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勧誘と就職

「まずい!本部に外泊を伝えてない!」


窓から差す光は朝であることを意味していた。


「問題ない。引率代表に連絡している上、警護要員が派遣されている」

「という訳だ。カズマ」

「ありがとうございます。殿下」

「その畏まった喋り方はやめろ。あと名前もオズでいい」

「わかった。オズ」

「……」


タイガは複雑な表情だったが、何も言わなかった。


……………



いずも艦内では代表団が会議をしていた。


「32の貴族管轄地と16の中央直轄地、首都を含む王族管轄地で構成されている」


貴族管轄地は貴族の治める領地つまり貴族領。

中央直轄地は貴族などの特別な権威権力を持つ者で構成される中央議会によって統治されている特別区。

王族直轄地は文字通り王族の治める領地。


「大きく49の地域に分けられるな」

「権力構造についてはどうかな?」

「王族の権力は王族としてだけではなく、血縁者に公爵の地位を特権で与える事で貴族内部での権力構造を維持しています」


王族は、王族としての身分だけではなく貴族の身分をも同時に有している。

基本国王と妃以外はほぼ全員が公爵貴族だった。


「議会の議席数では王族と王族の血縁を持つ貴族が過半数を占めています」

「なかなか王族にとって硬い権力構造だな」

「王族の血縁を持つ貴族を以下、王系貴族と呼称します」

「王系貴族は貴族管轄地を16持っている。興味深い」


全ての面で王族が半数、過半数を占める構造に関心が集まった。


「ところで王子のオズメット殿下が随行員の一人に興味を示したらしいが」

「粟田 和真さんは一随行員で、経歴は……高校の中退と高卒認定とだけ」

「大卒ですら無いのか?」

「職歴は親族の会社で会計処理を手伝っていたようですが、給与を得ていないようです。あくまで家業の手伝いに留めています。専門学校を目指していたようですね」

「オズメット殿下は日本との外交について、相談役に粟田さんを要望しているそうだな」

「まともな学歴のない人間が王子の相談役など……」



……………



「という訳でカズマを相談役、俺直属の対日本外交顧問に推薦と要望を出した」

「……え⁉︎」


オズメットは和真に告げた。和真自身は硬直している。


「嫌か?」

「昨日の夜、日本の事を尋ねられたのは酔った勢いであって、例えば少子化は女性が働く様になっただけじゃなく、家族単位の縮小で祖父母が孫の育児に参加しない、出来なくなったと言う事もある。議員数にも地方の意見を議会に持ってくるという事を言う人もいる。官僚の仕事が過酷で理不尽な内容だと言うのもあるから、そんな酷い事ばかりじゃない」


和真は必死になって、昨日の失言を訂正する。


「やはり関心した。客観性のある見解を持っている。自身の意見だけで暴走しているわけでもない」

「これぐらい日本人ならみんな知ってる」

「俺自身、日本人が一億二千万いるとしても会える人数は限られている。その上、信頼できる者が目の前にいるのだ。俺に疑問の余地はない」


オズメットは和真を真っ直ぐ見た。そして目線を逸らす和真。


「そこまで口説かれると気恥ずかしいな……」

「口説っ……お前な!」

「お受けさせて頂きます。殿下」


呆気にとられた顔のオズメットにタイガは腹を抱えていた。


「ふふっ、一本取られたな。オズ」

「タイガ、何を笑っている!後で説教な!」

「それはないだろ!悪かった。オズ」

「いいや!撤回しない!」

「タイガさん、悪いね。後処理はよろしくお願いします」

「そんな……」


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