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大工のジョン

 



  ぱっちりと目が覚めた。


 自分がとんでもなく広いベッドに寝ていて、昨日のことがよみがえった。


 ここは!


 異世界!


 ガバッと起き上がるとベッドの端に移動しながら頭を回転させた。

 朝からやること沢山あるから、効率よくやらなくっちゃ!

 着替えの為にウォークインクローゼットを開けた。


「うわああああああああ!」


 とんでもない量の服が、綺麗に整理整頓されて収まってた。

 それは、普通にプレイしているとまだ行けない隣町のブティックで買ったもの。

「うっ・・・。過去の自分に感謝」


 ◇今日のコーデ◇

 ボートネックの白Tシャツに、花柄のグレーのスキニー。

 ざっくり編まれたベビーピンクのロングカーディガン。

「可愛いいいいいい」


 って、悶えてる場合じゃない。


 キッチンでコーヒーの用意をしながら時間を確認。

 午前6時。

 よし。ちょうどいい。

 玄関を開けると、バスケットに入れられた焼き立てのパンが置いてあった。

 キッチンに戻って、カードを読んだ。


 ―――――――――――――


 ようこそ!ホーリーヒルへ!


 あなたが来てくれるのを、待っていたわ。


 ここはのどかで良い町よ。あなたも気に入ってくれるといいのだけど。


 このパンはわたし達の歓迎のしるしよ。受け取ってちょうだい。


 よかったらウチの店ものぞいてもらえたら嬉しいわ。


 パンダベーカリー  リサ&ハンク


 ―――――――――――――


 この町唯一のパン屋、パンダベーカリーのご夫婦からだ。

 このパン屋のパンは、全部【銀】の評価。

 わたしの牧場で【金】の小麦ができるようになると、この店に卸すことができるようになる。

 そして【金】のパンがいつでも食べられるようになるというわけ。


 バスケットにかかった布をめくると・・・。

 わたしの大好きなデニッシュやベーグル、フランスパンにブリオッシュがあった。

 ひゃっほーう♪

 めちゃめちゃ良いパンの香りがキッチンに広がる。

 早速カフェオレと昨日のシチューの残りをアイテムボックスから出して、朝食にした。

 いつでも出来たてが食べられて、ホントに便利。


 さぁ、いっぱい食べて働くぞ!




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ドッドッドッドッドッドバリバリバリバリギャンギャンギャーン


 昨日の夜やりたかった木を切り倒しての敷地整理。


 もう、斧ですらありませんの。


 チェーンソーですの。


 うふふ。

 うふふふふふふふ。


 泉の精に「あなたが落としたのは金のチェーンソーですか?それとも銀のチェーンソーですか?」なんつってなんつって。

「いいえ、泉の精さま。ただのチートチェーンソーです」なんつってなんつって。

 うふふ。

 うふふふふふふふ。


 そうしてチートチェーンソーで、あっという間に見通しをよくして、またチート耕運機でバンバン畑をおこした。

 区画を綺麗に分けて、苺を大量に植える。

 野菜もあらたにうどやアスパラガス、かぶにたまねぎ、そら豆あれやこれや。

 あ、当然みんな【金】の種ですから!フンスフンス!


 水をあげてると、ログハウスの方から声がした。

「おーい!ちょっといいかー」

 あ、あの人は。

 背が高くて、黒い髪で赤いチェックのネルシャツに黒いダウンベスト、ジーンズに赤い長靴。

 大工のジョンだ!

 この人に家の改装や、家畜小屋を作ってもらえるのだ。


 だいぶログハウスから離れたところまで畑を作ったので、走って戻る。

 ジョンさんは、わたしだけ走らせてるのが気になるようだったけど、二人で走り寄ったらなんだかそれもドラマの恋人同士みたいでおかしいし・・・。

 たどり着いた時には、ばつの悪そうな顔をしていた。


「やあ、どうも、すまんな。あー、俺はジョンだ。大工をやってる」

「どうも、ジョンさん。ユーリです。はじめまして」

「ああ、この町にようこそ、ユーリ」

 そう言って彼はキョロキョロと辺りを見回した。

「なんだか、すごいな。昨日引っ越してきたばかりだろ?キミ1人でここまでやったのかい?」

 目を細めて、怪しい者を見るような目で見られて、はたと考えた。


 実際、ゲームの世界とどこまでが同じなんだろう。

 アイテムボックスとかは?

 チートアイテムの存在とかは?

 それってこの世界でも普通のこと?


 わからないので、笑ってごまかすことにした。

「わたし、働き者なんです」

 にっこり笑って見上げると、ジョンさんは身じろぎして、前髪をかきあげた。

 さすがこの町のイケメン独身。

 髪の毛をかきあげる仕草も様になってる。


「まぁ、そのようだな・・・」

 もごもごと言うと、気を取り直したように、改築や改装を頼みたいときにはいつでも言ってくれと言うと、帰っていった。



 あぶないあぶない。


 どうなってるのか、もっと町の人がどうしてるか確認しないと・・・。

 みんなの前でアイテムボックスから物取り出したりして、大騒ぎになるのは御免だ。

 まだまだ木を切り倒して、家畜小屋を建てるスペースを作りたかったのだけど、仕方ない。


「あ~ぁ、早く牛を飼って、【金】のミルクとバターとヨーグルトとチーズが・・・欲しかったのに・・・うぅ」


 敷地内にライトを付ける為に、町に買い物に行くついでに、軽く調査しよう。








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