町を散策しよう
「あいつと酒を飲んだら面白そうだ。」
ハンブロンの町とやらに入ってすぐ、カイルがそんなことを言い出した。
「それはいいとして……」
ヒューイがあまり首を動かさずに周囲に視線を飛ばす。
「なんか雰囲気が変だな。」
「よそ者が多い、って感じですな。我々を含めてですが。」
ふ~ん、そんなこと言われてもちっとも分からないが。けどまぁ、賑わっているような気がする。
「まずは拠点、ですな。
金策に関しては時間さえあればいくらでもどうにかなるかと思いますが……」
最悪シルバーグリフォンまで戻ればいいわけだが、毎日毎日あの距離を歩くのは勘弁したい。
感覚的には午後ど真ん中くらいだろう。
アフタヌーンティが欲しい時間帯だ。
ただまぁ、誰も口にしていないが、お金がないのは致命的だ。あたしたちの世界のようにカードで支払いなんてどう見ても無理そうだ。古き良き貨幣経済であるのは明白だ。
道の左右に広がる露店や屋台を見ながら歩く。食料品から日用品、すでに調理されておいしそうな匂いが漂ってくる。
「旨そうだなぁ……」
予想通り、燃費の悪い大男がボヤき始める。さっきの右か左か、の時に昼くらいだったので軽く食べたが、朝から歩きっぱなしなので、あたしも何か食べたい気分だ。
でもやっぱりお金がないわけで……
もしかして、うろついて絡まれたらラッキーとばかりに反撃して、とか考えているんじゃないでしょうねぇ。
「失礼な。」
ジト目で見たのに気づかれたのか、ジェルがつまらなそうに言う。
「この町や世界の法を確認しない内にそんなことしてどうします。
全く短絡的な……」
理不尽に呆れられた。
周囲の喧騒に耳を傾けて情報収集をしながら歩く。町に入ったんだからどこかで休みたいんですけど。
露店の一角を抜け、酒場らしき建物が多い一角に来た。酒場とは言うが、建物が二階建てで大きかったりする。
まだ日が高いからか、酔っぱらいっぽいのはいない、と思う。
あちこち歩いて気づいたけど、外から見て外壁があちこちボロボロだったのが、内側から見るとやっぱりボロボロだった。
おそらく外から衝撃が加わったんだろう。簡単に補修しているが、土や石の壁が木の柵に変わった程度だ。あんまり安心感はない。
こう、なんというか人為的な感じはしない。想像はしたくないが、なんか大きな動物がぶつかったとか、自然災害で岩が飛んできた、とかそういう感じだ。どちらにしても関わりたくはない。
と、不意にジェルが足を止めた。
わかりづらいが、ジェルの微表情が真剣なものに変わる。
その雰囲気を感じたのか、カイルとヒューイが身構えた。
ジェルが一軒の建物を指さす。その瞬間、カイルとヒューイが走り出す。リーナちゃんが一瞬ジェルの方をみて、止める様子がなかったので、遅れて二人の後を追う。
「行きますか。」
もう状況は解決した、とばかりに小さく肩をすくめてからジェルがやや駆け足になる。置いてかれるのもアレなので、あたしも後ろをついていった。
……何かあったんだね。




