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衝突の結末

「投票の結果、全三十票中、賛成二十票、反対十票。よって、国王弾劾案は成立致しました。よって新国王は継承第一位、オズメット殿下が即位されます」


帝国の軍事行動から半年後、アラック王国中央議会は現国王の王位剥奪を決定した。慣習法では現国王の王位剥奪に関する定めはなく、今回は中央議会での立法によって実施された。


「それでは第六代オズメット・アーク・ハーマン新国王、即位の宣誓を行います」


即位の宣誓、中央議会での王位の継承を確認したことを宣言する式典。


「わたくし、オズメット・アーク・ハーマンはアラック王国中央議会の継承要請を受託し、アラック王国の伝統と秩序を守り、発展を追求することを誓う」


宣誓の言葉は 代々受け継がれているが、今回初めて、発展を追求するとの文言が盛り込まれた。



中央議会の玄関口には、王国民が大挙していた。

そして、新国王が出て来る。


「王子!国王即位、おめでとう!」

「王子!今年の収穫、豊作だったよ!」

「水が!綺麗な水が飲めるようになった!ありがとう!」


ハーマン新国王は警備兵が食い止めている、大挙する王国民に近付き、握手した。そして、続々と手を触れていく。


「良かった。おお、豊作だったか。水道が開通したのか!早かったな」


「陛下、そろそろ」

「ああ、わかった。すぐ行く!」


ハーマン新国王は黒塗りの日本製自動車に乗り込み、議会を後にした。


…………



「カズマ!高地のオクマーダに水道が来たそうだ!」


執務室入って早々、オズは興奮していた。


「仮設の水道架橋が開発されて、短縮できたらしい」

「カキョウとは何だ?」

「架橋は陸の上の橋。まだこの辺りでも、北側と西側の道路に、小さい管の集まりが頭上にあったと思うけど」

「ああ、あったな。あれか……」

「細い管の集合体で配水して、地域毎に設置した貯水タンクに貯められる。常時減少量を計測して追加する仕組み。細い管の集合体はメンテナンス費用削減、何らかのトラブルで断水する可能性を大幅減、加圧ポンプの負荷軽減とか」


今のところ、王国の水道は首都中心部を除き、仮設高架橋と地上配水管によって整備されている。


「色々考えられているのか」

「まあでも、最終的に地下共同溝の中に水道管を設置する計画になってる」

「生活に余裕ができれば教育制度の導入にも着手したいな。日本の農業支援にある耕地面積もまだまだ限られている。未だに子どもは重要な労働力だ」



……………



アレフブラハム帝国、帝国議会では国防委員会が開かれていた。


「ニホン側の軍事支援を受けたと考えられる、王国の戦力は既に強固なものであった。こちらを見て頂きたい」


数枚のモノクロ写真が投影機に映し出される。


「これは名称不明。説明が困難ですが、艦砲に例えると射程二十キロ以上、命中十三発中十三発、威力は一発で艦艇を沈没。対空用もあるようで、射程二十キロ以上、一発のみの攻撃で命中、威力はワイバーンを撃墜しうるものです」

「我が艦隊はこの攻撃に晒され、撤退を決断した」


士官の説明の後にエルソローグ伯爵は説明がする。


「ただの艦砲であれば避けられたのではないのか?」

「そこまで威力を有する砲であれば、砲弾の重量も相当のものであるはず」

「射程が異常で、命中精度十割など聞いたことがない」


委員会参加の貴族や議員が批判混じりの反応を示す。


「我々は!それを飛翔する槍と呼んでいる。その槍は、海上を移動する艦船に進路を合わせて命中した。空中を飛ぶ哨戒騎には常に進路を変化させ、回避する騎を追跡し命中した。飛翔する槍は、追跡する能力を有するという事だ」


伯爵は説明を重ねる。


「私から良いかな?議長」

「ランドヴァルド軍務省長官、発言を認める」


ランドヴァルドは発言席へ移動した。


「エルソローグ伯爵の証言には、王国内の諜報活動や我々の情報収集艦によって得た観測結果などの証拠がある。アラック王国からの情報では、追従能力を有し、重砲弾並みの威力がある、槍の形状をしたそれはニホン国の兵器、ミサイルもしくは誘導弾というそうだ」


「そのような兵器が実在したのか」


伯爵も驚きを見せる。


「この攻撃に対処できる有効な手段を我々は有していない。これらの情報を事前に得られたことについて、我々はエルソローグ伯爵に感謝しなければならない」


「「……」」


議場は静まり返る。


「我々が選択し得る戦術は、アラック王国とニホン国に対して直接的な軍事行動を起こさず、水面下で情報収集や内紛を誘発する、くらいだと思う」


ランドヴァルドは難しい表情を浮かべ、発言が小さくなる。


「そんな消極的な事では帝国が舐められますぞ!」

「そのミサイルという兵器に対抗する可能性は無いのか!」

「そんなことで帝国の威光が保てると?」


消極的になるランドヴァルドに対して、一斉に批判する。


「帝国が滅ぶ、と思うが」


「「「……」」」


再び議場が静まり返った。


「我が帝国にはニホンのミサイルに対して、何の有効な対抗手段も持ち合わせていない。ミサイルに対する対称戦力どころか、帝国劣勢の戦略を覆す非対称戦力も存在しない」


「帝国劣勢、それは一体!?」

「帝国軍は世界有数の規模や質の高さを誇るのですぞ!」

「なぜ急に劣勢に……」


「ニホンのミサイルは、我々帝国にとって、全列強国にとって、完全な非対称戦力になり得る。先にも言ったが、ミサイルに対する対称戦力が存在しないのだ。反対にニホン国からすればミサイルは圧倒的な非対称戦力足り得るのだ。軍の規模など、何の関係も無い」


「ならば、早急にニホンを潰さなければならない」

「現地に爆撃機の準備はある」

「各種飛行兵器を投入すれば対処し得る数を上回るだろう」


「遠距離からの攻撃手段があり、ミサイルには追従能力があるのだ。遠距離監視手段が無いと思うのか?ニホンの騎種の識別能力を過小評価できるのか」


「どういう事かな?」

「物量戦では不十分だと言うのか?」


「爆撃機のみを狙ってミサイルが使われる可能性がある。その条件で哨戒騎だけが敵勢上空に達しても制圧までは不可能だ」


「……」

「我々に出来ることは無いのか」


「軍事行動を全面的に停止する事を前提に、諜報活動を継続し、強化する必要がある。最低でも五年間は停止状態を維持する必要があるだろう」


この会議で帝国はアラック王国と日本国に対する軍事行動の停止を決定した。

関連して海上に展開している植民地軍による海上封鎖も停止を決めた。


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