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執務室の会話

王城には国王相談役執務室が新たに設置された。


「オズ、それにタイガまで、ここでくつろぐなよ!」


オズは応接用のソファーに横になっている。その隣でタイガは日本の炭酸飲料を飲んでいた。


「俺はオズの側仕えとしているだけだ。別にくつろいでなど……」

「ここはエアコンが効いているからな。快適だ、ああ」

「だったら、注文すれば良かっただろ!ちゃんと言ったよな!?」


この執務室の設備は、粟田が相談役に就くことが決定した際、整備された。

エアコン、照明、格調高い執務机や革張りの椅子、応接用家具一式などなど。


「聞いた時、これ程部屋全体が快適になるとか思っても無かったからな!それに結構金がかかる。というか、一相談役の執務室が国王の居室より快適とか」

「金がかかるって、それは断熱化改修があるからだ。エアコン自体は普通の家庭用の壁掛けだから特別高価でもない」


まだ王国には業務用エアコンは参入していない。


「ああ、だから王城中に設置することにした!だが、見積もりの工期が六ヶ月だった。建物が特殊で配管の設置費用が上昇、断熱化にガラス窓の交換まで必要だと」

「それはお気の毒だったな」

「だが良いモノを選んだ。廊下、吹き抜けまで空調が届くそうだ」

「全館空調……」


デスクトップに通知が入った。


「オズ、日本政府からだ。周辺海域から帝国の植民地軍が撤収したらしい。事前に聞いていた交易航路の海上封鎖も解除されている」

「タイガ、国交のある国全てに使者を送れ。友好国には経済と軍事を統合した、共同体設立条約の提案をする様に伝えろ」

「了解した」

「カズマにはニホン政府に約束が果たせそうだと。支援の要請も伝えて欲しい」

「わかった」


……………


数日後、粟田とオズ、タイガはいつも通り相談役執務室にいた。


「今日もくつろいでるのか?」


粟田は二人に呆れ気味に言う。


「ああ」

「俺はオズの側仕えだ。オズの隣にいるのが仕事だ」


いつも通りだった。


「そうですか。もう昼か?」


粟田はテレビのリモコンを操作して、チャンネルを公共放送のニュースに合わせた。


『……により、EV、電気自動車とFCV、燃料電池自動車の買い替え需要が増加していることが民間の調査会社が発表した調査結果で明らかとなりました』


「いつ見ても不思議なものだ。これ程薄い板で動きのある画を映し出すとは」


タイガは今となっては見慣れた反応をする。


「もう慣れた。タイガは機械オンチという事だ」


オズは覚えた日本語でタイガで遊んでいる。


「機械オンチ?馬鹿にしてないか?」

「いいや、常識的、新しいものを容易に受け入れない、保守的な者という意味だ」


タイガは雰囲気で察知するものの、確証を得られず抵抗できない、いつも通りの風景だった。


『次のニュースです。本日、政府は転移災害後の政治、経済、防衛、外交の基本方針、五ヵ年計画を発表しました』


『それによりますと、国内政治ではマイナンバー制度を活用した、全国民の労働管理の自動化、低所得者へのキャリアアップの積極支援、高度な技術……』


「マイナンバーとはあれか。全国民の情報を電子的に管理する、王国でも導入する予定の……」


オズは注意深くニュースを見ていた。


「ああ、公的な事務作業を円滑化、省人化、自動化を容易にできるから、役所の労働力を不足している企業に充てたいのだと思う」

「なるほど」


『防衛では、あらゆる防衛装備品とその運用を見直し、自動化技術、通信技術、AI、人工知能などを活用し、現在の隊員数を維持した上で、海外における自衛隊の役割や活動範囲を拡大させるとしています』


『外交では、アラック王国が有する他国とのコネクションを最大限に活用して、貿易を拡充し、関係を深化させるとしています」


「ニホン政府は約束を実行に移すようだ。我々も積極的に動く必要がある」

「ああ」


タイガはオズの側近として応えた。


「既に日本政府も国交締結交渉を始めた国もある。アラック王国があるアドラック大陸から南西に千キロ、東方大陸の半島にある王朝、シャハール王朝」

「あそこは閉鎖的な国だ。国内の情報を漏らさず、国外の情報を庶民に秘匿する事に神経を尖らせている。だがあの位置は今後、重要になる」


オズは微かに笑った。


次回から、東方大陸の半島、シャハール王朝編です。

よろしくお願いします。

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