随行員たちの談笑
「まさか新鋭の軍艦で来て欲しいとか……」
日本政府代表団、随行員の一人として粟田 和真は同行していた。
「そうですよね。普通に考えれば、日本の軍事力を知りたいからだけど……」
同乗している若い女性がグループに加わった。
「だけど?」
粟田はその女性に続きを促す。
「初めての接触で、海上保安庁の巡視船に現地の人は驚いていたらしいし……」
「まあ、自分の国に他国の軍艦なんか招きたくないのが普通か」
「前の接触で日本の性格に確信を持つ事ができたとか……」
その女性は王国側が考えているであろう事を挙げる。
「えっ?性格?平和的とか他国の人がどうなろうが『戦闘』が起きればガン無視したり?」
彼らは軽く笑う。
「自衛隊も政府も大変だな」
「戻すけど、さっきのその性格って?」
粟田は続きが気になり、続きを促す。
「私が思うのが他国への接触に波風を立てない様に、慎重に行動することかな。後、そこの海軍と共同で海賊退治もしたでしょ?」
「そうだった。確か、40隻の戦列艦だったっけ?よく対処できたよな」
「ああ、あれって巡視船の機関砲の弾を軍用のに入れ替えてたらしい。転移災害とはいえ対応が早かった」
「でも、なんか関係ある?」
彼らはその女性の考えに意味を見出せなかった。
「そこの海軍と共同ってところ、海上保安庁だったら他国の領海での実力行使にその国に事前の同意を得るとかしたと思うの」
「まあ、慎重って事だな」
粟田は焦ったくなり、相槌を打つ。
「その姿勢がこの転移後の世界で一般的じゃなかったらある意味、日本って自分の国と衝突することが目的じゃない、むしろ細心の注意を払って、慎重に慎重を重ねて行動しているから、衝突することが選択肢にもないって考えるかも」
その女性は、転移後の世界の常識が日本と異なると考えていた。
「でも、わざわざ他国の軍艦なんか呼び寄せる必要なんか……」
「それはその国が何か問題を抱えてなかったらね。軍艦が必要な何か」
「また海賊退治?でも軍艦の目的って……まさか!」
「他国の軍艦で自分の国の敵を攻撃することは普通ないと思う。命令はできないし、頼れないけど、この世界の常識が違って古かったら、砲艦外交とかの」
「えっと、競争の相手国に見せつけて自国を守るとか、そういう意味?」
「自衛隊の護衛艦を使って敵対国を威嚇するつもりかも!」
「「……」」
「君、話に乗せるの上手いね!本当にそうかもと思えてきたよ!」
「ああ、一瞬完全に別の世界に入ってた!」
艦内では時折笑い声が上がりつつ、談笑していた。