黒竜さんを迎えよう(その3)
土曜日更新完了ー!
……って、また書けませんでした。
先週1週間は久しぶりにハーディな日々でした。
しかし暑いですねぇ。皆さまもご自愛を。
「何か話そうと思いましたが、なんかどうでも良くなりました。」
満腹に程よい空調。出かける予定も無ければ、片付けなければならない用もない。
人であるならば逃れることができない恐ろしい呪い。
そう、眠気だ。
オムライスを食べ終えて、残念ながらデザートは無かったが、軽くつまめるものとハーブティで優雅な午後を過ごしていたのだが、すっかり午睡モードになってしまった。
珍しくリーナちゃんが黒猫を膝に乗せたままコックリコックリ頭が揺れている。
アイラは突っ伏し、リリーは椅子から半分ずり落ちながら大口開けていた。……女の子なんだからもうちょっとこう、なんかあるでしょうに。あ、椅子から転げ落ちそうになったところで汎用作業機械に支えられて椅子に戻された。
ジェルはテーブルに置いたタブレットを頬杖ついて見ているような格好で寝ている。パッと見、寝ているように見えないのが凄い。
ちなみにこういう時にイタズラしようとしたら、毎回毎回きっちり反撃されるので、寝たふりしているんじゃないかと思ってしまう。
でも隙だらけに見えるんだけどなぁ。。
ヒューイとカイルは腕組んだままピクリともしない。
「拙者が言うのもなんだが、皆ずいぶんと無防備なのだな。拙者がもしも悪意を持った存在だったらどうするのだ?」
サクさんが不思議そうに首を傾げる。
あ~ そう見えるよね、やっぱ。
「試そうとするなら止めておいた方がいいかも。寝起きだから手加減なんてできないだろうし。」
「ほぉ。そうなのか。
皆、なかなかの兵なのだな。」
いや、たぶん約一名違います。でもそいつの寝起きが一番タチ悪いと思います。
……と、それはともかく。
ルビィ?
(……え? なになに?)
なんかサクさんに聞きたいことあるんじゃないの?
「ん? 誰かと話しているのか?」
脳内会話だが、魔法的な物を使えばそう珍しい光景じゃないらしい。
(…………)
あたしの勝手な想像だけど、ルビイに召喚されたシルバーグリフォンが、何故サクさんだったドラゴンを跳ね飛ばしたんだろうね。
(何が…… 言いたいの。)
子供っぽい喋り方は鳴りを潜め、複雑な感情が入り混じった声が頭の中に響く。
「ところでサクさん、って、どこまで記憶があるの?」
「どこまで…… とな。」
遠くを見るような目をしたサクさんだが、どこか辛そうに顔を伏せる。頭の中のルビィからの声は聞こえないが、動揺しているような感じがする。
「長い時を経て腐敗していた我が身に意識というものはほどんどなかった。己の意思もなかったしが…… おぞましいことを行っていたという感覚は残っている。」
自分の身体を抱きしめて、嫌悪感に身を震わせる。
「操られていた、というのが言い訳に過ぎないのも分かってる。拙者はこの身で多くの生命の尊厳を汚したのだ。自らの死も選べない絶望の中でな。」
(…………)
「故に解放された時の喜びと言ったら! そなたらが召喚されたというのなら、その召喚士にも最大の感謝を。
同じヒトの召喚士とはいえ拙者を救った者もいれば、苦しめた者もいる。ヒトとは深きものよな。」
(……なんで?)
言った本人も何が「なんで」なのか分からないのだろう。彼女が混乱しているのはなんとなく分かる。
ルビィがチーム・グリフォンを召喚した理由――それはこのサクさんだったアンデッドドラゴンに襲われていたからじゃないだろうか。
勘が混じってるけど、おそらくルビィは高度な教育を受けている。となると、自然に彼女が地位が高い人物だと想像できる。
この世界なら、おそらくは貴族、もしくはそれ以上――王族の可能性もある。
これからは想像になるが――あ、なんか今のジェルの言い回しっぽい――、外を移動中の彼女にアンデッドドラゴンだったサクさんを使役した何者かに襲われたのだろう。
当然、地位の高い人が一人で出歩くわけがない。護衛の人たちもいたことだろう。その人たちが次々に倒されたとしたら? そうなったら自分の「存在」を代償にする召喚魔法だとしても、ためらわずに使うだろう。
そして、あたし達が召喚された、と。
(…………)
あえてルビィにも聞こえるように考えをハッキリと頭の中で言葉にしたので、ルビィが息を飲むような雰囲気を感じた。
魔法も武器も使えない小娘が言うのもなんだけど、恨んでもいいけど、その相手を間違えちゃダメ。
答えが見つかったら教えてちょうだい。それがルビィの考えだ、っていうなら、大したことは出来ないけど、応援はしてあげる。
(うん……)
迷ってくれた。これで「良い」答えを見つけてくれればいいけど。
「そんなわけでサクさん、その召喚士の人を探しましょう。」
あたしもルビィに直接会いたいし。
「何?! まことか、ラシェル殿!」
感激のあまりか、またあたしを抱きしめてくるサクさん。
その感謝の念に苦しめられながらも、男相手には絶対やらないように釘を刺しておこう。
……色んな意味で危険だ。
お読みいただきありがとうございます。




