脳内会議をしよう
ビックリするほど暑いです
水分はしっかりとりましょう
「ふわ…… わ、わわっ!」
午後の日差しに居眠りをしてしまったリーナちゃんがそのことに気づいて慌てて飛び起きる。
「もう、スコッチも起こしてくれればいいのに……」
照れ隠しなのか、膝の上で丸くなっている黒猫に恨み言を言いながら立ち上がる。
(あんなに気持ちよさそうに寝ているのに、起こすのは野暮というものだろうが。)
独り言のようにつぶやくと、いそいそと窓際の特等席に移動してそこでまた丸くなる。
と、あたしの視線に気づいて、一瞬顔を上げたが、興味無さそうに元の球体に戻る。
(おっと、ラシェルの嬢ちゃんには俺の声は聞こえるんだな。ちっ、らしくねぇこと聞かれたか。)
渋いなぁ、アイツ。
時間を確認して、パタパタと厨房に走るリーナちゃんの物音でアイラも目を覚ます。同じく時計を見て(アイラも時計の存在に慣れたようだ)、夕飯の仕込みの為に厨房に向かう。リリーはいつの間にかに増えた汎用箱型作業機械に囲まれて、なんか女王様の立派な椅子みたいになってた。本人は大口開けたままだったが。
起こそうかと思ったけど、起こしてもさせることが無かったし、夕飯になったら自動的に目覚めるだろう。
いつの間にかにヒューイとカイルは目を覚ましていた。もしかしたら、休憩だけで寝ていなかったのかも知れない。
ジェルは…… 同じ格好のままだ。
顔にいたずら書きをしてみようか、チョップしてみようか、鼻でもつまんでみようか。でもそれらは逆襲させるヴィジョンしか見えない。
自爆覚悟でほっぺにチュウ、とか。……って、自分でも何言ってることやら。
(ラシェルってジェラードを好きなの?)
ちょっとした自己嫌悪に陥っていると、頭の中で女の子の声がした。何ともマセたことを聞いてくる。
どうなんだろうね。あたしも自分のことながらよく分かってないのよね。
ルビィはあたしの心が分かるんだよね? どうだと思う?
(う~ん……)
何を悩んでるのか、頭の中でうんうん唸りだすルビィ。意外とこれってうるさいかも。そう考えると、彼女が普段お喋りじゃないのが幸運だったと言いようがない。
(ラシェルさっきルビィに意地悪言ったから教えないの!)
意地悪?
(サクのこと。あんな風に言われたら悪く思えないの…… いい人そうなの。)
うん、たぶん素であんな性格なんだと思う。それに凄い後悔していた。それでも直接人間を恨んでないようよ。
(うん……)
でもまぁ安心して。ルビィとサクさんの共通の敵、チーム・グリフォンもその喧嘩、勝手に乱入させてもらうわよ。
(へ?)
ああ、大丈夫大丈夫。なんか寄こせとか、そーゆーの一切ないから。
どうしても自分の手で、って言いたいなら早い者勝ちね。うちのは皆手が早いから出し抜くのは大変よ。
(え? え?)
カイルあたりなら、大暴れしてムカつく奴殴って、それで感謝されるんだ。一石三鳥だぜ、って笑って言うね。うん、賭けてもいい。
(いや、その、なんで? なんでなの?)
いずれみんなにもルビィのことは教えるわ。その時、何がどうなったのかハッキリ聞くつもり。で、そんなこと聞いたらみんな黙っちゃいないわね。というか、ジェルはもうおおよその見当はつけてるわね。
良かったわねルビィ。ここが異世界で。あたしたちの流儀が通じる世界だったら、もうルビィに会いに行ってるわ。
……それこそどんなに遠いところだろうが、どんなに高いところだろうが、どんなに守りが堅いところだろうが。
(……変なの。ラシェルたち変なの。)
なんだろう。その素敵な称号は是非ともジェルへ。あたしはチーム・グリフォンの中じゃあ良識派なんですけど。
(だって本来ならルビィが恨まれて当然なのに、なんでそんなに…… ルビィ達のことを助けようとするの?)
お、今「達」って言った。
でもそう言われてみたら、あたし達もある意味被害者か。急に異世界に喚ばれた、ってことでは。
なんてこったぁ、許さんぞぉ!
って、怒ってみればいいのだろうか。
でもまぁ異世界に来たことに関してはそんなに何とも思ってないのよね。そりゃまぁ、最初は不安だったし、何が起きるか分からなかったし。でもまぁ今は着替えをどうしようくらいしか困ってることないし。
(……えー なの。)
それになんで、って言われてもねぇ。
あ、そうだそうだ。ルビィ、最初にあたしに「助けて」って言ったでしょ? それじゃダメかな?
(うん、たしかに言ったの。)
あたしの、じゃなくてあたし達の中ではまだ助け終わってないのよ。ああ、うん。ホントにあたしは何もしてないからね。他力本願もいいところよ。
……だから待ってて。
必ず会いに行くから。
(分かったなの。ありがとうなの。)
うん、人間素直が一番だ。
かく言うあたしが素直かどうかは、どうなんだろうね?
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