プロローグ3(2/2)
胸糞な出来事&暴力的なことがあります
今回はちょっと長いですが、こういう話は一気に終わらせた方がよいので
視点:???
今日はいつもと違った。
すでに飲んできたのか、酒瓶を手に赤ら顔の男が三人。乱暴に入り口のドアを蹴飛ばして入っていると、中にいた少ない常連たちを蹴飛ばすように追い出してテーブルに着く。
いつものように食べ物と酒を要求。
手を抜けばそれはそれで絡むネタにされるので、仕方ないがちゃんと作る。こいつら三人だけどうにかしたって何も変わらない。
あちこち食べ散らかしながら、不満をまき散らして酒を飲む。
聞きたくもないが、聞こえてくる罵声が、どうやら面白くないことが起きたらしい。こいつらの勤務態度で問題が起きないわけがないだろうに。断片的な話でも自業自得と推測できる。
「おい、お前、今笑っただろ。」
「いえ、そんなことございません。」
したくもない笑顔でそう答える。
「知ってるんだぞ。お前俺たちのこと嫌いだろ。」
一人の男が立ち上がってこちらに向かってくる。怖い。
「そんなことないですよぉ。」
分かってるなら来るなよ、と思うが、そんな理屈が通じるようなら苦労はしない。こいつらがここに来るのは…… あたしが弱いからだ。見下せるからだ。
「へぇ、そうかい。」
ニヤリと下卑た顔をすると、いきなり胸倉をつかんできた。
「じゃあ、好きってことだな。」
と、身体に触ってきた。
「イヤッ!」
寒気が走り、反射的に手を出すと、男が顔を怒りでどす黒くさせる。
「くそがっ!」
胸倉をつかまれたまま上に持ち上げられる。荒事に慣れているから力は強い。喉が絞められて苦しくなる。
そのまま乱暴に床に投げつけられる。決して上等じゃいない服の胸元が破れる。
床に叩きつかれた衝撃で息が詰まる。
恐怖と痛みで動けないでいると、今度は襟首のあたりをつかまれる。
ビリッ!
悲鳴のような音が聞こえて、背中が急に涼しくなる。
「キャァァァァァァッ!」
本能的な恐怖に悲鳴しか出ない。
まだ恋もしたことないのにこんなのは嫌。絶対に嫌。でももうあたしには絶望しかない。
残っている二人の内の一人が、入り口のドアに鍵をかけているのが視界の端に見えた。もう終わりだ…… この店も、あたしも、もう終わりなんだ。
目の前が暗くなるのを実感した。
……そして、次からの光景をあたしは一生忘れないと思う。
入り口に鍵をかけた男がドアごと吹き飛んだ。更に言うと、結構な厚さがあったドアが木っ端みじんに砕けた。確かに新しい、ってわけじゃないが、落とした焼き菓子みたいになるとは思わなかった。
すでに大穴になってしまった入り口から入ってきたのは、一人の巨漢だった。
とにかく背が高い。背が高いだけじゃなく、横幅も凄い。腕も足も太い。
どこか楽しそうな笑みを浮かべて入ってきた大男は、ざっと中を見渡すと、表情を少し険しくした。
と、その巨体から考えられないような速度で店の奥に進むと、今の状況に驚いている三人目の男に無造作に腕を突き出した。
今まで聞いたことないような音を立てて、三人目の男が店の奥に吹き飛んでいく。そこにあったテーブルを粉砕しながら壁に凹みをつけてやっと止まる。
「おいおい、カイル。やり過ぎだろ?」
元入り口からもう一人入ってくる。今度は絵に描いたようなハンサムさんだ。で、店内に入り、あたしを見て眉をしかめる。
「……妥当か。」
声のトーンが下がる。
あたしの服を破いた男がやっと状況に追いつく。自分の仲間が一瞬で二人倒されたことは分かったようだ。ただ、酔っぱらった頭ではカイルと呼ばれた大男の強さは理解できないのだろう。となると、この目の前のハンサムも同程度に強いかも、なんて思いつかないに違いない。
「こ、こいつ!」
腰に下げた小剣を抜こうとしたんだろう。
トン、と足音は一つしか聞こえなかったが、ハンサムさんは一瞬で男のそばに現れると、つまらなそうに振りぬいた足が男の頭を蹴り飛ばしていた。
「大丈夫ですか!」
次に入ってきたのは、あたしと同じくらいの女の子だった。薄茶色の髪をした可愛い女の子だ。その子はあたしに駆け寄ると、背中から抱きしめるようにして、肌を隠してくれる。
その子の髪からなんか素敵な香りがして、女のあたしでもなんかくらってしちゃいそう。
その子のぬくもりを感じて安心すると、今更ながら自分が危険な状況にいたことを思い出す。
「あ、博士。」
その子が顔をあげて、大穴の方を向くと、向こうから更に二人歩いてくるのが見えた。




