表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/29

ただいま絶賛整地厨

 



「ふぅ~、コレでよし」


 身体を起こして出来栄えを眺めた。


 町でライトを大量に買い込んできたので、敷地のゲートのところから家までと、畑の区画ごとに設置した。


 広い敷地内、美しく整理された畑と家が、幻想的な光に浮かび上がっている様は圧巻だった。


 もう夜も11時過ぎてるしね。


 ライトは埋めるだけだし、昼間に太陽光で充電されるので手間なしお手軽よ。




 夕飯はリサーチも兼ねて、町のバー&グリルで食事をしつつ、住民何人かと話してきた。

 結果、わかったことは。


 まず、アイテムボックスは存在する。

 ただ、やはりというのか、わたしほどの量を所持できる人はいないようだった。

 ほとんどの人が二泊三日の旅行くらいなら、手ぶらで行ける・・・程度らしい。


 なので、自分の容量は話さなかった。


 ああ、でもみんなが使用できるってわかって、一安心。

 住民の高感度を上げるアイテムを、いつ逢うかわからないから持ち歩きたいのに、見かけたら隠れてアイテムボックスからコソコソ取り出して、なんてやるの面倒くさいもの。


 そして、鑑定はできないみたい。

【金】や【銀】なんていう評価は、他の人からしたら「コレは大きさも形も申し分ない」みたいに、元いた世界と同じような感覚なのがわかった。

 糖度計も利用されてるって。


 この作物評価というか、鑑定スキルに関しては、聞くのに苦労した。

「【金】の野菜って?どういうこと?」なんて聞き返されちゃったから、必殺笑って誤魔化すで「あんまり美味しいから、金メダルあげたいなって」とにっこりで乗り切ったわ。

 あぶなかった。


 農具についても、能力が付加しているものの存在なんて、考えてもいないみたい。

 普通に「A社のが良い」だの「長く使えるのはB社製だ」なんて具合に、これも元いた世界と同じだった。


 うーん。


 実に興味深い。


 何故なら、この世界は女神と魔王の概念があるから。

 ゲームではその姿を現さなかったけどね。


 ここでは教会へ行って、女神さまにお供えをすることができるの。

(あ、そういえばまだお供えしてなかったわ)

 お金でも作物でもなんでもいい。

 対して、魔王さまの方は、寝静まったあとに魔王の手下が現れて、作物をぶん盗っていく・・・という具合。

 またこの魔王の手下が可愛いんだよね。

 黒くて三等身くらいで、頭にはキリンさんみたいな2本の触覚が生えてて、くりくりお目々に大きな口で、尻尾の先が矢印になってる。

「ケケケッ」と笑いながら、大根とかを引っこ抜いていくのだ。


 それを町の人たちは「魔王さまに盗られるのは光栄なこと。それだけ美味しいということなのだから」と有り難がっている。


 どうも、女神さまも魔王さまも、善悪で分けられてなくて、同じく等しく有り難い存在ってことみたい。

 6月には女神さまを称える〈豊穣の感謝祭〉があり、12月には魔王さまを称える〈聖夜の宴〉が催されている。


 そんな世界だから、魔法なんかも存在しそうなのに、そうじゃないんだもんねぇ。


 と、いうことはだよ?


 あんまりサクサクやってるところは、見られないほうがいいね。


 ああ、でもまだ何も畑で収穫できてないし、さっさとアレもコレもやって、準備を進めたいのおおおお。


 こうなったら、家畜小屋はもう少し先に伸ばすしかないかなぁ。

 ウチの敷地でジョンさんがトンテンカンテンやってるのに、チェーンソーはまずいな。

 いや逆に、知り合いになった人たちが気軽にウチに顔出す前に、さっさと整地したほうがいいかも。


 早く果物の木を植えたい!

 そしてフルーツタルトが食べたい!




 ということで。


 翌朝は6時半にはもうギャンギャンバリバリよ。


 なんせ、敷地が広いもんだから、倒す木もたくさん。


 敷地内に川も流れてるしね。広い広い。


 どんどん整地して、牛舎と鶏小屋と、ビニールハウスを建てたい。




 さて、だいぶ庭がさっぱりしたところで、マンゴーや桃、林檎に無花果、ぶどうにサクランボを植えた。


 木は季節に関係なく、いつでも植えられる。

 あとは旬の時期が来たら、たわわに実ってくれるというわけ。

 あー!

 楽しみすぎるー!



 ちなみに、倒した木は勝手に薪と材木に分かれてアイテムボックスにしまわれてる。

 便利~。

 あとで薪は、ログハウス脇にある薪台に並べておかなくちゃ。

 薪がたっぷり並んでるのを見るの大好き!





 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





 午後、サンドイッチを食べたあと、また教会の裏の隠し階段から山へのぼった。


 お友達の白いリスちゃんに、パンダベーカリーのクルミ入りベーグルをお供えする。


 それからせっせせっせと、また【金】のベリーベリーを摘んだ。


 するとカサコソと音がして「ともだち、クルミ大好き」と白リスちゃんが現れた。


「コレ、森でみつけたの。おともだちはあげる」

 うん、白リスちゃんは「てにをは」の使い方がちょっとおかしいけど、可愛いからオッケー!

 白リスちゃんは、自分のことを「ともだち」と言って、わたしのことは「おともだち」と呼ぶ。

 しゃがみ込むとわたしは言った。

「ありがとう。大事に使うね。またクルミ、持ってくるね」

 白リスちゃんは身体ほどもあるクルミベーグルを両手で持ちながら、よたよたと去っていった。

「・・・きゃわゆすっ」




 山を降りたら教会へ。


 祭壇の後ろには、女神像があり、たくさんのキャンドルが灯されている。

 女神像の足元には、細長い足つきのお皿があって、そこへお供えをする。

 わたしは摘んできたベリーベリーを、山盛り載せた。

 指を組んで頭を垂れるとつぶやく。

「女神さま、祝福をありがとうございます」

 すると、お供えが光に包まれ、消えるのだ。


 んね?コレで魔法が存在しないってんだから、不思議よね。

 まぁ、それでいて人間が使えないってことで、余計に信仰心が深まるのかもしれないね。


 ところでこのお供え、しなくても別に良い。

 とくに罰があるわけじゃない。

 ただ、お供えすると必ず「女神の祝福」が畑に与えられる。

 ランダムで、収穫が早くなるか、収穫量が増えるかのどちらか。

 この祝福は、お供えの量や質、回数に比例するので、決して損をすることはない。



 そのあとパンダベーカリーへ。


 この間のパンの詰め合わせのお礼と感謝を兼ねて、摘んできたベリーベリー【金】を贈る。

【金】のベリーベリーは粒も大きくて、香りも良いし甘味も強いので、すぐに山頂のだってわかったみたいで、「わざわざ山の上まで登ってくれたなんて」と感激された。

 ハンクさんはゴリッとした感じの大男で、リサさんは赤毛の美しい大らかな美女だ。


 この先、【金】の小麦を買い取ってもらうために、好感度はしっかりあげておかなくちゃ。


 それからお店の茶色いパンを買って帰った。

 何故、茶色いパンや卵は特別で美味しそうに思えるんでしょうね。


 ミステリー。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ