成果を確認しよう
……ふむ、どうやら周囲の反応を見ると、あの巨大な牛もどきは相当強い魔獣?らしい。でもカイルがワンパンで止めて首を捩じって倒したけど。
それこそやっつけるだけなら一撃だよね。木っ端みじんになって何も残らないが。
「どれどれ……」
ジェルがトコトコと巨大牛もどきに近づいていく。危険が無さそうなので後をついていく。
「おおぉ……」
普通に考えられる「牛」の二倍どころか五倍くらいある。その横では装甲服姿のカイルが(おそらく)ドヤ顔でふんぞり返っている。
ヒューイもリーナちゃんもいつの間にかにやってきて、興味深そうに見ている。
町の人たちは遠巻きにこっちを見ているが、こいつらといると珍しくない光景なんで、ちょっと慣れちゃったかなー、悲しいことに。
と、ジェルがちょいちょいとアイラを呼ぶ。
あたしですか? と驚いたように自分を指さし、左右をキョロキョロ見回して間違いがないことを知って、恐る恐るこっちへ近づいてくる。
「な、なんでしょう……?」
ジェルが、牛もどきを指さす。
「宿代、足りるかね?」
「……お釣りが足りません。」
どこか疲れた顔のアイラを見ながら、ツッコミが足りないなぁ、と考えてしまって、ちょっと自己嫌悪になってしまった。
「いやぁ、あんたらか。
何かやるんじゃねぇかって思ったけど、たまげたねぇ。」
槍で肩を叩きながら、さっきの門番にいたバモンさんがやってきた。
「あんたら、そうやっているところを見ると、魔獣の扱いとかよく分からんようだな。
おーい、誰かギルマス呼んできてくれ。」
バモンさんが、そう呼びかけると、オーディエンスから一人の「いかにも」なおっさんが前に出てきた。
筋骨隆々。左目にアイパッチをつけていて、わずかに足を引きずっている。引退した歴戦の戦士、というところか。
「あれ? ギルマスは?」
「まずは鑑定せんとな。」
おっさんは、アイパッチを外すと両目で巨大牛もどきを眺める。
……あれ?
「さっきよぉ、転んで膝打ってさ。痛いの痛くないの、ってもう……」
はい?
なんかツッコミどころ満載だ。あたしの感心を返せ。
「さて……」
巨大牛もどきを見つめるおっさんの雰囲気が変わった。まるで鋭い刃のような気を……無駄に放っている。
おっさんがため息をついた。
「見事なもんだ。首を折って仕留めたから、皮には傷一つない。しかもこの大きさだ。どれだけの値が付くか……」
「そもそも倒そうなんて考えるのがおかしいサイズだしな。」
「お金になるのかね?」
おっさんとバモンさんの会話にジェルが首を突っ込む。
「ああ、皮に肉はもちろん、骨や腱にも使い道はあるし、これだけの魔獣だったら魔石も十分期待できる。」
「なら買い取ってほしいが、我々としては食べられる肉と内臓と、角は別に欲しいところなのだが。」
「肉と、内臓か。食べられるのか?」
ん?
「それは食べる習慣がないのか、食べて問題があったかのどちらかな?」
「ん~とだなぁ……」
アイパッチのおっさん曰く、動物の内臓を食べることは普通にある、とのこと。ただ、討伐することが難しいロックバッファローの新鮮な死体があること自体が珍しいそうで。
そりゃ事故とか喧嘩とかで死んでいたのを見つけたところで、数日経っていたら内臓は厳しいかもね。
「そうか、内臓か……」
アイパッチのおっさんは美味の予感に顔を緩ませる。
そんなやり取りをしている間に、簡単な櫓が組まれて、巨大牛を吊り上げようとしているのが見えた。ただまぁ、その巨体に相応しい重さなのか、なかなか上がらないようだ。
が、装甲服のままのカイルが、吊ろうとしているロープを引っ張ると、あっさり持ち上がる。
……やりすぎだ。
『ジェラード! ちょっと首刎ねてくれ!』
呼ばれた。
「面倒ですなぁ……」
とは言いつつ、ポケットに手を突っ込んだまま吊るされた巨大牛の方へ歩いていく。
あたしとアイラも、何となくついていく。バモンさんとアイパッチのおっさんもついてきた。
ぺ、ペースが……




