プロローグ2(2/2)
一応、週三回程度の更新はしたいです(火・木・土の0時くらい)
ココロが痛む。
世界の色が薄れる。
自分が希薄になる感覚。
姫、と腐敗竜に呼ばれた少女は一心不乱に祈っていた。自分の存在を代償に何かを召喚する彼女だけの魔術。
呪文も何もなく、祈るだけの魔術。
(助けて……)
正直なことを言えば、自分はどうなってもいい。未だに両の足で立つ老騎士や、倒れていたもまだ息のある騎士を助けてほしい。
このままではあの腐敗竜に喰われ、魂は永遠にあの腐敗竜の中で死ぬことも叶わず苦しむことであろう。
(私たちを…… 助けて。)
『ほほぉ、これはこれは……』
祈りは通じたのか、はるか上の空間に複雑な模様が描かれ始めた。
『苦し紛れとはいえ、見事な召喚陣ですな。ただ悲しいかな、魔力を全く感じられない。
……失望しましたよ。』
ふわり、という雰囲気ではないが、腐敗竜が上空の召喚陣の前に出る。下あごが骨になっている口を開く。
『姫の最後の希望も打ち砕かせていただきましょう!』
おぞましい色の竜の吐息が召喚陣を包んだ。
次の瞬間から起こったことを正確に説明できるものはいなかっただろう。
召喚陣から「何か」が飛び出し、竜の吐息に突っ込んだ。
その「何か」は竜と同じか遥かに巨大で、凄まじい轟音を放ち、炎に包まれているように見えた。炎の隙間から銀色の光がわずかに見える。
『!』
たぶん、腐敗竜から聞こえる声は何も反応できなかったと思われる。空を端から端まで駆け抜けた燃え盛る「何か」のそばにいただけで、微細に粉砕された上に、高温に燃やし尽くされたのだった。
それはとても呆気ない決着であった。
ただ、物語はそれだけで終わらず、召喚陣から出てきた「何か」は腐敗竜を消滅させたことに気を留めた様子もなく、突き進む。遥か向こうに見える山が迫ってきても、速度を落とすことはなかった。
次の瞬間。
この世界の人が初めて耳にするような轟音が鳴り響き、世界の終わりが来たかのように大地が揺れ、太陽が地上に降りたかのような閃光が広がった。
永遠と思われた天変地異は実際は数十秒の後、何事もなかったかのように収まった。ただ形が変わった山だけが、その痕跡を残していた。




