プロローグ1(4/4)
「無事、みたいですな。」
目が覚めた時は見知らぬ天井、というわけではなく、シルバーグリフォンのいつもの自分の席だった。
直前までのことを思い出そうとして、シルバーグリフォンがいきなり大気圏内に瞬間移動して、山にぶつかった、ということに思い当たった。
思い出しておきながら何ともムチャクチャな話だと思う。
確かに光速を超えるワープ航法とかリープ航法とかはある。瞬間移動しているっぽく見えるが、宇宙空間から宇宙区間へしか跳べないし、色々条件も面倒くさいはず。
でも今回は確かに魔法陣とやらを潜り抜けたが、宇宙空間から大気圏内へと移動したんだから、あたしの知識では全く分からない。
まぁ、そういう時のためにジェルがいるわけだが。
「何があったの?」
あたしの目が覚めるまでそばで待っていたらしいジェルが、ふむ、と唸ってから説明を始めた。
とりあえず、現在地は不明。状況的には「いしのなかにいる」ってことらしい。何かの例えなんだろうか?
「つまり、何もわからない、と。」
「端的に言うとそうですな。
難しく言うと、私たちが数分前までいた宇宙じゃない可能性があります。」
「……はい?」
「この惑星周辺には電磁波――つまり、電波や電気が使われている形跡がありません。
外部の調査はまだなので断言できませんが、文明が存在しないか、あったとしても文明レベルが極端に低い可能性があります。」
えっと、たとえ未開の惑星があったとしても、超光速通信が使えないってことはほとんどない。ただでさえシルバーグリフォン号の通信能力は尋常ではない。
となると……
「まだまだ推測の段階ですが、我々はあの魔法陣を通って、別の世界に来た可能性があります。」
おおぅ……
思わず天井を見上げて嘆息。
そういえば、今コクピットルームにはあたしたちしかいないようだ。ふと見回した感じでは室内に損傷はない。
まぁ、宇宙船でコクピットルームまで被害が出るような状況はあんまりよろしくない。
「ちなみに現状は?」
って聞くと、ジェルが前を指さす。
正面のメインスクリーンにシルバーグリフォンの三面図が表示されている。その周りに透明な繭のようなものが、そのさらに周りに黒い塊があって、埋まっている感じだ。
「あんな感じですね。
対物理シールドは衝突の衝撃に耐えて、そのまま山の中腹に埋まってしまいました。
そんなわけで、今シールドで山の重量に耐えてますが、シールドを維持できなければペチャンコになります。」
おおぅ。
「幸か不幸か、この山の岩石からは金属が多く見つかってるので、箱型汎用作業機械で採掘・加工してどうにか動けるようにしたいわけですよ。」
想像してみる。
大型重機を使えるわけじゃないから――まぁ、近いのはいるが――どれだけ時間がかかることやら。少なくとも一週間とかそういう話じゃないような気がする。そりゃ宇宙船だから、一ヶ月は食料とかあるだろうけど、それを超えたらさすがにねぇ。そうじゃなくてもずっと外に出られないとなったら、退屈に潰されちゃうかも。
「それで?」
「とりあえず、外気を調査したところ、人間の生存に問題ないようなので、外に出てみようかと。」
とはいえ、と前置きするジェル。
みっちり山というか岩の中にいるので、少しずつシールドを解除しながら、外に出られるような通路を製作するので、最低でも数日はかかるらしい。
「で、ラシェルはどうします?」
「どう、って……」
「今更言うのもアレですが、たぶん外は危険ですよ。グリフォンがぶつかったのも、ドラゴンみたいですし。」
「ドラゴン?!」
ファンタジーかぁ……
確かに船内に籠っていたら危険は無いかもしれない。けど、知らない世界に興味もある。
それに…… あたしたちを呼んだ誰かがいるはず。せめてその人に会ってみたい。
まぁ、いつものパターンだ。だからいつも通りにする。
「守ってくれるんでしょ?」
「……不本意ながら。」
やれやれ、とばかりに肩を竦める。
いつものやりとりだ。
何の特技もない、か弱い女の子のあたしが――ちなみに今ツッコむところじゃないからね――A級捜査補佐官をやれているのもジェルがいつも守ってくれてるからだ。
……まぁ、詳しいことは勘弁して。
そんなわけで、修理や脱出は全部グリフォン任せにして、あたしたちは(おそらく)異世界に踏み出すことになったのだ。……三日後らしいけど。




