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第五話「激戦」

 魔王ジュヤン=ゲケツの翼が広がるたび、戦場全体に圧が走った。

 咆哮一つで空が震え、影が広がる。


「……凄い迫力だな…」


 思わず息を呑む俺の横で、ニイコタが歯を食いしばる。


「強いからこそ、叩き潰す価値があるんでしょ!」


 彼女が飛び出した。

 両手の巨大なトマホークを交差させ――


「早速だけど喰らってもらうわ! 《超双剣オーバー・ツイン》ッ!」


 刃が閃光を描き、二重の軌跡が魔王の黒鱗を斬り裂く。

 地を割るほどの一撃。

 その瞬間だけは、確かに魔王の巨体が押し返された。


「ほう……コタルティスの血か。懐かしいな」


 ジュヤンの瞳が愉快そうに細まる。



 後方から、矢の雨と光弾が飛ぶ。

 他の冒険者たちが魔獣を必死に押し留めているのだ。


「お前ら! 今だ!」


「分かってる!」


 俺は手をかざし、魔力を込めた。

 簡易術式――たったそれだけで、魔力が暴力的に収束する。


「――砕け散れッ!」


 放たれた光弾は、大砲を凌ぐ轟音と共に直進。

 魔獣の群れを数体まとめて吹き飛ばし、爆風でさらに数十メートル先まで薙ぎ払った。


「た、ただの簡易魔法で……!?」

「なんて威力だ……!」


 冒険者たちがどよめく中、俺は歯を食いしばる。


 抑えてこれだ。

 本気を出したら、どれだけの範囲が吹き飛ぶのか、自分でも恐ろしい。



「フフ、ならば次は我が楽しませてもらおうか」


 ジュヤンが一振り尾を薙ぐ。

 黒い稲妻のような衝撃波が走り、俺たち四人がまとめて吹き飛ばされた。


「ぐっ……!」


 しかし、土煙の中から飛び出したのは、白銀の双子。


「ジュリ!」

「ジョリ!」


 二人の声が重なり、双剣が煌めく。

 完全に揃ったタイミングで踏み込み――


「削ぎ落とすッ!」

「落とすッ!」


 バギンッ!!!


 交差する刃が竜鱗を裂き、火花が散る。

 弾き飛ばされながらも、確かに傷を刻みつけていた。


「なかなかの速度……人間とエルフの混血か。 だが――」


 魔王の爪が振り下ろされる。

 その一撃を、ニイコタの双斧が受け止めた。


「まだ終わってないわよ!」


 衝撃で大地が沈む。

 その隙を狙い、俺は再び光弾を放つ。


 ――ドゴォォンッ!


 魔王の肩口に炸裂し、漆黒の血が飛び散った。



「クク……いい、実にいい!」

 ジュヤン=ゲケツは笑っていた。

 痛みすら楽しむかのように。


「英雄の孫たちよ。貴様ら、ようやく退屈を晴らしてくれる!」


 戦場の空気が震え、冒険者たちの叫びが遠くに聞こえる。

 俺たちは肩で息をしながら、互いに視線を交わした。


「永和、まだいける?」

「……もちろんだ」

「私もよ!」


「私も大丈夫」

「大丈夫」


 ――四人は再び立ち上がる。


 魔王との死闘は、まだ始まったばかりだった。

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