狐さんを迎えよう(その4)
一日遅れになりましたが、どうにかこうにか。
……アレだけ働くと疲れるんだなあ。今日も結構寝坊しちゃったし。
「細けぇ話をしたら長くなるんだが、まずこの周辺で砂糖が作れる作物があることが判明した。」
ガイザックさんがハーブティのお代わりを頼んでから、話を始めた。
「へぇ、それは知らんかったわ。」
「それをどこぞの商人が、その生産者を騙して砂糖を密造し、ボロ儲けしたわけだ。」
「なんや、悪いやつがおるんやな。」
カエデがそう返すと、ガイザックさんがちょっと驚いたような顔をする。
「てっきり、羨ましいとか、自分もやりたかったとか言うと思ったがな。」
「ズルした金、って意外と懐に冷とうてな。
ウチの自己満足かもしれへんが、暖かい金の方が嬉しいねん。」
お、ちょっと意外、なんて思ったら彼女にジロリと睨まれた。
「今、ウチのこと意外やなぁ、って目で見てたやろ。余計なお世話や。」
悪ぃ、俺もちょっと思った、とあっけらかんとガイザックさんが言うと、同じく睨まれる。
「そこで、どっかの自称平和の使者がその商人の化けの皮を剥いでな。それに逆恨みした輩も、そいつと楽しい仲間たちがぼっこぼこにしてな。」
言われてますよ。俺たちそんなに楽しいかね? 弱かったぞ。と不穏な会話が聞こえてきて、カエデの耳がピクリと反応するが本人はポーカーフェースを貫く努力をしている。
「で、タチの良くない貴族や裏のギルドとも繋がりがあったんだが、こいつがこの町の商人ギルドの正式な構成員だったわけだ。」
「……お?」
雲行きが怪しくなってきたのか、カエデがどこか面白がるような、どこか不安げな声を出す。
「変な言い方だがな、逆恨みが上手くいくか、失敗しても逃げきれたらまだ誤魔化しようがあったんだろうが、一人残らず捕まえられちゃあな。」
恐る恐る、男衆の方を振り返るカエデ。三人揃ってあからさまに視線を逸らして、口笛を吹くような素振りを見せる。
「もっと問題だったのが、こいつらの身元がはっきりしないので、遠くからの旅人扱いになってしまったんだ、これが。」
「となると……?」
「結果的にな、商人ギルド所属の構成員が、貴族や犯罪ギルドと組んで、無辜の一般市民に襲い掛かって、返り討ちにあったわけだ。」
「うわぁぁぁぁぁっ。」
なんかすごくヤバい感じがする。
メンツとか責任問題とか、人生で聞きたくない言葉トップテンに入る奴になるパターンだ。それに連帯責任という言葉も続きそうだ。
「そんわけで、とばっちりを受けて、この町の商人は誰も動けなくなった、ってわけだ。
だがな、この町の特産品とするには王都に登録に行かなきゃならない、ってぇのは知ってるよな。」
「まぁ、そうやな……」
ん? そんな制度があるのか。まぁ確かに(この世界における)砂糖のような高価な商品が特産品でもなく大量に市場に流れたとしたら胡散臭いことこの上ない、ということなのかもしれない。
何となくカエデの顔色が悪くなる。
「ウチの気のせいかも知れへんけど、ちょーっとばかり話が大きくあらへんか?」
「気のせいだ、気のせい。」
カラカラと笑うガイザックさんに、何となくじゃなくカエデの顔色が悪くなる。
「ちなみにな、その騙されてた生産者ってぇのが、そこのリリーの嬢ちゃんだ。おかげで行き倒れそうになったのを、アイラたちが助けなかったらどうなってたことか。」
あたし? と自分を指さすリリーを見て、カエデが表情を変える。
「自称平和の使者は…… まあいいか。」
「そこらへんは大人の事情って奴で。」
訳わからんぞジェル。
「まぁ、その大人の事情って奴で、手ぇ貸してくれんか?」
「なんで我々が。」
ガイザックさんの振りに素っ気なくジェルが返す。
「そうだなぁ、俺の見込み通りなら、こうやって見知った相手が大変なのを見過ごすような性格じゃないと思うがな。」
おおぅ。
見事な読みだ。さすが年の功と言うべきか。
ただジェルは素直じゃないからもう少し粘るだろう。
「あんまりな、時間をかけるのも問題があってな。商人ギルドの謹慎が解ける前にやっておきたい。
……リリーの嬢ちゃんの件を黙認してたんだ。どんな理由があろうともな。少し痛い目に遭ってもらわんとな。」
おっと、ガイザックさんがちょっと怖い顔になる。相当今回のことは腹に据えかねているようだ。
カエデはというと、さっきまでうまうまと食べていたリリーの笑顔を思い出したのか、表情を引き締める。
「分かったで。ウチも女や! そこまで言われて引き下がれるかい! そこの自称平和の使者も手伝ってくれるんやったら、ウチも腹くくったるわ!」
「いや、だから何故我々が。」
他人事のようにハーブティを嗜むジェルに、ガイザックさんが悪い笑みを浮かべる。
「ちなみに次は『なんでそんな奴がリリーの嬢ちゃんを助けたんだ?』って聞くし、それでもダメならそっちの嬢ちゃん達の情に訴える。
……なぁ、交渉事はクールに行こうぜ。」
「ぐぅ……」
マンガでしか言わないような声を聞いたような気がする。
ちなみにヒューイとカイルは反対する理由はなさそうだし、リーナちゃんは縋るような目でジェルを見ている。リリーは目をキラキラさせて、アイラはどこか達観したような顔をしているので、消極的賛成ってところだろう。
「……何をすればよいので?」
ため息交じりにジェルがボヤくと、ガイザックさんが破顔した。
「いやいや、真心こめて話せば分かってくれるもんだな。俺は信じてたぞ。」
何を信じてたかは不明だが、ドヤ顔でしたり顔にイラっとしているんだろうけど、迂闊に何か言えば、また足元をすくわれそうなので、黙っている。
とはいえ、さすがのジェルも首を突っ込む気になったようなので、いつものようにどうにかしちゃうんだろう。
今更ながら、やり過ぎないことを祈る。
お読みいただきありがとうございます。
次、間に合うかなぁ?
一日遅れまでにしておきたいです。




