人類進化プロジェクト
世界は疲弊していた。
増加する人口。
自然破壊。
環境変化。
そして放射汚染。
人の成長とともに発達する技術。
それはエネルギーの推移による変遷。
蒸気機関による船と鉄道から始まり、石油化学、そして核融合。
これら全てが不完全なものであり、クリーン・エネルギーと呼ぶにはお粗末な物であった。
加えて資源すら枯渇する情況にある。
永久的はおろか、半永久的すら望むべくもない。
電気として使うだけならば太陽光発電などの電池が開発されているが、それは……地下資源を必要としていた。
それの採掘にもやはり……自然が破壊されることになる。
何故こうも上手く事が運ばないのか。
何故、何をやっても中途半端で終わってしまうのだろうか。
人々は智慧を振り、原因を究明していた。
しかし、どんなシミュレーションをしても、結局は……失敗に終わってしまう。
やがて一つの結論がでることになる。
それは――人類が未熟ということだ。
ならば人の成長を待てばいいのだろうか。
だが、そのような時間など自分らにはない。
自らが生きている内に、結果を出さなければ何の意味も……ない。
そもそも種としての寿命が、どれほどあるのかも分かったものではない。
その時、一人の天才がつぶやいた。
「ならば……、我らの手で進化させるしかあるまい」
議会はその言葉で騒然となった。
それは神への冒涜だと……。
出来たとしても夢物語だと……。
「ならば…………諦めるのかね?
我らはともかく、子孫に残す物は必要ないとでも?」
天才のその言葉は、参加しているもの全ての総意である。
そもそも言葉に出せなかった事を代弁していたに過ぎなかった。
滅びの気配を前に、神などと……言う戯言は建前以外の何物でもない。
もし出来なかった場合、無能というレッテルを貼られるのが怖い。人類史の汚点になるのが恐ろしい――ただそれだけの事だった。
結局この天才の一言が切っ掛けとなり、新エネルギー……を作るより前に人類の進化を促す方針にきまった。
だが、それも――思ったようには進まなかった。
最初は医学的に進めていた。
バイオテクノロジーによるクローン計画。
それは世界的倫理により、頓挫することとなる。
次は妥協案として出された薬によるもの。
肉体的には強靱になってもそれは進化ではなく、肉体強化に過ぎない。
ならば脳の強化をしたらどうなるのだろうか。
しかしその計画が始まった途端に、マスコミにより暴露される。
結果……その計画も打ち切るほかはなかった。
彼らは人の救済を、人の未来を願っている。
にも拘わらず、それを邪魔するのもやはり……人。
そんなとき、再びあの天才が彼らを導いた。
「諸君、……嘆くことはない。
これも人類が未熟だからこそ、起こりうることなのだ。
ならば認めようじゃないか。
この計画も我らにはまだ早い、ということだと」
更にこう続けた。
「一つで駄目なら二つ、それでも駄目なら三つ。
医学、科学……そして工学。
人の倫理が邪魔をするならば、人を辞めればいい。
それが有る限りは、人は人であることを辞められない。
だからこそ工学――機械と生体の融合!
これこそ我らの新しく目指す道に他ならないっ!!」
天才がカリスマに満ちていた……というだけではない。
彼らは追い詰められていた。
度重なる失敗に次ぐ失敗。
彼らのスポンサーも次第に離れつつあった。
もはや人の未来だけではなく、彼らの時間すらも少ない。
故にこの天才の案で最後の博打にでることになった。
ここに人類進化プロジェクトが発足した。
後に、この神をも恐れぬ所業は、《大罪人》アレクサンドル・キルヒコッフによる『人類破滅計画』と呼ばれることになる。




