成敗しよう
ブックマークが10名!
凄いよ! 頑張ったよ自分!
……やっぱ宣伝しないとアカンが、どうやったらいいものやら。
「衛兵! この反逆者を捕縛せよ!」
「よ、余が反逆者……!」
「民を幸せにしようとしない貴族は逆賊ほかならぬ!
お前の言う通り、平民と貴族は違う!
常に国のため、民の為に働くのが貴族の存在意義だ!」
そう、なんだろうね。王も貴族もそれがあるからこそ、贅沢な暮らしをしているように見えるわけだ。
ノブレス・オブリージュ。地位や権力を持つ者は責任を、義務を持つというアレだ。
親が貴族だとしても、生まれたときから貴族になるわけじゃない。義務や責任を果たして貴族に「なる」のだ。
あたしも一応家がアレで「お嬢様」なのだが、だからって大人になれば自動的に家を継げるわけじゃない。……ああ、でもA級捜査官やってることは家とは全然関係ない。
「更に屋敷を押さえろ!
……仮にお前が本当に民の為に働いていて、此度の件が一時の気の迷いなら恩赦もあるだろう。」
さもなくば、だ。そうだとしたら、お取り潰しは間違いない。それまで行った内容によっては一家郎党にまで類が及ぶことだろう。
もう貴族のおっさんの顔から血の気は完全に失せている。もう立っていられないのか、へたり込んでガタガタ震えている。
バモンさんともう一人の兵士が、貴族のおっさんを引っ立てる。もうされるがままに連れ去られていく。
ちょっとかわいそうにも見えたが、それはあたし達に何も被害が無かったからだ。無力な一般市民だったら、家を奪われ、女性はどこかに連れて行かれて二度と戻れなくなったのだろう。
「状況は完了したようです。
カイルじゃないですが、ぶっ飛ばす方が簡単ですな。ストレスが溜まって仕方がありませんな。」
ジェルがやれやれと肩を竦める。
町の兵士や冒険者ギルドの人たちが倒れている(おそらく)おっさん貴族の私兵や馬車を片付けていく。
そこまで行くと、それ以上のイベントも起きないので、遠巻きに見ていた町の人たちも少しずつ家路に戻っていく。
あたし達も戻るか。
「おーい、」
あー 戻ろう戻ろう。今日の晩御飯は何かしらー?
「お前たち、ちょっと待てー」
あーあー聞こえない聞こえない。
でも、入り口にいたリーナちゃんが何か言いたげな顔でこちらを見てくる。
……やっぱりダメか。
「なんでしょうか?」
振り返る。と、ジェルがさりげなくあたしの前に出る。
「まずは、」
と言いかけた王子?を魔法使い風が肩を掴んで止める。
「その前に、まだ止めてないのだろ?」
「なんのことで?」
空惚けるジェルをギロリと睨む魔法使い風。つまらなそうに肩を竦めて、腕のコンピュータを操作する。魔法使い風は一挙一動を見逃すまいとその手元を見つめるが、数タッチで事足りた。
「まぁ、観客がいなくなった舞台の幕引きは早い方がよいですな。」
「バカ王子。もう喋ってもいいぞ。」
「誰がバカだ誰が。
それより俺は腹が減った。さっきの兵士が言ってたが、旨いものを食わせてくれるらしいな。」
……カイル系か?
「ちゃんと金は払えよ。」
「俺をさっきの腐れ貴族と一緒にするな! そもそもさっきから不敬だぞギル! 俺はともかく、他の奴らの前じゃあ気をつけろ!」
「ああ、それは大丈夫だ。お前にしかバカ王子なんて言わん。」
「ならいい。
……んなわけあるか!」
仲いいなぁ。
「よろしかったら、中に入りませんか?」
白熱してきた二人(正確には一人だけ)にリーナちゃんが声をかける。
二人の視線がリーナちゃんを向き、お互いを見て、二人そろって身体から力が抜ける。
「女性の誘いを断るは無粋というものだな。ギル、入るぞ。」
「仕方ないな。失礼する。」
王子?とギルと呼ばれた魔法使い風が店の中に入っていったので、あたし達もその後を追うことにした。
「い、い、いらっしゃいましぇ。」
ガチガチに緊張して噛んでるアイラ。お冷やを置こうとするが、すでに半分以上零れて床を濡らしている。
「アイラさん、大丈夫ですか?」
「だだだだだって……」
あたし達にはピンとこないが、王子というブランドはなかなかの凄さらしい。
「店の者が失礼いたしました。お冷やでございます。」
まるで動じた様子もなく、リーナちゃんが二人の前に水の入った木のカップを置く。
「氷か……?」
王子?がコップの中に浮いている氷を見て不思議そうに首を傾げる。
「ただ魔力は感じられない。どうやって作ったんだ?」
ギル……さんもおそらく別の理由で首を傾げる。
そういえば、異世界に来て初めて魔法らしい魔法を見たような気がする。瞬間移動だと思うが、いきなりブワッとあの二人が現れたはずだ。あたし達の「技術」にワープとかあるけど、あれはワープエンジンを積んだ宇宙船が、重力の影響を気にしながら跳躍するものだ。惑星上で人間大の物を距離や時間を超えて移動する技術ではない。
たぶんジェルだって無理だろう。なるほど、これが「魔法」か。
「申し訳ございません。まだ店が改装中でして、メニューも限られたものになっております。賄いのようなメニューでもよろしければ、すぐにご用意できますが。」
「いや、任せる。さっきの兵士がすげぇ、と言ってたからな。」
「私もだ。」
「ご期待の沿えるよう、努力いたします。」
ペコリとリーナちゃんが頭を下げると、まだアウアウ言ってるアイラを連れて、厨房に戻っていった。
「さて、いろいろ聞かせてもらおうか。」
ギルさんが座りなおして、あたし……じゃなくて、隣に座っているジェルをギロリと睨みつけた。
今更ながら、面倒くさそうな展開になってきたなぁ。
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