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チートだらけの牧場ライフ!  作者: ロミコ


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魔王の館

 



 お湯が沸いたので、ドリッパーにそっと注いでスグ止め、全体を蒸らした。

 それから細く細くお湯を注ぎながら、ゆっくりと円を描くようにコーヒーに落としていく。

 キッチンに、コーヒーの良い香りが漂い始めた。

 氷が詰まったガラスサーバーにお湯が落ちて、氷が音を立てて崩れる。


「モックルたちはどうしてるの?」

 カウンターの向こうで、魔王はやっぱり両肘ついて、頬杖ついて、わたしの手元をうっとり見ている。

 頬杖ついてる魔王とか、可愛すぎじゃない?

「モックルたちは、夜行性なんだ。夜9時ごろに起き始める。

 そして、12時過ぎて仕事に向かうんだ」


「あ、そうなんだ。

 じゃ、この間モックルだけ連れてきたのってなんだったの?」

 大ぶりなガラスのコップに氷を入れて、うちの牧場の牛乳を半分入れてからアイスコーヒーを入れる。

 先にコーヒー入れると、コーヒーが更に薄まっちゃうからね。

 アイスオーレは牛乳が先。

 魔王にグラスを出してから、自分の分は持って魔王の隣へ回る。

「お前のうちの牛乳は、濃くて美味い。うちに卸してくれないか。

 もちろん、支払いはちゃんとする」

「ははは。それは判ってるって。

 魔王がわざわざお金をちょろまかすとは思ってないから」

 それを聞いて、魔王がアイスオーレを噴出しそうになった。

「ちょろまかすだって?久しぶりに聞いたな!」

 そう言って、ツボったのかいつまでも笑ってる。

 そんなにおかしい?ちょろまかす。

 なんかあんまり魔王が笑うもんだから、わたしも恥ずかしくなってきちゃって、結局一緒に笑った。


「あの時はモックルがなかなか寝なくてな。

 昼間お前に逢いたかったから、一緒に連れてきたんだ」


『お前に逢いたかったから』

 ドキっとした。


「そ、そういうことかー。

 あれ、じゃあ、1番最初に来たときって・・・」

「ああ、謝罪に来たときだな?

 あれは、謝罪なのにモックルの都合に合わせて夜遅くに訪ねるのもおかしいと思ってな。

 かと言って、あんまり早くじゃ迷惑になるしな。

 だから、本来ならモックルには眠たい時間だったんだが、緊張してたみたいで・・・」


 モックルやみんなが目に涙を溜めてたのを思い出した。


「ふふ。わたし、人食い鬼みたいに思われてたね?」

「ははは。そうだな。こんなに可愛いのにな?」

 魔王はわたしのうなじに当てた手で後頭部をしっかり支えると、すばやくキスした。


 あっ


 と思った時にはもう、魔王が目の前にいて、唇がぴったり合わさっていた。


 その感じと言ったら。


 まさにぴったり口を塞がれてる感じで、それはもうそれはもう、気持ちよかった。

 唇が触れ合ったとたん、脳内から幸福物質がドバドバ出たに違いない。

 ふわぁ~ってなった。

 もうなにもかも、すべてがどうでもいいーの心境。

 気がつけば、両腕を魔王の首に回してしがみついてた。


 魔王はハードな口付けじゃなくて、唇を合わせただけだったけど、ああークラクラがとまらないー。


 魔王は顔を離してわたしの顔を覗き込んだ。

 わたしの顔に何をみたのか判らないけど、満足するものだったみたい。

 ゆっくり不敵な感じに笑った。

「やっぱり、思ったとおりクセになる唇だな」

 そう言って、キスしたばかりの自分の唇を、ペロリと舐めた。


 キャーアアアアア


 真っ赤になった顔を見られないように、魔王の肩に顔を埋めた。

 魔王は強く抱きしめた後、手を緩めてつぶやいた。

「あんまり強くすると、壊しちゃいそうで怖いな」

「・・・けっこう、丈夫で頑丈ですよ?」

 くっくっくっと魔王の肩が揺れた。

「お前が愛しすぎて、どうにかなりそうだ」

「・・・・・・・」

 なんて答えたらいいのか判らなかったので、腕に力をこめて魔王を引き寄せた。


 静かな中、ふとピーピーと音が聞こえた。

 ピー・・・、ピー・・・、ピー・・・

 わたしが気づいたと同時に魔王も気づいて、それから間を置いて発信源が判った。

 寝ているだいずの鼻がピーピーなってた。

 そして二人同時にだいずを起こさないように、小声で爆笑した。

 魔王が来て、さっきまでおおはしゃぎしてたから、疲れていつの間にか寝てたんだね。

 鼻ピーピー音に、こんなに癒されるとは。



 だいずを起こさないようにソファに移動したら、魔王が言った。

「いつでも遠慮せずに名前を呼んで欲しい」

「ぁー、それね」

「それだ」

「だって、なんか忙しい最中だったらどうするの?そういう事考えちゃって」

「お前より優先することなんて、わたしには存在しない」

 ・・・絶句。

 口がパクパクしてしまった。

 モテてる女子は、こんなときどうやって気の利いた返事をするのか問題がまた出た。

「あの、その、そう!そうだ。なんか軽くメールとか出来ないの?

 メルアド持ってる?」

「・・・持ってる。お前のタブレットにあとで入れておこう。

 だが、わたしはいつでも呼んで欲しいことを忘れないでくれ」

 ふ~~む。

「ねぇ、わたし、あなたがどこに住んでるかも知らないんだけど」

 魔王が、ふっと何かに気づいたかのようにわたしを見た。

「今から、うちへ来るか?」

「えっ」


 そう思った時には、もう違う場所に立ってた。

「わっ、わわっ」

 魔王が横で腰に腕を回して支えてくれた。

「ようこそ。我が家へ」

「うわぁ~~」

 わたしは天井を見上げた。たっか~い。

 どことなく教会の雰囲気を感じたのは、天井が三角で高い位置に窓がずらっとあるからかもしれない。

【魔王の館】から想像するような、古くて崩れかけたお城みたいなおどろおどろしいものでは決してなく。

 モダンで重厚な感じ。

「ここはエントランスだ」

 玄関ドアはやっぱり教会っぽい、観音開きの大きなドアで、床板はよく磨き上げられていてピカピカ。

 こういう複雑な床板の組み合わせ、なんていうんだっけ?

 あ、ヘリンボーンだ。

 壁は真っ白で、深い紫を基調とした大きな絵が飾ってあった。

 海のような、夜明けの空のような。美しいグラデーション。

 連作なのか、左右の壁にどん、どんとインパクトがある。

 それから床に敷いてあるジュータンが、シックなグレーに絵と同じ色合いの紫の模様がある、伝統工芸品みたいな素晴らしい品だった。


「案内しよう。こっちだ」

 背中に手を添えられて、わたしは回りに見とれながらふらふら歩いた。

「すごい・・・。綺麗・・・」

「ありがとう。わたしも気に入っている」

 エントランスからまっすぐ突き当たりの部屋に入ると、そこには素晴らしい眺めがあった。

「うわあ!海!」

 思わず大きな壁一面の窓に走りよると、暗い夜の海が見えた。

 海と空の間には、うっすらと、蒼と薄紫の雲のラインが見えた。

 右の方に灯台があり、灯りが海に差し込んでいる。

 左上には、三日月が見えた。

 月があって、まだ日の落ちた空の移り変わりと、灯台の灯りって、こんなに美しいものが揃ってる景色ってある?

「不思議な景色ね」

 後ろに立ってる魔王につぶやいた。

「そうだな。言っておくが、お前のものでもあるんだぞ」

「・・・・・。」

 それって、なんだか怖いことみたいな気がする。

 なんでそう思うのか判らないけど。



 そこは家族用のリビングルームで、来客用のは右手になんかあるらしい。

 うん、なんかが。


 家族用ってだけあって、すごくリラックスできる空間だった。

 大きなオレンジがかったベージュの革のソファ。

 座るともう立ちたくない。

 人を駄目にする系のソファだった。

「ふわ~。もうここに住む。このソファに住む」

 そう言ってクッションを抱きかかえて軽く横になった。

 うっとり目を閉じた。

 超気持ちいい。

 魔王がわたしの髪を撫でた。

「一緒に住むって事でいいのか?」

 からかうような響きがある。

 目を開けると、もう景色が違ってた。

「えっ?」

 身体を起こすと、巨大なベッドにいた。

 隣には魔王が片肘をついて、わたしを見下ろしてた。

「わたしの寝室だ」








次回からタイトルを変更して「うちの魔王がエロすぎる件について」でお送りしまーす。


ユーリ「変更しませんからあああ!」

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