甘いものを食べよう
そろそろ人物紹介をアップデートせななぁ……
読み返したら、微妙に矛盾があったのでこっそり修正しました
「デザートです。よかったらどうぞ。」
カレーの皿を片付けたリーナちゃんが、木のカップに入ったものを一つずつ置いていく。中には黄色いものが見えた。改めて出されたスプーンでつつくと弾力がある。
これはプリンのようだ。
まぁ、卵とミルク、砂糖さえあればできるはず。となると、こちらでもどうにかできるはずだ。作り方がこちらにあるかどうかは不明だけど。
「美味しい!」
「何これ! 初めての味だわ……」
リリーとアイラは大騒ぎである。
ん。相変わらず美味しい。材料のせいか少し風味が違うが、味のバランスや柔らかさに蒸し加減が素晴らしい。
プリンを掘っていくと、底にカラメルが見える。これがまた難しいんだ。砂糖を焦がすだけなんだけど、その「だけ」が難しい。
あたしも何度かやったことあるんだけど、五回に一回くらいかなぁ? 一応は食べられたのが。
黄色いプリンに褐色のカラメルを絡めて口に運ぶ。
おお、(美味しいのー!)
……セリフ取られた。
(甘いお菓子はたくさん食べたけど、こんな美味しい甘さは初めてなのー! 苦いけど、美味しいって不思議なのー!)
え~と…… 記憶を掘り起こす。
あたしの知ってる「中世」ヨーロッパだと、砂糖は貴重品で、そうなると「豪華なお菓子」なんて物はとにかく砂糖をたくさん使ったらしい。
何となくだけど、ルビィってもしかすると、貴族とかそういう所の娘なのかもしれない。なんかこう、教育を受けている感じなのよね。
(さっきのはちょっと辛かったの。でも美味しかったの。)
それは良かった。
「何これ! 苦甘くて美味しい!」
「砂糖なのは分かるけど、焦がしてる? でもそれだけでこんな風に作れるの……?」
そう思うよねぇ。でも水と砂糖だけなんだよね。……あれ? 砂糖?
「リーナ、一つ疑問なんだがいいかな?
あ、いや、別に責めるとか、そういう話じゃないんだ。ただな、この砂糖はどこから出てきたのかな、と。」
「あ、はい。」
ジェルの質問にリーナちゃんがにこやかに答える。
「博士が言われてた鍋が甜菜糖でしたので、それはそのまま煮詰めました。食糧庫にまだ何本かありましたので、そちらで別に甜菜糖を作りました。」
「……いや、鍋のをそのまま使っても良かったんだがな。」
「そうでしたか。それではお言葉に甘えて、砂糖のストックに追加しておきますね。」
それでは片付けさせていただきます、と空いたプリンの容器を回収しにまわる。
リーナちゃんと、手伝いに行くヒューイがキッチンに下がってくと、入れ替わりにアイラがハーブティをいれてくれる。
「ふぅ~ お腹いっぱい。食べた食べた~」
と、大変ご満悦なリリーだが、急に悲しげにうつむく。
「でも明日からどうしよう……」
「それで思い出した。カイル、さっきのはどうした?」
「ん? あ? 俺?」
なんか知らないけど、お前だよ。
「えっと…… ああ、そうだそうだ。思い出した。アレだろアレ、うんアレ。」
……色々忘れてそうな不安が。
「えっとだな……」
おーい。
「そうだ、思い出した!
アイパッチのおっさんがな『片付いたら』詳しい話を聞きたい、とよ。」
何度も言うけど、ガイザックさんね。
「へぇ。」
カイルとジェルの目が鋭くなった、ような気がする。
「一応『手伝って』くれるってさ。」
「カイルの予想は?」
「『向こう』は力入れたいな。『こっち』は嫌がらせ程度だから、ジェラード一人でもいいくらいだ。」
「……下らんは仕事したくないなぁ。」
やれやれ、と肩をすくめるジェル。
何か知らんが、仕事はしろ。
なんてやってると、リーナちゃんとヒューイが戻ってきた。
「そういえば、」
席に着いたヒューイが思い出したように言う。
「さっきは聞きそびれたが、そちらのお嬢さんは?」
「へ? あたし?」
……そういえば、二人に紹介するのを忘れてたような気がする。というか、あたし達もちゃんとリリーに自己紹介した記憶がない。
畑を見に行ったついでに、飢えて倒れてた彼女を助けて、チャラい商人を(あたしじゃないけど)ぶっ飛ばして戻ってきたっけ。それからカレーとプリンに興奮して、やっとお腹も心も落ち着いたところだ。
「えっと、あたしはリリー。アイラの友人で畑耕してます。」
わざわざ立ち上がってペコリと頭を下げるリリー。なんかこう「妹」っぽい。アイラが可愛がるのが分かるような気がする。
あたし達も次々に当たり障りのない内容で自己紹介をする。まだアイラには違う世界から来た、とは言ったけど、そんなにあちこちでする話でもないので、リリーにはちょっと遠くから来た、くらいしか言えない。
「そういえばさリリー。今日はうちに泊まってく? あたしの部屋になるけど……」
「おお、それはいい。
もう外も暗いので、女性が外に出るのはお勧めしません。」
「暗いって…… えぇ?!」
言われて外を見たリリーが真っ暗なことに気づいて驚きの声を上げる。
「というか、なんでこんなに明るいの?!」
今頃気づいたか。店内の照明が外の明るさに合わせて、少しずつ調光しているとは思うまい。……あたしが凄いんじゃないけど。
「あ、まだ公衆浴場やってるかな……? ってお金ないんだ……」
あ、公衆浴場あったんだ。そういえばあたしも昨日シャワーすら浴びてない。こうなったらせめて濡れタオルで身体を拭くだけでもしたいよぉ。
「もう出来てるぞ、風呂。」
なんですと!
カイルの言葉に首の筋を痛めそうな勢いで振り返ってしまった。よく見ると、リーナちゃんも目を輝かしている。アイラとリリーは信じて無さそうな顔をしている。
「大浴場? 大浴場なの?!」
「そりゃまぁ。
うちには無駄にデカいやつがおりますからねぇ。」
「褒めたって何も出ねぇぞ。」
そう聞こえるんだ、こいつには。
そんなことはどうでもいい。お風呂よお風呂。大浴場!
「リーナちゃん行くわよ! アイラもリリーも今すぐ準備して!」
二階の荷物を取りに行きながら、そういえばシャンプーとかも無限にあるわけじゃないんだよな、ってことをふと思い出した。
次回はお風呂でやんす




