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異世界行ってもチーム・グリフォン!  作者: 財油 雷矢
MISSION:千客万来を迎えよう

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領主様の話を聞こう

暑い暑いと思っても、まだ5月なんですよねー

夏になったらどうなることやら。

「私が、この町の領主であるジェニファー=フォン=ハンブロンだ。とはいえ、町を管理するだけの名前だけ領主みたいなものだがな。ジェニーとでも呼んでくれればいい。」


 昼でなくてもヘビーな分厚いステーキをペロリ食べた領主――ジェニーさんは、冷やした白ワインで喉を潤している。


「しかしワインも冷たくなると味わいが違うものだな。私はこちらの方が好みだが、冷やすのが大変そうだな。……ここ以外では。」


 ちなみにステーキは例のロックバッファローの肉だ。試しに調理してみたが、アイラが凄い肉です! って興奮するくらいの物だったらしい。


「しかしこれはアレか? 例のカイル君が仕留めた奴か? 今まで食べたことないような素晴らしい味わいだった。」

「でも実はそれ、もも肉なのですよね。」

「ほぉ?」


 もも肉と言えば、そこまで貴重な部位というわけでもない。まぁ足は立派だったからもも肉もたくさん取れたことだろう。


「私が調理したわけじゃありませんが、色々小細工はさせていただきました。」

「とはいえ、これがもも肉か……」


 ジェニーさんは苗字を名乗って、しかも「フォン」の称号まである。聞きかじりの知識だが、そう考えると爵位までは分からないが、彼女は貴族なのだろう。ジェルがあらかじめ名乗るときは苗字を言わないように、と釘を刺されていた。下手に苗字付きで名乗ったら、下手すると貴族詐称とされる場合もある、というわけだ。怖い怖い。


「まぁ、材料が何であれ、ご満足いただければ作った者も喜ぶことかと。」


 しかしまぁ、ジェルもよくジェニーさんと対面で話ができるもんだ。今の状況はジェニーさんとジェルが一つのテーブルで向かい合っている。あたしは少し離れたところからそれを見ていて、アイラとリーナちゃんは奥に下がっててもらってる。ほかの三人は朝から出ているので、ここにはいない。


「確かに、贅を尽くした上に美味しくない料理、というのは良くあることだしな。」

「それはそれは。何ともお疲れ様です。

 ……で、そろそろ本題に入りますか?」

「もう少しどうでもいい話をしたかったんだがね。」

「それは今後の関係次第でしょう。つまりはこれからの話の方向性に寄ります。」

「世知がらいな。」


 苦笑するジェニーさん。


「ハンブロンの町の領主として質問が大きく二つと、お礼一つと、恨み言一つ、どれからいくかい?」

「順番を崩すのも面白そうですが、それをやると意外とつまらなくなるので、質問からにしましょう。」


 なんとなく予想はついてますがね、とボヤくとジェニーさんは苦笑する。


「そう言うな。まぁ、確かに濁しても仕方がないしな。

 ――君たちは何処から来て、何をする気なんだい?」


 他言無用ですよ、と断ってから、ジェルは説明を始めた。

 ルビィのことは言わないで「召喚魔法」で呼ばれた違う世界の人間であること。

 召喚された際に天駆ける船(シルバーグリフォン)が山の中に埋まってしまったこと。

 元の世界に帰るための方法は見当がついているものの時間がかかりそうなこと。

 で、それまではのんびり過ごしたいので、権力には関わりたくないこと。


「どうやらこちらの領主様は話ができる方のようで。

 世の中には『話し合い』という名の強要をする方が多くて困る。」

「いやいや、耳が痛いな。

 ちなみに単なる知的好奇心だが、そういう『話し合い』が出来ない相手はどうするんだい?」

「世の中には『肉体言語』という便利な言葉がございまして。まぁ私は見ての通り苦手なんですがね。」


 と、肩をすくめる。

 どの口で言うんだ、どの口が。


「なるほど。ガイザックやバモンも言ってたが、いい友人でありたいものだな。」

「ええ、私もそうありたいものです。」


 そうジェルが切ったところで、ジェニーさんの身体から力が抜ける。


「次はお礼だ。サトウダイコン、と言ったか。この比較的寒冷な地でまさか砂糖ができるとは思わなかった。それに新しい酒のアイデアももらったそうだな。」

「それに関しては、これまでの努力と、これからの努力の問題です。

 私たちは単なるきっかけにすぎません。」

「それにロックバッファロー売却の手数料だけでも町が随分潤ったよ。それだけでも感謝に値する。」


 そう考えると、こちらに来て数日で結構色々あったものだ。

 少なくとも女の子二人が不幸になるのを防げたし、もしかしたら町一個守ったのかもしれないし、くだらない悪党を少し減らしたのかも知れない。

 でもまぁジェルたちはまだまだ本領を発揮してないんだよなぁ。


「そして次は恨み言だ。

 新しい産業ができるのはいいが、そうなるとただでも多い仕事が増えてしまう。

 来た時に徹夜した、というのも比喩ひゆでもなく事実だ。君たちは私をゆっくりと殺すための間諜かんちょうなのかね?」


 笑顔だが目は笑ってない。


「我々もそんなことの為に『召喚』されたとなると心苦しいですな。」


 ふむ、とジェルが顎に手を当てて、考えるフリをする。そう、フリだ。ジェルの思考速度を考えると、すでに結果は出ているはずだ。ただ一応は再考して同じ答えが出るかどうかを確認している、って言ってた。


「勝手な想像ですが、書類整理が一番時間がかかっていることだと思います。」

「そうだな。計算も私一人でやっているから、とにかく時間がかかるし、資料をまとめるのにも時間がかかる。」


 教育の問題かな? 下手すると、この世界の一般市民というか平民に義務教育というものは存在しないのだろう。

 商人やある程度余裕のある家庭だと読み書き計算ができる者がいるかも知れない、くらいなんだろう。


「じゃあ、そういう単純計算みたいな仕事を任せられるようなものがいたら、少しは楽になりますかね?」

「そうだな。だがそんな人材は……」


 ジェルが室内の壁の方を向く。


「こっちの言葉覚えて書類整理得意な奴、二体ほど来てくれ。」


 すると、壁の一部が金属っぽい色に変わると、そこから正方形の切れ目ができて、箱型汎用作業機械キューブがにゅっと出てきた。……最近、積んでないなぁって思ってたら壁に偽装していたのか。

 ジェルに言われた通り、二体出てくると、ジェニーさんの足元で止まる。


「これは?」

「キューブという何でもできる有能な…… 仲間ですな。喋ることはできませんが、こちらの言うことは理解してくれます。仕事の仕方を教えてあげてください。」

「……いいのかい? 魔道具としたら大変高価な物だと思うが?」

「非売品ですがね。便宜を図ってくれ、とは言いませんが、面倒になったときの後ろ盾になってくれればそれでいいです。」


 打算的だな、とジェニーさんが男前な笑顔を見せる。


「分かった。ありがたく拝借することにしよう。これで暇ができたら、また食事とお風呂をいただきに来るよ。」


 そういい残して、この町の領主様は颯爽と去っていった。



 後日、というか、翌日。昨日より元気はつらつなジェニーさんがやってきた。早速キューブは大活躍で、文字通り寝ている間に溜まっていた書類が片付いて、すっかり人間らしい生活に戻れたそうだ。

 そして大浴場に使った後、リーナちゃんの料理をたらふく食べて、ツヤツヤしながら帰っていった。バモンさん、ガイザックさんに続く第三の常連さんになったのかも知れない。

お読みいただきありがとうございます。

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