黒竜さんを迎えよう(その2)
1日遅れました
なんかこー 今までになくリアルが忙しいザマス
「ドラゴンかぁ…… あんたとじゃなくていいけど、一回戦ってみてぇなぁ。」
脳筋思考のカイルはサクさんがドラゴンの生まれ変わり?というのをあっさり受け入れた。
「ジェラード、その時の映像出せるか? いや、俺だけでいい。」
言われたジェルが、白衣のポケットから端末を取り出し(とりあえずどこに入ってたかはもう聞かない)、ヒューイに手渡す。しばらく端末を操作してから、ジェラードに返す。
「さすがにこれ以上の解像度を求めるのは無理か。」
「そうですな。そもそもが大気圏内で出す速度ではなかったですし、シールドなどの影響で光学撮影も難しかったですしねぇ。」
「何か引っかけたのは多分見えたと思うんだけどな。」
よく分からんけど見えたんだ。
「まぁ、疑うには根拠が薄いし、実際に彼女の強さは人並み外れている。」
「ああ、俺も同感だ。図体がデカかったらまだやりようはあるが、この大きさだとなぁ。そもそも女は殴りづらい。」
「ほぉ。拙者を女性と見てくれるのか。」
サクさんがカイルの言葉に驚き半分のような顔をする。
「だってどう見ても美人だろ? 理由もなく殴りたくねぇなぁ。」
逆に言えば、理由があれば容赦なく殴るってことか。ジェルもそうだけど、女の子には甘いところはあるけど、厳しいところは厳しいんだよね。
「これは喜ぶべきなのか、侮られたと怒るべきなのか?」
あたしの方を向いてサクさんが聞いてくる。こっちに聞かれてもなぁ、とは思う。男の世界だろ? きっと。
「人によりけりですが、他人が理解できない『くだらない』こだわりがあるのですよ。私は嫌いじゃないですけどね。」
「……ヒトとは面白いものだな。」
ジェルの言葉にサクさんが微笑む。なんかこう、凄い長い年を経た笑顔に見えた。老人が子供を見て慈しむような感じだ。
どこか空気がしんみりしかけたところで、カイルがピクンと反応した。
「来た……!」
歓喜に満ちた顔で店の奥に目を向ける。
来た、って。ああ、リーナちゃんのご飯ができたのね。
「お待たせいたしました。」
いつも通りワゴンを押して来たリーナちゃん。最近、食卓を囲む人が増えてきたのか、二段重ねの箱型汎用作業機械にもお盆を載せて運んでいる。
その後ろではアイラがブツブツと呟きながらワゴンを押している。あれはリーナちゃんの料理の作り方を思い返しているんだろう。
二人+一体が運んでいるのは黄金に輝く中に赤が光るアレだ。
「なにこれー! でも美味しそうな匂い!」
見知らぬ料理にリリーが大興奮だ。
「お口に合えばよろしいのですが。」
「リー姉ぇの料理はみんな美味しいから大丈夫!」
まっすぐな言葉にリーナちゃんが嬉しそうに照れる。ありがとうございます、と頭を下げながら、みんなの前に皿を置いていく。
『いただきます。』
全員で手を合わせてから食事開始だ。……あれ? そういえばこの習慣、なんかほかに理由があったような気が。まぁ、思い出せないから大した理由じゃないか。
(ラシェル― 早く早くー)
頭の中のもう一人のお子様が騒がしい。
(お子様なんてひどいー ひどいから早く食べてー!)
すっかりルビィもリーナちゃんの料理のファンだ。しかも異世界では(おそらく)見たことない料理の数々だ。豪華とは全く縁がないが、ただ単に美味しい。それこそ正義!
(ラシェルー!)
頭の中が騒がしいので、仕方なく黄金の山にスプーンを差し込む。
ツヤツヤに輝く卵(未だに何の卵か分からないが)はしっかり固まってように見えるが、それは薄皮一枚程度でスプーンでつつくとフワフワとした手ごたえを感じる。
そのまま欲望の赴くままにスプーンを差し込む。そこから表面にかけられた赤とは別の赤色が見えてくる。
崩した卵と中の「赤」をまとめてすくい、口に運ぶ。卵はフワフワトロトロ、中身は熱々。これは……
(おいしー!)
「おいしー!」
外と中で二重奏が聞こえてきた。
そしてまたセリフ取られた。
「うめぇ!」
相変わらず騒がしい。
「これはトマトのソース。それよりもあの卵の焼き方はあたしにマスターできる……?」
こっちはこっちで相変わらずリーナちゃんの料理を覚えようと忙しい。それにしてもこのオムライスは美味しい。トマトソースと、中のケチャップライスの風味が微妙に違うので、配合バランスにより味が変わるのが素晴らしい。
「うおっ!!」
優雅に昼ご飯を楽しんでいると、ひときわ大きな声が聞こえてきた。
声の主を探すと……
「す、すまぬ。」
恥ずかしそうに身を縮みこませるサクさんがいた。手にはオムライスをすくったスプーンがある。
「いや、その、拙者、初めての美味に思わず驚いてしまった。」
そりゃ、この世界に存在しない料理だとしたら、それはどんなに年月を重ねていたところで初めての味だろう。
「冷めないうちに食べた方がいいよ。料理は逃げないからさ。」
変に驚いたり感動したりして手が止まってはもったいない。
なんか話をする予定だったけど、サクさんの食べる姿がなんかこう、微笑ましくて、和気あいあいとしているうちに楽しい昼食は終わったのであった。
デザートないかなぁ……?
お読みいただきありがとうございます。




