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第六話「優位」

 ジュヤン=ゲケツの巨体が、確かに後退した。


 さっきまでとは違う。

 ただ押されるだけじゃない。俺たちの刃も、魔術も、届いている。


「……永和! 今の魔力弾、いいとこ入ったわ!」


 ニイコタが笑いながら斧を構える。


「お前の一撃もすげぇだろ……! あんな切り裂き方見た事ないぞ!」


「フフ、二人とも甘いな。 決め手を入れたのは私とジョリよ」


「どっちが入れたかで喧嘩すんなよジュリ……!」


「いやいや、私の刃が先に入ってたでしょ!」


「どっちでもいいだろ! 倒せりゃな!」


 戦場の真っ只中だというのに、気づけば口角が上がっていた。

 ――祖父たちも、こんな風に仲間と笑いながら戦っていたのだろうか。



 俺たちの攻撃は、確かに魔王を追い込んでいた。


 ニイコタの《超双剣オーバー・ツイン》が鱗を裂き、

 ジュリとジョリの連撃が肉を削ぎ、俺の高火力簡易魔術が、隙間を狙って爆ぜる。


「……ふ、フハハ……!」


 ジュヤンが笑った。

 苦痛ではない。歓喜に震えている。


「やるな。 まさか、この我をここまで追い詰めるとは……!」


 冒険者たちがざわめいた。

 誰もが「勝てるのではないか」と思ったのだ。


「……押してる……!」

「ジュヤンが、退いてるぞ!」

「もしかして、あの四人が……!」


 俺も思っていた。

 本当に――勝てるんじゃないか、と。



「永和! みんな! 一気にいくわよ!」


 ニイコタが叫ぶ。


「合わせろ!」

「了解、任せて!」

「任せて!」


 四人の気配が、同時に収束した。

 ニイコタの双斧が唸りをあげ、双子の剣技が閃き、俺の魔力が爆発する。


「これで――終わりだぁぁッ!」


 轟音。閃光。衝撃。

 全力の連携攻撃が、魔王の胸を直撃した。


 黒鱗が砕け、肉が裂け、血が飛び散る。


 ――沈んだ。


 その瞬間、俺たちの胸に「勝利」の二文字がよぎった。



 だが。


「……ク、クハハハ……」


 立ち昇る黒煙の中。

 ジュヤン=ゲケツは、不敵に笑っていた。


 砕けたはずの鱗の奥から、禍々しい光が滲み出す。

 大地に黒い紋様が走り、空気が一変する。


「英雄の孫よ……確かに貴様ら、素晴らしい。 ――ゆえに、見せてやろう。 古き魔王の秘術をな」


 黒い尾が大地を貫いた瞬間、戦場全体に禍々しい魔法陣が展開された。


 押していたはずの俺たちの心臓を、一瞬で鷲掴みにするほどの絶望が広がる。


「な、何だよこれ……!」

「空気が……重い……ッ」


 俺たちの四人連携は確かに届いた。

 だが、それでも。


――相手は”原初の魔王”だった。

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