話をしよう
間違いなくカイルが空けたと思われる大穴をくぐると、室内の様子が見えた。
ドアの破片に埋もれた男が一人、奥の方の壁にめり込んだ男が一人、普通に倒れているのが一人。
と、リーナちゃんに抱きかかえられているような女の子が一人で、なんか服が乱れ、というか破かれている?
「ジェル!」
見るな、と軽く威圧を込めながら白衣男を呼ぶ。あたしの意図を分かってくれたのか、着ている白衣を脱ごうとする。
あ、
自分でも何がアレか分からないけど、何となくためらってしまった。
それに気づいたのかどうか、ジェルは脱いだ白衣を頭の上で回すようにすると、また着なおす。
「着るんかい!」
と思ったら、白衣のポケットをゴソゴソすると、そこから白い布を取り出して広げる。
白衣だ。
「出てくるんかい!」
畳んでいたとはいえ、微妙に入らなそうな大きさだが、いつものことだから気にしない。
出てきた白衣を奪うと、リーナちゃんが身体を浮かしたところで、女の子に肩から白衣をかける。大きさは十分だから前さえ押さえていれば隠せるはずだ。
「大丈夫?」
女の子に聞いてみた。
彼女はジェルの予備の白衣を着ると、やや怯えながらも顔をあげて店内を見渡し、その惨状に小さくため息をもらす。
「その…… ありがとうございます?」
「なんで疑問形?」
「いや、店、すごいことになってるし。」
「……それはゴメン。」
ヒューイとカイルは男たち――ピクピク動いているところを見ると、死んではいないようだ――を外に捨ててきたようだ。
それで今は外に置いてきたトランクを回収して、店内に置く。そして「ドアの代わりに立ってろ」とジェルに言われて、カイルが入り口に立っている。
「感謝はしてるけど…… 逃げた方がいい。あいつらきっと仲間連れてやってくる。」
「ここは宿屋かね?」
空気を読む気もないジェルが割り込んでくる。
「あ、はい…… 他に客はいませんが。じゃなくて!」
「大変申し訳ないんだが、我々には今お金が無くてね。何とかするから数日、どうにかできないだろうか?」
「ですから奴らが……」
「そいつら強いんか?」
もっと空気読めない奴がいた。つーか、今はドアか。その「ドア」がなんか重たいものを放り投げるのがなんとなく背中越しに見えた。
遅かった、というか、早いなー。
「…………」
何を投げたのか理解したのか、彼女が口をパクパクさせる。
そういえば少し外が騒がしかったが、すっかり静かになったかな?
「あ、あなたたちは一体……?」
「ん~ 大きな迷子、かな?」
もうちょっと気の利いた事、言いたかったかも。




