外に飛び出そう
「緊急事態?!」
正気(ってわけじゃないけど)に戻ったアイラがいきなり鳴り響いた鐘の音を数える。
「五点打……魔獣の襲来。次が一回だから一体。次が三回で西方向、と。
って、こっちの方じゃない!」
「魔獣?」
あんまり聞きなれない言葉だ。
アワアワしているアイラが驚いたように振り返る。
「魔獣、知らないの?」
「残念ながら田舎者でね。」
ジェルがそう返すが、アイラの目が疑惑に染まる。
「田舎の方が魔獣の脅威があるはずよ。……本当に何者?
ま、いいわ。この辺に出るのはロックバッファローね。あなた達も見たと思うけど、時折やってきては壁にぶつかってくるのよ。」
もしかして、この町を囲む壁があちこち壊れてたのって……
「マズいわ。西側の壁直すの間に合ってないから、今回は破られるかも……」
よく分からないが、町を囲む壁を壊せるほどの魔獣とやらが中に入ったとしたら被害甚大だろう。
外が騒がしくなってくる。
窓から見てみると、荷物を持って逃げる人と、その反対方向に槍を持った人たちが駆けまわっている。
「食べれるのかな?」
「……ふむ、うちには無駄に大食いがいるから食い扶持は稼がんとな。」
そうなのか?
「ちょっと!」
アイラの悲鳴じみた声で、どうやら非常識な考えらしいと分かる。
「あなた達、ロックバッファローを知らないからそんなこと言えるのよ!
追い返せたらラッキーくらいの魔獣よ! こんなところにS級の冒険者もいないし、ギルドの魔法使いだって……」
ふ~ん。冒険者とか魔法使いとかいるんだ。今更ながらファンタジーの世界なんだ。
「……ちょっとゴメン。一つ気になるんだけど、いい?」
アイラが不意に声を顰める。
「何となく分かったけど、いいわよ。」
「あの大きい……カイルと、他の二人は?」
「ジェル、どこ?」
あたしの隣で、遠くを見ているようなジェルに聞いてみる。あれはこっそり飛ばしたドローンとかのカメラの映像を眼鏡で見ている顔だ。
「外だ。ん? あれが例の魔獣とやらか? 周囲の反応を見ると、相当の大物のようだ。
……こりゃいかんな。指揮を執ってる奴が退避の指示を出しているようだ。現在の戦力では敵わない、という判断か。」
あたしたちにとっては何気ない会話だが、アイラが驚いた顔をする。が、ジェルの言葉に顔を青ざめさせた。
「逃げ……た? そんな!」
弾かれたように表に飛び出していく。追うかどうか迷ったときに、ジェルが小さく「おい」と吐き捨てる。
行きますよ、と独り言のように言うと、アイラを追うわけじゃないが外に歩いていく。
「グリフォン! カイルの装甲服を今すぐ準備だ!」
耳に手を当てたジェルがそう叫んだ。
おおぅ。




