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異世界行ってもチーム・グリフォン!  作者: 財油 雷矢
MISSION:千客万来を迎えよう

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悪だくみを始めよう(その1)

「この町は二つの勢力に分かれている。お恥ずかしい話だがな。」


 すっかりアルコールが入ってご機嫌で帰ろうとしたジェニーさんをとっ捕まえて、無理やりテーブルに着かせる。

 それでやっと思い出したのか、コホンと咳払いをして真面目な顔をする。


 ……遅いよ。


「一つは、保守派と言うか領主派というか、まぁ現状維持だな。もう一つは革新派と言えば聞こえがいいが、とりあえず私を領主から引きずり降ろして自分たちが実権を持とうという貴族たちだ。」

「ちなみに冒険者ギルドとしては表向きは中立だが、領主側に肩入れをしている。」


 どうせ、お貴族様は冒険者を見下してるしな、とどこか楽しげに笑うガイザックさん。

 そういやぁジェルを言ってたっけ。見下してくる相手はやり易いんですよ、と邪悪な顔をしながら。


「革新派というのも格好良すぎるから、貴族派ということにするか。

 こいつらは商人ギルドを牛耳って、合法非合法問わず金を集めている。そのためには犯罪ギルドを使うことも躊躇ちゅうちょしない。」


 つまりはリリーの件もその一環だったのかもしれない。


「細かいことだがな、私のところに送られてくる報告書とかにも同じような言い回しの違う文章を複数出して、処理に時間をかけさせようとする嫌がらせがあったな。」


 まぁ、と今度はジェニーさんが楽しそうに悪い笑みを浮かべる。


「ジェラード君の所から借りたキューブがいい仕事をしてな。おかげでそんなことをした阿呆をあぶり出せそうだ。」


 ……なんだかメッチャ、こっちの権力闘争に首を突っ込む形になっちゃったなー。そういうのはNGじゃなかったっけ?


「仕方ありません。臨機応変という便利な言葉がございまして。」

「便利に使いすぎだ。」


 久々に直接ツッコミを入れる。


「ふむ、ここで一つ聞いておきたい。

 君たちはどちらにつく予定だね?」


 どちら、と言われても、今までの流れだとリリーに危害を加えようとした貴族側につくつもりはないだろう。いや、ジェルがどう考えてるかは分からんけど。ただ、チーム・グリフォンとしてはよほどのことがない限りはジェルの判断に従うことになる。


「我々は常に平和と自由の味方ですよ。」


 ジェルが躊躇なくそう返す。


「だからこそ難しいな。

 君たちはおそらく、目は遠く、腕も長いのであろう。自発的に動くのはともかく、誰かに命令されたり誰かの意図により動くことを良しとしない、そんなところではないか?」


 何とも扱いにくいものだ、とジェニーさんが皮肉めいた笑みを浮かべる。


「さぁて、どうでしょうねぇ。」

「単にひねくれ者なんですよ。」


 あんまりこちらを過大評価されたくないので、真実を伝えておくことにする。


「偉そうに言ってますけど、やる気の出ないことはしたくないだけです。」


 ただまぁ、女の子が絡むと結構動くのよね。でもそれでどうこうしよう、って気もないから本心が読めないんだけど。


「私は自分の時間を邪魔されるのが嫌なだけです。放っておいてもっと時間を浪費させられるなら、効率的に解決した方が早いのですよ。」

「「へぇ~」」


 ジェルの言い草にアイラとリリーが声をそろえて目を細める。


「あたし達の時にはどんな効率的な理由があったのかしら~」

「そうだね~」


 ふむ、と前置きをしてジェルが理由を語る。


「拠点の確保は当然として、この周辺で甘味が無いのも分かったので、砂糖の確保も急務でした。できれば恩を着せて有利な条件を飲ませられるように、ですかね。」


 ちなみにジェルが即答するときは答えをすでに用意している時だ。つまりは言い訳ってこと。ちなみに最後に断定ではなく「ですかね」と同意を求めるような言葉が入ると、ほぼ正解である。


「博士はこういう言い方しかしないのですが、本当は大変お優しい方ですよ。」


 ですから尊敬しております、とリーナちゃんが無邪気な笑顔で言われて、ジェルがいつもの微表情に戻る。どういう顔も出来ない時の苦肉の策だ。

 が、そんなことは周囲にバレバレで皆が生暖かい目でジェルを見ている。


「君たちは私の敵だ。」

「ずいぶんと敵が安いな、おい。」


 あたしのツッコミに笑いが漏れる。というか、腹を抱えてジェニーさんが笑ってる。


「いや、酒のせいかも知れないが、こんなに愉快なことは久しぶりだ。

 決めたよ。私はこの町を綺麗にする。少なくとも、くだらない貴族に甘い汁を吸わせるためにこの町を大きくしたわけじゃない。」


 テーブルに肘をついて、口元を隠すように手を組む。


「そのためには使える物は何でも使う。

 それこそ、遠い世界から来た奴だろうが、たまたまやってきた狐耳の商人だろうがな。

 運が悪かったと諦めてくれ。」

「や、いや、ウチは急に持病のなんかがな、こうキューっとな?」


 及び腰で逃げ出そうとするカエデをすかさず回り込んだリリーが捕まえる。


「ラシェ姉ぇ、これでいい?」


 ハンドサインを送った甲斐があったというものだ。あたしの意図を汲んでくれたリリーにサムズアップで健闘を称える。


「うっわ~ ふっかふか~」

「ちょ! ちょぉ待ちぃ! ウチ尻尾は弱いねん……」


 まぁ、触りたくなる気持ちは分かる。

 ただこちらの世界で獣人に対する対応が分からないので、我慢していたんだが、触ってもいいのかな?


(う~ん、人それぞれかな? 生まれとか種族とかでも色々あるみたいだし。)


 そうか。気をつけよう。

 その間にも尻尾をモフモフされて、腰砕けになったカエデの肩をジェニーさんがポンと力強く叩く。


「よろしく頼むぞ。」

「ウソやぁぁぁぁぁっ!!」


 カエデの絶叫が店内に広がった。


 でも防音がしっかりしているので、外にその悲鳴が漏れることはないのだ。

 ……ホントに無駄に高性能にできてるな、この店。

お読みいただきありがとうございます。

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