宴会の裏方をしよう
アカン、全然話が進まない。
元々の世界でも、お酒を飲む年齢に関して、うるさく言われなくなっている。どんなに法律で縛っても飲む奴は飲むし、飲まない奴は、ってことなんだろう。
一応、お嬢様育ちってことになってるあたしは、ほどほどの年齢からパーティ的なところでお付き合いで嗜む程度には、と。まぁでも別のお酒を飲むのが好きなわけじゃない。
「あ、これ、お願いします。」
リーナちゃんが出来上がった大皿を持ってきた。宴会状態の「雄牛の角亭」は料理も酒も消費量が激しかった。
ご近所さんが持ってきてくれた料理もすぐさま無くなり、アイラとリーナちゃんがフル回転で料理中である。
バモンさんが持ってきた肉は、さっきの巨大牛ではなく、普通?の牛肉らしい。熟成に時間がかかるとか。その代わり、内臓は新鮮ホヤホヤだそうで。
料理の手伝いはできなかったんで、まぁ給仕のお手伝いというか、ね? でも最初にちょっと味見ができたんで、良かったと言えば良かったかも。
というわけで、このローストビーフみたいのも実に美味美味。空いた皿を重ねて場所を作ると、大皿を置く。
「野郎ども! 料理の追加だ。喜べ!」
雄たけびのような歓声が上がり、酔っぱらいどもが肉料理に群がる。またも乾杯の声が聞こえて、男たちの宴は夜遅くまで続いた。
もう何度厨房と店内を往復したか忘れたが、不意に勢いが止まった感じがした。気が付くと厨房から調理の音が途切れていた。
ひょいと厨房の中を覗くと、材料が粗方尽きたのか、残り物で賄い的な物を作ったリーナちゃんが、アイラと談笑をしている、と思う。
全然平気そうなリーナちゃんと対照的に、アイラはすっかり疲れ果てた様子で、調理台に突っ伏していた。
「あ、ラシェルさん、お疲れ様でした。
お料理は足りてました?」
ああ、うん。
だいぶのんびり飲みモードになっていたし、すでに三割くらいは潰れてたかな? まぁ、カイルはまだまだ元気だったが。
……そういえば、気のせいかも知れないけど、ジェルとヒューイは? そういえば、ヒューイは時々見たな。って、時々?
「いや、大したことはしてませんよ。」
オールウェイズ白衣の癖に、神出鬼没のジェルがいきなり現れる。
「うわ、出た!」
疲労困憊のはずのアイラが跳ね起きて、あたしの代わりに初々しい反応を見せてくれる。
「……意外と傷つきますな。」
「おかしい、こいつ偽物だ。」
「失礼な。」
言わせておこう。
「で、どこ行ってたの?」
姿を見せなかったんだろうから、何か暗躍していたに違いない。
「そうですねぇ。人知れず世界を救っていた、ってぇのはどうですかね?」
あんたは煙幕弾に弱いコンピュータと戦っていたんか。真面目に答える気が無いってことは、それなりに「お仕事」をしてきたんだろう。となると、ヒューイもかな?
「そういやぁ、ヒューイが今戻ってきたんだが、微妙に小腹空かせているようだ。何か残ってるか?」
「はい。
今ヒューイさんは中ですか?」
「そうだな。あと、そろそろお開きっぽいから、シメになる物があるなら出すと喜ばれるかもしれない。」
分かりました。準備します。とリーナちゃんが隅に置いてあった大鍋を竈に乗せる。
温めなおされた鍋からまたいい匂いがしてきた。結構味見してお腹いっぱい、って思ってたけど、リーナちゃんの料理の魅力には勝てない。
何も言わず、ごく自然にあたし達の分を装っていくと、大鍋を持って店内に入っていった。
リーナちゃんの残していった具だくさんのスープみたいのは大変美味しゅうございました、まる。
「つっかれたー」
さっきのリアクションで、体力を使い切ったアイラが、匂いにつられてもそもそ顔を上げる。
「久しぶり。こんなに…… 楽しく料理したの。」
顔は疲れてるのに、目がキラキラしている。
小耳にはさんだ感じだと、しばらくはあんまり楽しい料理じゃなかったんだろう。
「……やっぱり、ありがとう、って言うべきなのかな?」
アイラの漏らした呟きに、ジェルが皮肉げに唇の端を歪める。
「礼を言うのは全然早いですよ。これからまだまだすべきことはありますからね。
ただ今日はゆっくりお休みください。」
「うん、分かってる。
あたしね、明日が来るのが楽しみ。
きっと忙しくなるんでしょ? で、驚くことがいっぱいなんでしょ?」
「ご希望に添えるといいんですがね。」
ジェルがひょいと肩を竦める。
と、店内の方に目を向けた。
「どうやら皆さん、帰ったようですね。
……面倒くさいことこの上無いですが、片付け手伝わないってわけにはいきませんな。」
やれやれと立ち上がる。
そいで、あたしの方をチラッと見る。
はいはい、分かってますよーだ。
時間の使い方と、執筆の仕方をリハビリせねば……




