お風呂に入ろう
完全には治ってないけど、まぁ普通に動けるくらいにはなりました。
治りが遅いなぁ…… こんなことないようにストックしておかないとー
ご飯食べたしデザートも食べた。じゃあ風呂入ろう、と。
そんなわけで、大浴場の前の更衣室。
建物の裏側に追加された小屋二つ。その片方が大浴場である。本当は男湯と女湯を分けたかったようだが、そこまで大規模にすると母屋によりも大きくなるから断念したとかしないとか。
一日で作ったとは思えないほどの完成度だが、まぁ気にしても始まらない。
アイラはとりあえず「え? うちの裏にこんな建物が……?」とやや虚ろな目になっていたが、そろそろ慣れてほしいものである。
仕掛けというかタネは簡単で、簡易ハウス、ってものがあるんだ。シートとパイプの組み合わせにしか見えないが、自在に硬化して組み立てる、という代物である。今回はこれで大枠を作り、カモフラージュするために裏表に木の板を貼ったようだ。
へぇ、便利-って思ったら「ジェラードの特製品だからな」と。市販品はもっともっと性能がショボかったらしい。
更衣室も六人分の脱衣籠が棚に入っているんで、それくらいの人数が入れるということだろう。入り口も簡単な木のドアにフックみたいな内鍵がついてるように見える。
この「ように」が曲者で、ジェルはリーナちゃん(あたしはついでみたいにいつも言ってるが)が使う施設の防犯には魂を込めている。たぶん、この大浴場は覗きも泥棒も無理だろう。うん、絶対。でもチャレンジャーいないから、凄さが今一つ実感できない。したくもないが。
「おっふろー!」
女の子同士とはいえ、知らない人がいるところで脱ぐのは若干ためらいがあるかも、なんて思ってたらスポーン! とリリーが全裸になっていた。
ああ、そっか。この世界にはまだ下着の文化がそんなに発達してないのか。スポーツブラ&ショーツをもっとシンプルにしたようなデザインで、伸縮性のある布もないせいか、ホント「着けてるだけ」みたいだ。リリーにいたっては慎ましやかだからか「上」を着けてない。
となると、逆に……
「うわ、綺麗……」
アイラがあたしの方を見て、呆然とした声を出す。そりゃ、あたしたちにとっての「普通」の下着なんて見たこともないか。王家とか貴族とかだったらあるかも知れないけど。
そんな感嘆の声も、すぐに奪われることになる。
「「…………」」
リリーまで言葉を失ったようだ。
「?」
見られているリーナちゃんが小首を傾げる。なぜそんなに見られているか理解していない顔だ。
あたしはそろそろ慣れたが、超絶美少女なリーナちゃんは脱いでも凄い。グンバツだ。
凄いといっても、グラマーなわけじゃない。スラっとした足のライン。ヒップから腰のラインも艶めかしい。胸元に至っては大きすぎず、小さすぎず、純粋に美しい。
大きいとか、細いとかじゃなく、均整がとれて美の女神の化身、と言われても納得できそうな感じなのである。
頑張ったら追いつけそうなスタイルと思わせておいて、どんなに頑張ってもたどり着けぬ桃源郷と言うべきか。
でもリーナちゃん自体がそういう自覚が全くないし、よほど捻じ曲がった性格じゃない限り、リーナちゃんと接したら毒気を抜かれて妬んだりは出来なくなってしまう。
「あの、皆さん。そろそろ入りませんか……?」
冷暖房完備だから、裸で突っ立ってても身体を冷やすことはないが、さすがにお風呂がもったいない。
よし、行くぞ!
「お~」
湯気が肝心なところを隠してくれるので、タオルで気を遣う必要もないのが助かる。湯気には最後まで頑張ってほしい。
と、大浴場のフロアはタイル張りだが、濡れてもすぐ乾くタイルなので、滑る心配はない。しかもほんのり暖かいので、実に快適だ。浴槽は木製でほんのり木の香りがする。大きさはちょっと泳げそうなくらいある。
まぁ、見てはいないが、浄水と保温機能がついているから、いつでも入れるに違いない。まぁ、たまには清掃が必要なんだろうけど、汎用箱型作業機械任せでいいに違いない。
素晴らしい。
パーフェクトだジェル。
早速身体を洗って、髪を洗って…… と、予想通りボディソープにもシャンプーにもコンディショナー、ついでにシャワーに驚きを隠せないアイラとリリーに使い方を説明して、全員で浴槽に浸かる。
(ほわー。)
頭の中のルビィの声も蕩けそうだ。
アイラもリリーも浴槽のふちを枕にしてぷかぷか浮かんでいる。
温度もそんなに高くないし、のぼせそうになってもリーナちゃん見てるから大丈夫か。
ガールズトークでもしよう、と思ったけど、二人ともお風呂に心を奪われてそれどころじゃなかった。
ま、分かってるけど、あたしも含めてみんなの描写はそんなにしないからね。安くないのよ、うちの娘たちは。
まぁ、気になる人もいると思うから、大雑把な表現だけど、
リーナちゃん>アイラ>あたし>リリー
かな? 身長とか何かが。
あたしが一番年上なはずなんだが、なんでかなぁ、もう。
お風呂上りといえば、ミルク系のドリンクというのが定番らしい。それはともかく、入浴で失った水分を補給するのが身体にいいらしい。
そんなわけで、更衣室には自動販売機みたいのがあって、好きな飲み物を飲み放題である。リーナちゃんは冷たいハーブティを。あたしはスポーツドリンクだ。
脱いだ服も洗濯機に放り込んでおけば入っている間に乾燥まで済んでいる。さすがに下着は入れないが。
使い終わったタオルも、専用の回収箱に入れておけば、洗われてタオル置き場に戻される。いたせりつくせりだ。
ベンダーやドライヤーの使い方を教えながら、洗い終わった服に着替える。
今までそんなトリートメントをしてなかったアイラとリリーは、一回洗っただけでツヤツヤになった肌や髪に驚いている。さらに言うと、鏡も高価な物だったのか、壁一面の歪みも曇りもない鏡を前にクルクル回って自分を眺めて、はしゃいでいるようだ。
「ねぇねぇ、アイラ! 明日も入りに来ていい?」
「いい、って言うか…… ねぇ、ホントにこんな凄いの建てて良かったの?」
いやぁ、あたしの口からはちょっと。
(また入りたいのー!)
弾けるようなルビィの声に、さすがにやりすぎた感じがしないでもない。
でも女の子には必要なものなのよ、ね?
円盤になっても湯気が頑張ってくれることを祈ります!(謎)




