黒竜さんを迎えよう(その1)
え~とリアルがすげー忙しくて、すっかりお休みしてしまいました。
状況を鑑みて、ちょっとペースを落とすかもしれません。
とりあえず週2回更新で、水曜日と土曜日の0時に頑張ります。
「そろそろ皆さんお戻りになると思いますから、お昼の準備いたしますね。」
どこか足元がおぼつかないアイラの手を引いて、リーナちゃんが厨房に下がっていく。
料理が始まったら元気に戻るだろう。
「……? 拙者の顔に何か?」
「そういえば名前。あなたのことをなんて呼べばいいかな、って。」
ふむ、と彼女が考え込む。名前は発音できないって言ってたっけ。
「拙者の名は発音できない、と申したが、実のところ『黒い竜』以上の意味を持たぬ名前であってな。」
よく分からないし、勝手な想像だけど「黒い竜」だけで通るっていうことは、他に黒色の竜が一切いないってことか、それで事足りるほどの高い地位か実力があるってことじゃないだろうか?
う~ん。
パッと見、彼女のチャームポイントというか特徴は漆黒の髪と瞳。同色の服ってとこだ。黒とか夜とかそんな感じ。あ、月もつけちゃう? そんなイメージだよねぇ。
「ねぇ、無駄に物知りなんだから、いい名前ないの?」
「さらっとディスるとはひどいですな。
とはいえ、名前ですか。あんまりそういうの、って得意じゃないのですよね。」
うん、それは何となくわかる。
「朔、というのはどうです? 月が見えない夜の意味で、同時に月の始まりを意味する言葉です。」
「ふむ、サク、か。」
うつむき気味で口の中で何度か呟くと、顔を上げる。
「良き名前だ。大変気に入った。これから拙者のことはサクと呼んでくれ。」
と、黒竜のサクさんはしっとりとした笑顔を浮かべた。うん、なんかすごい「大人」な感じだ。でも竜ってことは実際の年齢はもっとすごいんだろうな。
「我々は諸般の事情で、この世界ではないところから来てしまったので、不躾な質問だとしたら先に謝罪します。
この世界で寿命が長い種族ってどれくらい生きられるので?」
「竜種は基本的に無限に生きると考えても相違ない。竜種の死因は事故や病気、もしくは討伐されるなどで、寿命で亡くなる者はいない。そして長く生きることに飽きたものが自ら死を選ぶこともある。」
それでもまた時が来ればまた「生」を受けるのか。まだ二十年も生きてないあたしには全然想像できない話だ。
この世界のいわゆる知的生命体では人間が一番分かりやすく短命らしい。カエデのような獣人族が同じくらい。山に住む小人系の種族が人間のおよそ倍。森に棲む種族が下手したら十倍以上、とのことだ。
これに魔族とかいうのもいるみたいだし、精霊とか妖精とかもいるし、そこら辺になると、そもそも生態すら謎なのでよく分からないらしい。下手すると「神様」だっているのかも知れない。
「やはり異世界なんですねぇ。」
しみじみと感想を述べるジェル。
「ジェラード殿達は違う世界から渡ってきたのか?」
「隠すつもりもないですが、積極的に公表する気もないですがね。」
「うむ、安心めされ。拙者も恩人らの秘密を言いふらす趣味はない。」
それ以前に、サクさんも秘密の塊のような人なわけだが。
「それより、今のうちに聞いておきたいのですが、もし我々がドラゴンと敵対した場合、サクさんはどうされるので?」
同じ竜種だしね。
「どう、とは?」
サクさんが不思議そうに首を傾げる。なんかそれだけでも色気が感じられるわー。
そしてジェルの言いたいことに気づいたのか、サクさんがうむ、とうなずく。
「かたじけない。ジェラード殿の危惧には感謝いたすが、そもそも拙者ら竜族はさほど仲間意識は強くなく、個人的に友誼を結ぶ相手はいるくらいだ。
それに竜にとって強さが絶対基準であり、戦いを挑んだなら勝敗に関わらずそこに遺恨はない。ただそれを汚すものには容赦せぬがな。」
となると、不死の呪いで縛られてこき使われていたのは彼女にとって「勝負を汚す」行為に他ならないのだろう。
こういう人が怒ったら怖そうだなぁ。
「……気をつけましょう。」
微妙な顔でジェルがボヤく。
「というか、戦う前提での話は勘弁願いたいのですが。」
庶民としてのささやかな願いを言ってみる。
「心構えは必要でしょう?」
社会は庶民に冷たかった。
でもまぁ本気で「戦い」になったら、どうなるんだろ? あたしたちの世界の兵器がこちらの世界でどこまで効果があるんだろうか? でもまぁ、装甲車相手に喧嘩売ることも珍しくなかったから、そこそこは戦えるとは思うけど。
ただまぁ、シルバーグリフォンが十全に使えるようになったら、星砕きレベルの兵器があるし。
なんかこう、一方的なジェノサイドのイメージしかわかないよ、もう。
「たっだいまー!」
そんなことを考えてると、元気な声が帰ってきた。午前の部の畑仕事を終えて、昼ご飯を食べに戻ってきたリリーだ。
「戻ったぜ。」
「ただいま。」
カイルとヒューイも入ってくる。
リリーはダッとシャワーを浴びに奥に駆けて行ったが、ヒューイとカイルが戸惑ったように足を止める。
「強いな。」
「ああ、こいつはヤベェ。」
二人がサクさんを見て、身体に力を込める。
だとすると、彼女が気づかないわけがない。ゆっくりだが(おそらく)隙のない動きで振り返る。
「ほぉ。」
わずかに目を細めるが、まだ構えをとる様子もない。そして何かに気づいたのか、大きく目を見開いた。
「お主らからも同じ匂いがする……」
「匂い?」
とりあえず一発即発の事態は避けられたようだが、今度は疑問符が飛び交う展開になる。
「まぁいいや。
詳しいことは食事しながら説明するから、とにかく座れ。彼女はサクさん。シルバーグリフォンに衝突して粉微塵になったドラゴンの人だ。」
訳の分からない説明にヒューイとカイルの疑問符は余計に増えるだけだった。
お読みいただきありがとうございます。
さて、どこらへんで一度区切りをつけるべきか……




