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転移災害後の日本 〜生存への試み〜  作者: かっちゃん
東方大陸、ウォンヤン半島編
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事前情報、未知との遭遇

佐世保基地所属のヘリコプター搭載護衛艦『いせ』と同基地所属のミサイル護衛艦『あしがら』、輸送艦『おおすみ』の三隻はウォンヤン半島に向かっていた。


「この画像って、航空写真ですか?」


粟田は、どこかの大陸の半島の画像を受け取った。


『航空写真ではなく、これは衛星画像です』

「えっ、でもまだ」

『固体燃料ロケット、イプシロンによって数ヶ月前に打ち上げられた、超低高度情報収集衛星から取得した画像です。既に三軌道面にそれぞれ一機の計三機、周期がおよそ一時間半、つまりこの惑星を一時間半で一周しています』

「打ち上げまでかなり早かったですね。ニュースで打ち上げ困難とか言っていたのに」

『単純に惑星の規模だけで推測すれば、自転速度がかなり速いので、惑星の重力圏を脱出する為にはかなりの速度が必要になります。これを第一宇宙速度と言いますが、これが地球の約十倍になると計算できます』

「それが可能になったのですか?」

『それが、高度50キロ以上に働く特殊な重力環境によって、発射体が加速されるらしく、打ち上げ性能を維持したまま従来ロケットでの打ち上げが可能だと判明したそうです。自分も専門ではないので、説明はこの辺りが限界ですが、特殊な重力環境はこの惑星を周回する衛星、月の影響だそうです』

「興味深い現象があるのですね」


この時点で既に日本政府は、今後の宇宙政策と予算の増額を決定していたのだが、粟田は自身のこと、シャハール王朝との国交開設交渉に集中しており、将来の宇宙計画など全く気にしていなかった。


『この画像が東方大陸のウォンヤン半島にある、シャハール王朝です』

「ここがシャハールですか。国王からは、貴族同士の争いで頻繁に国王が変わり、それに伴ってコロコロ国名を変えるので、国王の名前に王朝を付け、呼んでいると聞きました」

『国王直々におっしゃったのですか!』


担当の内閣情報官は驚いた様子だった。


「自分で聞きました。国王に」

『……』


反応が返ってこない。


「あの」

『あ、はい。いえ、申し訳ない。はい、続けます』


タジタジといった反応だった。


『既にウォンヤン半島から数人、文学作家や歴史学者とアラック王国の外交職員の協力の下、言語体系や社会情勢などを取得しています。同時にAI、人工知能へのインプットを行い、同時通訳は困難ですが意思疎通の高速化を試みています』

「現地人を数人って、一体どうやって?」

『用紙の提供と印刷の代行を報酬として提供しており、継続的な情報の見返りには、引き続き同様の報酬を提供することになっています』

「そんなことで……」

『実は、彼らは自身の作品を本にする為にはかなり高額な費用がかかり、本そのものが王族や貴族、もしくはお抱えの作家や学者だけが作製可能な、全く利益の発生しない市場環境だったそうです』

「そういえば、紙、インク、印刷はないから代筆って、物凄く高価だとアラック王国でも言っていました」

『彼らの市場では約数千万円の価値がある報酬を提供しました。ちなみに、日本ではインターネットでの発注でも数万円程度の内容でした』

「文明の発展とか技術の差って恐ろしいですね」

『ええ、同感です。彼らは販売して自分の研究成果、思想、作品を世に広めたいという志があるとの記載もあります』

「良い報酬の払い方でしたね」


粟田自身、関係者の拷問とか、賄賂で情報漏洩とかいろいろな事が浮かんでいた。


『政治情勢は、貴族が自身の利益を優先した政策を実行し、国王は権限を封じられている構図です。民衆は国家や官職に就く者、貴族や国王への不満があるようですが、真正面に国王が憎悪を受けているようです』

「大昔にはよくありそうな構図ですね」

『数時間後には艦船も到着します。ハーマン国王は側近のあなたのみを伴って、国王と密室で会談する予定なので、状況把握に注力して下さい』

「わかりました」



東方大陸ウォンヤン半島、東ウォンヤン港


「何だ!あれは……」

「島が移動しているのか?」

「あれが船だと?」


皆で働く人々が、未知の巨大な物体に驚愕し、接近するにつれて静まり返った。


「あれがアラックの言っていた、日本の軍艦か……」

「あれには一体何人の兵がいるのか?」

「港が制圧できるのではないか?」


港の守備兵が艦船の規模と、収容人数の推測から脅威を覚えていた。


「「静まれ!兵どもには畏怖の目を決して見せるなと伝令しろ!」」


怒号を上げながら、王朝海軍の東ウォンヤン港守備兵を統轄する将軍、テザ・シンは通達を出す。

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