料理をしよう
風邪を引いたようです
次の更新(14日)間に合わなかったらごめんなさい。
竈の横を抜け、店の奥に進むと、アイラの私室らしい入り口と、いかにも倉庫っぽいドアが見えた。
予想通り食糧庫、というか倉庫だった。干した肉が吊るしてあったり、いろんな物が入っているだろう樽。酒と思われる瓶に穀物と思われる袋だ。ただあんまり量が多くないし、食料とはとても思えない雑多な家具や廃材っぽい物もゴロゴロしている。
倉庫兼、なのか食糧庫兼、なのか。
まぁ、大した問題じゃないか。
ちなみに日が暮れかかって、この倉庫内も暗くて何も見えない感じだが、リーナちゃんがジェルからもらったらしい「なんか光る物」を天井近くに放り投げて光源にした。
またも固まるアイラをよそに、リーナちゃんの腕からするりと抜け降りた黒猫がトコトコと奥へと入っていく。
「あ、ちょっと待って!」
普通に考えると、猫が入っていいところじゃないから、慌ててアイラが追いかけていく。
それとは対照的に落ち着いた歩調のスコッチだが、追いつかれて後ろから抱きかかえられる。
あ、小さな声で「すべすべ……」って言ったのが聞こえた。うん、スコッチって毛の長さと柔らかさが絶妙なんだよね。撫でてるだけで癒される、っていうか。
「ゴメンねぇ。お魚ないの。」
ふと、さっきまでの張りつめてたり驚きまくっていたのが無くなって、年相応の――前も言ったようにあたしと同じくらいの顔を見せてくれた。
その癒しパワーの偉大さを再確認してると、スコッチが意味ありげにこちらと奥の方を交互に見る。
「何がありました?」
これまたマイナスイオンが出てそうな微笑みでリーナちゃんがそう言うと、スコッチの目が一つの袋に向けられる。
「あれは……」
黒猫を抱いたままのアイラが記憶を掘り起こす。
「小麦粉、か。そういやぁパン作ろうかなと思って断念した奴ね。
でも今からパン焼くの、って時間かかるんじゃない?」
「いえいえ、」
リーナちゃんにしては珍しく、ちろっと舌を出しそうな悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「料理は想像力と思いきりです。」
竈に火を入れお湯を沸かす一方、ボウルにとってきた小麦粉を見分。当然あたしじゃない。
「粉はちょっと荒いですし、不純物も結構入ってますが…… ダマにもなってませんし、いいですね。」
リーナちゃんは料理が好きだ。正確に言えば料理を食べてもらうのが好きなんだろう。あたしの知ってる限り、リーナちゃんの料理を美味しく食べなかった奴はいない。
小麦粉を一度ふるいにかけたものを、山のようにして頂上付近を窪ませる。そこに卵を入れて(多分鳥系の卵だとおもうけど)アイラの出した油を加える。
なるほどパスタだ。これなら手早く作れるんだろう。が、アイラはリーナちゃんが何やってるのか分からないようだ。
あれ? パスタ料理、というか麺料理が珍しい?
ジェルに聞いたら色々解説してくれると思うが、それは後でもいいや。リーナちゃんが粉をこねながらアイラに説明している。彼女の目が輝いているところを見ると、料理に並々ならぬ情熱があるようだ。
明日以降、彼女の料理を食べるのが楽しみになる。
……あー すっかり見ておるだけになってしまったが、その間にもこね上げられたパスタの素を濡れ布巾で包んで寝かせ、次は味付けの準備だ。
薄く切った干し肉をぬるま湯で戻すと、いい味が出る。あとは野菜を刻んで、一緒に煮て味付けを……
あれ? アイラが困ったような顔をしている。なるほど、塩と香辛料は結構貴重か。確かここは山のふもと、ということは海は遠いはずだ。となると、自然に塩は貴重品となるわけか。
さすがのリーナちゃんも、調味料が無いと味付けはできない。仕方ないのでリーナちゃんのトランクに入ってるのを使うことにしたようだ。
くつくつと煮える鍋から良い匂いがしてきた。店内の方がざわつく。今更ながら素晴らしくお腹が減ってきた。
後は寝かせていた生地を伸ばして、包丁で切っていく。結構な量ができたが、欠食児童がいる以上は足りないかも知れない。
最初から沸かしていた大鍋に平打ちのパスタを入れる。生パスタだから茹でる時間はそんなに長くない。
(おそらく)半分くらい火が通ったところでソースの鍋の中に入れて、味を絡めながら火を通す。
よしこれで完成。香りだけで美味しそうだ。
……で、結局、あたしは何もしなかったわけだ。女子力上げたいなぁ。




