空から見た陸地
アラック王国上空、約4千メートル
快晴の青空。地上からは野鳥の群れが飛ぶ様に見える。しかしこの光景は、他国からの軍事行動であり、平和な一日とはほど遠いモノだった。
それは金属光沢を放つ装甲を装備し、しなやかな尾は鱗に覆われ黒光沢を放つ。
アレフブラハム帝国、植民地軍所属する竜騎士を乗せたワイバーンが編隊を組み、他国上空を飛行していた。示威的軍事行動だった。
アラック王国にはワイバーンのような航空装備は無く、上空を通過する様子をただ眺めるだけだった。
「ふぅ……寒!」
「やはり、上は冷えるな」
竜騎士の彼らは、分厚い防寒装備で全身を固め、ゴーグルを付けていた。
「この寒さ、下の奴らは知ることすらないだろうがな」
「当然だ。飛ぶことが想像、夢だろうからな」
「雪山で寒さを感じる方が余程簡単だな」
彼らの眼下にいる、地上の人々を嘲笑していた。
「ん“?」
遠くの空に黒い点に見える、機影を彼らの中の一人が捉えた。
「距離はわからない!急速接近する騎影あり!」
「あれは……何だ?」
機影は認識できるが、ワイバーンの類ではない。彼らは遠距離から、ワイバーン以外の速度を目測できる技能を持っていなかった。これが植民地軍の練度水準であり、本国の軍であれば遠距離からでも速度を目測できただろう。
「速い……」
彼らの遥か上空、高高度を飛行するそれは、大きく旋回している。
「何の目的だ?」
「おそらく……偵察か、同じ場所を集中して何かを観測している」
ワイバーンを含め、空中静止できない飛行手段ではその動作も似ていた為、推測できたのだろう。
「おおよそ、全長40メートル。速度は時速800キロ超と思われます」
「バケモノか……本国へ支援要請すべきだな」
直上まで接近すると、単純な目測が可能だった。
「しかし、アレに対抗できる装備を本国は保有しているのでしょうか?おそらく、首が風速で骨折しても不思議ではない速度です」
「ああ、だが我々には何もできない。アラック上空の示威航行をしばらく休止することも上申しようか」
「まさか、あのバケモノはアラックが召集したと考えているのか?」
「……ああ」
「「……」」