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『スフィー』登場人物・世界観紹介ページ  作者:
<土地・地名・組織など>
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聖王都ディングレイズ内部各所

▼聖王都ディングレイズ

●概要

 ディングレイズ国首都。人口は300万人を超える。エムルラトパ大陸中央寄り南東方面に所在し、<キクリエリウム大列剣脈>の『東側鍔縁』を背に、いくつもの自然環境豊かな〝採集地〟に囲まれている。

 ディングレイズ国発祥の地であり、650年以上の歴史を持つ大陸最古の都市のひとつ。

 ディングレイズ王家を筆頭に、12翼26家紋と呼ばれる36の大貴族に支えられている。また、王室が有する<聖庭12守護騎士団(通称聖騎士団)>は世界でも無類の強さを誇る最強の部隊であると言われている。


●構造

 山岳を削り出した基部の上に築かれた王城<ロ・ガ=プライモーディアル>を中心に、山沿いの階段状になった中央区から平地に向けて円周状に階層型都市が広がる。山岳の北東側のふもとに湖を擁し、外部から引き込んだ運河道とともに世界の四大芸術都市と呼ばれる景観を作り出している。

 北側にゆくほど古い区画となっており、南方面はより整備洗練された新街区である。

 北側区画は王都住民からは<遺跡街>と呼ばれ、数多くのフォークロア的逸話を持つ。王城と同じく数多の区画整理と増築を繰り返した結果、地下階層までもを含めれば存在する居住面積は〝北側〟に対して倍の地上面積を誇る〝南側〟を上回ると言われ、その全容を把握している者は少ないという。


 一方の南側は300年前の王政が打ち立てた王都拡張計画を祖に広げられてきた比較的新しい街区であり、交通面、居住性ほかあらゆる都市機能面において北側に比べて圧倒的な合理性と利便性を誇り、比較的に高い社会階級層が分布する。しかし、古の文化様相と雑居模様に満ちる〝北側〟と、整備の行き届いた整然さと洗練された芸術的建築美にあふれる〝南側〟とを見比べて、外部の評価者たちの評価が分け隔てられることは少ない。

 都市全体構造として見た場合、王都は王城を中心に外側へ走るビッグストリートによって12の区画に分けられる。そのため、王都内に存在する千以上の区画(町会など)には固有の名称があるが、街の案内などにおいては地図参照時の利便性から、この12の大区画の番号に沿って呼び倣わされることが多い。


 王城の『第1基部』沿いには綴導術師の学びの城<王立ディングレイズ・アカデミー>や綴導術に付随する関連職業の養成施設の数々が配置されている。『第2基部』からは<貴族街>と呼ばれる上流階級層の街区があり、『第3基部』からが、主に一般市民たちの暮らすいわゆる城下町となっている。


●遺跡街の都市伝説

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▼王城ロ・ガ=プライモーディアル(Ro・Grd=プライモーディアル)

●概要

<王都ディングレイズ>の中央に位置する、首都象徴たる建造物。王室の公式発表による正式名称は<ラウンド・オブ・ガーデンズ=プライモーディアル>

 ディングレイズ国発祥の地と言われる山を土台に築かれ、建国以来から653年間、拡張と増築を繰り返しながら王都の発展を見守ってきた。

 巨大な外壁の周囲には綴導術師たちによって手がけられた『羽』のような無数の防御的機構・環境保護機構が浮遊している。


●Ro・Grd=プライモーディアルにかかわる謎

 伝説の一端では、この地にて伝説の綴導術師の始祖フィースミールと古エムルラトパ王朝の最後の王アインアルスナム、そしてディングレイズ王朝最初の王であるルインフュトラウムが契約を交わし、エムルラトパ大陸の統治が引き継がれたのだとする記述がある。

 しかし王都および王城建設の歴史については謎が多く、たどりきれない不可解な点が数多く見られる。

 まず王城<ロ・ガ=プライモーディアル>の土台は王都中央山岳を丸ごと削り出したものだが、現在に至るまでの王城の増築や様相の変遷は650年間に渡って行なわれてきたものである。また中央区の都市区画もこの土台の上に成り立っているものであり、だとすると、王都建設よりも前の一番最初の段階で、少なくとも王城に関しては現在ほどの大きさになると見越してこの『削り出し』が行なわれたことになる。

 当時の文化を考えても一大事業であり、それだけの労働力を初代ディングレイズ王がどのようにして用意したのか、そして、なぜ、なんのために王都建設より先んじてこれだけの大事業を執り行なったのかという点が、現在も多くの歴史家の議論を呼ぶ謎となっている。

 この事業を終えて王都建設が始まる前の段階では、どこに王政の主体たる都市を置いていたのか、あるいはその地こそが本当のディングレイズ発祥の地であり、現在の王都と王城は、彼らにとってはまったく別の意味が託されていたのではないかという諸説もあるが、現在のところではそういった歴史的資料を持つ都市は発見されていない。


 また、現在の王城そのものに関する謎や、逸話も数多い。

 650年に渡って拡張と増築を繰り返されてきた<ロ・ガ=プライモーディアル>だが、現在に至ってはその総容積は国政執務に必要とされる充足的空間量を圧倒的に逸脱している。

 増築の中で分断されたり忘れ去られた階層・回廊は歴史資料を紐解けば数え切れないほど見つけられるし、当時の用途が分からない部屋や、それどころか増築計画時に追加設計されてそのまま埋め立てられた、最初からそうするつもりであったとしか解釈できない意味不明な施設も数え切れないほど存在する。

 使用されていない部屋も数多く、国政・外交両面において圧倒的に高い内外評価を得るディングレイズ王室が、税金の浪費であると批判的評価を受ける、ほぼ唯一の要素と言っても差し支えない。

 しかしながらどういうわけか高潔の名声をほしいままにするディングレイズ王室は、この一見無計画な浪費活動としか思えない王城の増築・改装計画だけは、どれだけの批判を受けようとも650年の歴史の中にあって一代たりとも怠ることがなかったのである。

 このことを発端に一部地方での武装蜂起や王都における市民暴動までが引き起こされた歴史があるにもかかわらず、それら歴史的時事に当たっても当時に公式な発表がなされたことは一度としてない。

 近年になり、ようやく、<ディングレイズ・アカデミー>で行なわれる綴導術や保管される秘宝の数々と、王城に施された綴導術的機能の〝蒼導脈〟面での均衡を取る目的であるという旨の発表がされ始めているが、このことを裏づける具体的なデータ詳細の開示はやはりされておらず、現<アカデミー>総理事であるフォマウセン・ロウ・アーデンハイトの後押しとなる言及もない。

 結果として現在の王城は初めて訪れる者ならかならず案内人をつけなければ〝遭難〟してしまう大迷宮と化しており、現に、来訪した国賓の何人もが行方不明になって捜索隊の手によって救出されるという珍事が毎年起こっている。


●王城に渦巻く数々の逸話(『忘却謁見室』)

 また、そんな救出された彼らが王城に迷い込んだ時に体験して祖国に持ち帰る〝都市伝説〟も数多く存在する。

 いわく、『王城の忘れ去られた階層を無作為にさまよう〝彷徨神殿〟を見た』『とある回廊には歴代ディングレイズ王族の肖像画が並びたてられているだけの不思議な部屋があり、訪れるたびに違っているその肖像画の王族たちの口の形を順々に発音してゆくと、過去や未来の予言が現れる』『果てしない放浪のすえに12聖騎士団のうちのひとつの名前と紋章を持つ扉を見つけたので騎士団に助けてもらえると思い扉に手をかけたら、だれもいないはずのうしろから「その扉に触れてはいけない!」と叫ばれて慌てて逃げ帰った』『夜の王都をさまよう〝霧の街〟とつながった回廊があり、そこからは常に数百年前の姿をした王都へと出ることができる』などなど、枚挙に暇がない状態である。

 しかしもっとも新しく出所がたしかとされている有名な逸話は、北方リンカーイェルバ皇国のイスタリシェル・ブラン・ウェイバール大公が迷い込んだと言われる『忘却謁見室』である。

 ある夜に開かれた晩餐会の折、孫娘の手が離れたのを機に、酔いを醒まそうと王城の散策に出かけたイスタリシェル氏がふと同じ様相の続く回廊の中に違和感を見つけ、どうやら昼間に歩いた回廊と別の回廊を取り間違えてしまったと気づいた。よくよく注意を凝らして見ると、普段は広大な敷地を誇るにもかかわらず清掃が行き届いている回廊なはずが、今いるこの回廊だけは、やけに埃が散り積もっているのである。柱や石材にも経年放置を思わせるくすみが多く、まるで放棄されてから何百年も経過したあとのようであった。

 まばゆい明かりだけが灯された静謐で壮麗な回廊の様子に少しだけ酔いと肝を醒ました大公は、引き返して人を呼ぼうと考えた。

 しかしそんな折に大公を呼ぶ声が反対方向の回廊の奥から聞こえてきて、大公は自分がいなくなったことに気づいた城のだれかが迎えにきてくれたのだと思い、呼び声を追うままに回廊の奥へと進んでいった。その先でたどり着いたのが『忘却謁見室』である。

 その入り口の概観は昼間に彼が訪れた謁見広間とかなりの部分が似通った様式をしており、大公は自分を呼んだのがディングレイズ王だったのだと思って扉をくぐった。

 ところが内部に広がっていたのは明かりの灯されていない、薄暗く広大な謁見広間だった。イスタリシェル大公は霊廟のような雰囲気へと変じていたそこで、居並んでいた歴代ディングレイズ王家の面々と対談をしたのだと言う。

 そこで王たちは大公にさまざまなことを語って聞かせた。その中には、大公がその日の昼までに現ディングレイズ王と話し合っても折り合いをつけられずにいた『クラムヴェルト聖堰管理協定』のことも含まれていた。大公がディングレイズ国を来訪した理由が、三大陸間で協議され、ディングレイズ王国の主張により締結が暗礁に乗りかけていたこの協定についての譲歩を個人的に打診するためであった。大公は彼らからディングレイズ王家が二大陸に対して一方的に譲歩を迫らざるを得なかったその真意を聞き、無条件でディングレイズ王国の提案を受け入れることを決意した。

 その後イスタリシェル大公は歴代王家の皆から元の王城へ戻る道を丁寧に教えてもらい、無事に捜索隊との合流を果たすことができた。大公が帰った時には、すでに朝になっていた。

 この事実関係をしばらく大公は沈黙とともに否定していたが、彼の帰国後速やかにリンカーイェルバ皇国が協定の調印に応じたことは事実である。

 この逸話を外部へともたらしたのは彼の家に勤める家令であったという。流出した話の詳細に彼が家令にしか語っていないことが含まれていたために、彼は一旦は怒って家令の一家を追い出してしまい、その間はこの逸話に関する一切にも沈黙を貫いていた。しかし代々大公家に仕えてきてくれていた彼ら一族への仕打ちが不憫になった大公が彼らを許して呼び戻し、彼自身もこの逸話に関する体験が事実であることを、とある社交の席で歓談がてらに尋ねられた際、認めるに至ったのだという。

 少なくともその席で大公に真相を尋ねた貴族自身の証言はたしかなものであるが、政治的側面の薄い内輪的な晩餐会での、酒も交えた中での会話である。大公自身が気を取り直したことによるジョークの一種であるとも言われており、また大公自身がこの逸話について自ら喧伝することがないために、本当の真相については分からないままである。

 しかしながら付随する余談として、大公が再度来訪して王と対談した際、警護に呼ばれていたという聖騎士からメイドサーヴァントを経由してもたらされたという、この話はつけ加えておいた方がよいだろう。

 大公がその時に歴代の王族に聞かされた話の中には、ディングレイズ王が幼いころの失敗談や笑い話もが含まれていた。

 王自身しか知らないはずのその話を大公から聞かされ、しばらく唸っていた王は、言われてようやく思い出したというような素振りを見せ、深く苦く笑ったのだという。



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