と組み合わせようって考えるの、すごく楽しいのよねー。


 今日はトマトソースをたっぷり作って、ストックしよう。


 さぁ。

 洗ってスライスして、トレイに並べてオーブンへ。

 半生状態にして、トマトの旨みを凝縮させてからトマトソースに使う。


 トマトソースにドライトマトを加えると、味に深みが出るから、それを応用してみようって思ったんだけど、コレが正解。

 トマトが大量に手に入るから出来る事だなぁ。

 贅沢な使い方。

 うふふ。


 トマトソースに使うトマトを、全部このオーブンで出来た半生状態のトマトで作る。

 塩胡椒だけで、こんなに美味しいトマトソースができるのかってくらい、美味しいよ。


 音楽聴きながら、大きなお鍋でトマトソースを煮詰めながら歌ってた。


 そこへチャイムが鳴った。


「はいはーい」


 火を止めて、ドアを開けた。


 目の前にいた、その人は。


 背が高くて、黒い髪を長く伸ばして、軽く後ろに流してた。


 黒曜石みたいに黒い目は、カットの美しい宝石のように輝いてる。


 長いまつげがまるでアイラインみたいに切れ長の目を囲んでた。


 身体に合わせて作られたような真っ白いシャツは、襟が高くておしゃれなデザイン。


 夜みたいな色のベストには、銀糸でものすごく繊細な刺繍が施されていた。


 そして夜みたいな色の、高そうなピシッと折り目のついたスラックス。


 そしてそして、その足元には、昨日の手下が隠れてぷるぷるぷるぷるぷるるるる…。


 それを見て、顔を上げて彼を見た。


「謝罪に来た。わたしはジュリアン。この世界では魔王と呼ばれている」






 WHAT’S?










?『ごべなしゃぃ…』


通訳「桃を落として大変申し訳なかった、とおっしゃっています」

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