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ニホンとは?

アレフブラハム帝国の軍組織は、王族を守護する親衛師団、議会が運用する帝国国防軍、貴族が保有する貴族軍で構成される。


親衛師団1.8万人、帝国国防軍100万人、貴族軍40万人であり、軍隊規模が100万人を超えると列強国に分類される。



アレフブラハム帝国、帝国議会では国防委員会が開かれていた。


「我がエルソローグ、極東の島国アラック上空を哨戒飛行中、ニホン国が保有する戦略兵器に遭遇。こちらが撮影した戦略兵器だ」


配られた書類をめくるとモノクロの写真が載せられている。


「全長推定40メートル、速度800キロ、高度推定6000メートル超!?」

「かなり速いな」

「おそらく爆撃機かと」

「超大型、高機動、超高高度飛行か......」

「アラック側の報告によればニホン国の哨戒騎だと」

「あり得ん!ワイバーンの4倍の速度、超高高度飛行など哨戒に必要な機能を大きく逸脱している。普通は戦闘機や爆撃機に求められる性能だ!」


議場は無秩序な発言が飛び交う。


「皆、落ち着かれよ」

「ランドヴァルド閣下……」


ランドヴァルド、帝国国防軍総司令官であり、軍務省長官。

帝国において史上初、平民出身で国防軍総司令官と省庁の長官となった。



「静かになったな。まずはエルソローグ伯爵、アラックとニホンの戦略的関係を突き止めた事を称賛しよう。次にニホンの戦略兵器についてはアラックを通じてニホンに対し即時運用停止、及び速やかに当該機全機を帝国への引き渡しを要請する。同時にアラックへ軍事行動の準備を進める。要請に抗った場合、アラックへ攻撃を開始する。これでどうかな?」


誰かが拍手をすると、議場全体が拍手の音に包まれる。


「我々もそれ以外には考えられますまい」

「さすがは閣下。皆が支持しておりますぞ」

「そうか?では、全員の署名で本件は議決させようか」


議会は満場一致だった。


「無駄な会議だ。方針すら出せん此奴らの戯言を聞かねばならんというのは」


会議を終えたランドヴァルドは小声で言った。



……………



「分かりました。殿下にも伝えておきます」

「よろしくお願いします」


粟田は受話器を置く。


「オズ、日本政府から報告だ。アレフブラハム帝国の軍事活動が活発化しているらしい」

「そうか」

「もしかして知ってたか?帝国本土から周辺までの中継する港で兵士、兵器、船舶、物資の輸送、周辺の港への集積が観測されたらしい」

「国王が何かをしている、とだけしか今は言えない」


オズはとても苦虫を噛み潰したような、その上歯痒い顔をしていた。


「そうか」

「すまない。だが、ニホン政府に対して防衛支援の検討を要請して欲しい。できれば秘密裏、もしくは別の方法で……」

「つまり?」

「他国からの軍事支援を独断で決定すれば俺も危ういからな」

「偶然を装うか……。あっ!いい事|(思い付いた!)」

「そうか?では相談役殿にお任せしようか」


オズはとても良い笑顔を浮かべて、粟田は細い目を見せる。


「王子っぽい口調、プレッシャーが胃に……」

「まあ多少は俺の側で不意の混乱を収束できるよう動いておこうか」


胸を小突き、オズは粟田を安心させた。


「それにしても防衛支援と軍事支援、よく使い分けているな」

「ああ、俺が考えるにニホンは建前の国なのだろう。武力は防衛と軍事に分けられるという理想だな。戦争への無関心とその可能性を考え、備えることへの拒絶。だが緊迫した状況下であれば戦端が開かれることはほぼ必然だと思うがな」


オズは苦い顔をしている。


「建前の国っていうのは合ってるし、防衛と軍事を分けて考えているのも間違いない。でも、戦争への無関心とか何も備えていないというのは違う」

「ほう」

「前の戦争が苛烈を極めた、あまりにも酷いものだった。だから、多くの人は、必然的に戦争が生じる事態に直視できない。たとえどの様な状況でも戦争を避ける手段は必ずあると思っている」

「あり得んな」

「だけど、現実を直視している人もいる。だから、自衛隊があって、強力な艦船も保有している。常に装備の研究開発、更新、情報収集も行っている」

「そうだな」


オズもこの点には同意した。


「民主主義は常に多様な意見を、多くの人の議論を経て、具体的な施策を決定する」

「気の長い話だ」

「議論の中では現実的でない、理想的な意見も当然出てくる。でも、実際の状況と照らし合わせていく内に、次第に困難という認識を共有する集団が増えて、別の方法を探る、という様になる」

「全員が理想家だったら不安だな」

「衆愚政治っていうこともある。でも、実現できていないと分かれば、議論に参加する人間を変えれば良い」

「国民は悟る、か」

「結局は議論に参加する人間は選挙で選ばれ、選挙には国民が参加する。責任も判断も、中枢から遥かに遠いと思っても、一定期間の間隔で必ず選ばれる」

「安全装置であり、権威層の粛正を血を流さず、時間を犠牲にして実施する仕組みか。過激な扇動に弱そうだな。時間だな、そろそろ雑談はお開きにしようか?」

「そうだな。結構頭使うから、得意じゃないけど」

「頭の体操にはなったんじゃないか?」


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