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ゲルニカ連邦 Ⅱ

東方大陸の西沖から中央大陸南東沖に渡って広がる、セントイースト海


列強バスティア帝国海軍、第三基幹本隊


「何だ!あの船は!」

「艦長!とんでもなく巨大な船舶が接近しています!」


驚く観測水兵の視線の先には、島の様に巨大な艦艇がいた。

そして、計三隻が横並びに戦列を組んでいる。


「信号旗、確認!航行状況、戦闘意思を示していません」


報告を聞いた艦長が艦橋へ上がり、望遠鏡を覗く。


「なっ、揚陸艦ではないか!それにアレフと同じ飛行甲板搭載艦だと!」


ワイバーンを少数、観測騎として空中待機させ、戦況を円滑に把握できる、新たな揚陸艦としてアレフブラハム帝国が新規運用している実物を見ていた。


だが眼前のそれは、遥かに巨艦で、アレフの艦では無いとすぐにわかった。


「横の巡洋艦は、砲が一基しかない?」

「そもそも揚陸艦の運用前提は、艦隊による全周囲防護ではなかったか?」

「分からない……」


そしてかなり接近すると、あまりの高さに驚愕した。


「ビルでも船に載せたのか……」


「とりあえず、本部に報告だ!」

「了解」



ゲルニカ連邦北部、ウェハーヘルム連邦海軍基地


「あれがニホンの軍艦、強襲・揚陸艦と駆逐艦、巡洋艦か……」


「もう着いた……」


粟田が呟いた。


「粟田殿、全ての艦の規模が一回り、二回り大きくないですか?」


ハンスが粟田に尋ねる。


「我々はそう、呼んでいます。一応排水量とか、装備とかで識別してるみたいですよ?」

「はあ……」

「では、各種機器の荷下ろしを始めますね!」



ゲルニカ連邦議会


「何だ!ニホンのあの艦艇は!」

「揚陸艦って、飛行甲板搭載の揚陸艦ではないか」

「アレフの最新艦種だぞ!」


「甲板にオートジャイロがあったと報告を受けている」

「オートジャイロを運用した揚陸艦……」


「防空装備、戦車などを積載している、との報告がありました」


「戦車……」

「極東の国が戦車を保有しているのか」


「現在、連邦北西部沿岸に対空装備を、西部、東部戦線には戦車などを配備作業中。戦闘機は東部空軍基地、そして揚陸艦を基点に運用されるそうです」



数日後の夜間、西部戦線から連邦制空圏に侵入を試行する部隊がいた。


「今大戦に極東のニホンが参戦するに伴い、参謀本部は、今後連邦の防空網突破は非常に困難になると予測している。従って、今後の作戦立案に関わる軍事的要所、生産拠点を把握する為の偵察任務だ」


「隊長、極東の一国が参戦するだけで、戦況が一変するという事があり得るのしょうか!」

「それに我々は植民軍と違い、航空機を相当数運用しています。早々、覆せるものでは無いかと」


常識的に極東の一国が、列強による戦争の流れを変えられる戦力を用意できるとは考えられなかった。


「ニホンはアレフの最新揚陸艦を含む、十五隻を沈めている。それに植民軍のワイバーンを地上兵器で五十騎、撃墜している。一方、ニホンの損害は確認されていないそうだ。アレフが開示した確度の高い情報だ」


「アレフの最新艦を撃沈、それにワイバーンを撃墜……」

「あり得ないでしょう!地上兵器で飛行物の撃墜など」


ワイバーンや中央大陸で主流のプロペラ機などの航空装備に対抗する為には基本的に、対称戦力である同じ装備が必要だとされている。

対空砲や高射砲は存在するが、命中率が著しく低い為、地上の装備では航空戦力に効果的に対処できないとされている。


「後、アレフとクラウゼンが今大戦から離脱すると発表している。理由は、ニホンの参戦だと」


この無線を聞いた全員が沈黙した。


「……」

「……」


「まもなく連邦制空圏内だ。作戦開始!散開!」


この時既に、日本の護衛艦レーダー、地対空ミサイルの射撃管制レーダーは飛行編隊を捕捉していた。


「隊長!空中での爆破閃光を視認!」

「こちらも視認!」


「全隊員に告げる!既に二名が反応消失している!周囲に警戒せよ」


「近くで爆発音あり!」

「閃光視認!隊長、指示……」


「まさか……残存部隊に告げる、総員後退!総い……」


「隊長?」

「隊長が撃墜された!次席指揮官は誰だ!」

「副長は既に堕ちています!班長は?」


「わから……」

「誰かいないか?生き残っている奴は……」


「森林……本部、味方機が自分を除き、全て撃墜された!攻撃元も特定困難!作戦続行は困難な為、生存を優先しコード666bを実行する!」


ヒューム少尉は天蓋を開放し、飛び降りた。

無人になったプロペラ機は操縦桿が固定され、水平飛行していた。


まもなく上空を見上げると、噴煙を伴い飛翔する円筒が見えた。


そして、無人のプロペラ機に接触し、爆発した。


「あれが、ニホンの兵器なのか……はははっ!っははは」


ヒュームは突然笑い出した。


「あんな物があれば、航空機など最早必要ないな。ただの標的だ!はははっ!っはははっ!」


まもなくパラシュートを開き、森林へ消えた。

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