自己紹介をしよう
リーナちゃんが竈を借りてお湯を沸かして、紅茶を淹れてくれた。リーナちゃんのトランクに一通りセットが入っているらしい。
「ドア」がその仕事を全うしている間に、ヒューイとジェルがテーブルの破片とかから、仮のドアを作っていた。
どうやら「訪問者」も一通り来なくなったようで、とりあえずドアを付け直した。
フロアの方はテーブルや壁の破片が散乱していたので、カウンターのこちらと向こうにでどうにか六人分場所を作り、香りを楽しむ。ごく一部は紅茶よりも食料品の方を望んでいるようだが、まずは色々解決しておこう。
「まず、あたしはラシェル。さっきから無駄に大活躍のデカいのがカイルで、そっちのハンサムがヒューイ。それで、そこの可愛い子がリーナちゃん。」
最後の一人をどう説明しようか考えていると、肩をちょんちょんと突かれる。軽く振り返ると、白衣男が微表情ながらも何か言いたげにしている。
まったく面倒な。
「で、この怪しいのが、ジェラード、と。」
「失礼な。」
いつものやり取りに彼女がプッと吹き出す。
意図したわけじゃないが、少しは落ち着いたらしい。
「あなたたち、面白いのね。」
言われたジェルがあたしにジト目を向ける。はーい、知りませーん。その無言のやり取りをクスクス笑われる。
「あ、ゴメンね。あたしはアイラ。この『牡牛の角亭』を切り盛りしてるんだ。」
「……他に客はいないようですが。」
どうしてこの男は聞きづらいことを聞くかな。ジェルの言葉にアイラが言葉を失う。
「後、あんまり儲かってないようですし、店内も荒れているようです。さっきの男たちのことも考えると、ある程度は想像できますが。」
だから、あんたはどうしてそうズケズケ物言うかなー。
「交換条件と行きましょう。
こちらが提供できるのはこの店の改修及び、手伝い。あと、あなたの身の安全。
提供してほしいのは雨風をしのげる場所と、食事ですかね。」
「…………」
ジェルの言い出したことにアイラが目を閉じて考え込む。しばらくして顔をあげた。
「ゴメン。あなた達がそれなりに強いのは分かったし、提案もありがたいけど…… 理由が分からない。」
理由、か。
「あったっけ?」
「さぁ?」
「それより俺は腹減った。」
「私も聞いておりません。」
あたしの問いかけに三種類の返事が返ってくる。
「目についただけ、ですな。」
さらにジェルがとどめを刺す。
「は?」
真剣な表情だったアイラがカクンと顎を落とす。
「ちょ、ちょっと待って!
じゃあ何? 両親を亡くして、一人でこの店を切り盛りしていたとか、あいつらがどっかの貴族の私兵で、この店で好き放題やってて、今日はマジでヤバかったわけで、とか。
そーゆー事情とか一切合切無し?!」
なるほど、アイラも色々大変だったのね。
「ありていに言えばそうですな。
さっきも言った通り、我々はちょっとした迷子で、お金も無いけど女の子が二人いるので野宿は避けたいのですよ。」
「…………」
なんか、あたしがよくやりそうな表情になるアイラ。年も近そうだし気が合いそうだ。
「ふふふふふ。部屋ね、部屋……
ツイン二つダブル一つでいいかしら……」
どこか遠い目をしてフラフラと立ち上がる。
と、不意に鐘の音が断続的に鳴り響いた。




