カエデと話をしよう
二週続けて、週一更新になってしまいました。書く量も増えたわけでもなし。
なんかここの所、こらアカンなレベルで時間が取れません。
HPよりもMPが減っている感じ。
誰か我に癒しを!
王子と魔法使いが瞬間移動らし魔法を使って消えると、久々に平和が訪れたような気がする。
異世界に来た当日から巨大な牛と喧嘩するわ、チンピラを叩きのめすわ、他人の宿屋を勝手に魔改造するわ、悪党を適当にぶっ飛ばして、最後には王子とか巻き込んで腐った貴族を完膚なきまでに撃滅した。
ただまぁ、銃弾や爆発のお世話にはなってないので、チームグリフォンの「全力」には程遠い。……そんな日はどっちの世界でも正直勘弁なんだけど。
今日も天気はいい。
リリーとカイルは今日も畑仕事に。アイラとリーナちゃんはヒューイを連れて買い出しに出てる。
もう、アイラやリリー、そしてこの「雄牛の角亭」にちょっかいをかけようとする輩もいなくなったはずなので、もう一人で行動してもいいはずなのだが、一度しみついた習慣というのはなかなか消えない。
あたしは、と言えば、大抵ジェルと一緒だ。深い意味も深くない意味もないんだけどね。ほら、チームグリフォンの男衆を見ると、カイルとはこー 食生活がまるで違うのがアレだし、ヒューイとは何かリーナちゃんに悪い気がして。
ジェルだと一切気を使わなくてもいいのがとにかく楽。なんたって楽。ジェルの方も気を使ってこないから楽。
今店内には背筋を伸ばして座っている元黒竜のサクさん。瞑想でもしているのか、目を閉じたままピクリとも動かない。後はジェルくらい。黒猫はリーナちゃんたちについていってる。後はジェルがバーチャルディスプレイを眺めながら、ポチポチとバーチャルキーボードを叩いている。
絵に描いたような暇な光景だが、そんな安らぎの時はあっさりと破られてしまう。
『おいこら、ジェラードはん! 聞いているんやろ!』
不意に聞き覚えがあるが、ここにいないはずの人の声が聞こえてくる。サクさんも片目だけ開いて、様子を窺っている。
「騒がしいですなぁ。」
コメントが雑だな、おい。
「面倒この上ないので聞こえなかったことにしますか。」
『なんかアホなこと言うとる気がするわ。でもこれ一歩間違えると、ウチが一人寂しく騒いでるだけちゃうか?』
「お、なかなか鋭い。」
「ジェル、相手してあげようよ。」
このままだと本当に一人寂しく騒いでる人になってしまう。
仕方ないですなぁ、とジェルがこちらのマイクのスイッチを入れたようだ。
「私はあなたの心に直接話しかけています。聞こえますか? 私の声が。」
声を作ったジェルが囁くように語りかけると、通信機の向こうで小さく悲鳴が上がる。
『アカン、こらジェラードはんの罠に引っかかってもうたか?』
……なんか状況がカオスになってきた。
「カエデ、聞こえる?
今のはジェルの悪ふざけだから気にしないで、は無理か。」
『お、ラシェル。
やっぱできるんやったな。……もしかしてウチのあ~んな姿やこ~んな姿を覗き見してたんかぁ? ウチの艶姿は安かないでぇ。』
「ツケはあるので?」
『何を言うかい! このカエデ様はいつでもニコニコ現金払い専門や!』
相変わらずハイテンションな人だ。
「……?」
ジェルが首を傾げる。
「どうしたの?」
「いえ、人の気配が……?」
出しっぱなしにしているバーチャルキーボードを叩くと、空中に画像が追加された。
「「お。」」
期せずしてあたしとジェルの声がハモった。
「そちらの女性はどなたで?」
『……なんやて。』
狐耳の後ろで、丸っこい耳の妙齢の女性が静かに見ていたが、ジェルに言われて驚いたような顔をする。
場所はあの暗黒馬車の中のようだ。カエデももう一人もいて画面が揺れてないところを見ると、今は動いていないようだ。
「えっと現在地は、と、」
ジェルの指が空中を走ると、また新しい画面が開いて、地図のような……じゃなくて、地図が開く。
暗黒馬車が通った周辺だけ地図ができているらしく、なんかゲームっぽい。これで、このハンブロンの町と王都までのルートを構築した、ってとこか。
で、おそらく暗黒馬車の位置が光点で表示されているのだろう。点の感じからすると、朝王都を出て、何時間か移動したところで止まったって頃合いだろうか。
『ちょ! あれか! ホンマに覗き見できるんか!』
「覗き見、じゃないですけどね。
もうわかったと思うので説明しますが、あんまり動かないキューブが通信……声や絵を送っている奴です。何かあったらそいつに言ってください。」
『なるほどなぁ、こいつかぁ。』
さっきまでキョロキョロしていたカエデの視点が「こちら」に定まった。
ポチポチ。
「これでこちらの姿も見えます?」
ジェルが手招きしたので、椅子を引っ張ってきて隣に座る。これでおそらく二人そろって向こうに見えているのだろう。
『はぁ、今更ながら驚き疲れたわ。』
『魔法じゃないようじゃな。何がどうなってるのかワシにはサッパリ見当つかん。』
……お。なんかカエデじゃない妙齢の獣人さんがなんか見かけにそぐわない老人口調で感心したように呟く。
「で、そちらの女性は?」
再度ジェルが聞くと、丸っこい獣耳の女性がニヤリとちょっと年季の入った笑みを浮かべる。
『ワシはな、カエデの知り合いのしがない商人でグラディンと言うんじゃよ。』
「ふ~ん、王都でも力のある商会の名前と同じ『しがない商人』ですか。」
いつの間に調べたのやら、って決まってるか。暗黒馬車が王都に着いた時点で情報収集用のドローン的なもんを飛ばしてたんでしょ。
獣人の女性がちょっと感心したような表情を浮かべる。
『へぇ、随分と聞こえがいいんだね。』
「それほどでも。」
『ま、まぁ、詳しいことは戻ったから話すやさかい。ぎょうさん積んできたから楽しみに待っててな。』
空気がトゲトゲしくなりそうな雰囲気にカエデが割り込んでくる。
楽しみに待ってて、と言われても、おそらくはまだ四・五日はかかることだろう。
……その間に何が起きるかは、神のみぞがしる、ってとこかな。個人的には何も起きないで欲しいのですが、はい。
お読みいただきありがとうございます。
今回からの章はダラダラさに磨きがかかるかと思います(たぶん)




