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第十一話「救い」

「……っ」


 少年は俺を見返し、かすれた声で呟いた。


「余所者なんかに……助けられても……」


「余所者だからだ」


 俺は即座に言い返す。


「俺にはこの街の“掟”なんて関係ない。 ただ目の前で人が傷ついてるのを見て、黙っていられるかよ」


 少年の瞳が揺れた。

 諦めに覆われていた色が、ほんの少しだけ驚きに変わる。


 だが、その時。


「口を慎め!」


 怒声と共に、黒い法衣の男たちが広場へ現れた。

 胸には太陽と翼の紋章――神殿騎士だ。


「異端をかばうなど言語道断! そこの旅人、直ちに手を放せ!」


 槍を構えてにじり寄る。

 周囲の空気が、再び重くなる。

 少年が怯えたように俺の腕を掴んだ。


 ――この手を離したら、もう二度と立ち上がれない。


 そう直感した。


「……やだね」


 俺が睨み返した瞬間――


「そこまで」


 澄んだ声が響く。

 桃色の髪を揺らし、白衣をまとった女神官――マセマ=サーカーズが現れた。


 広場に集まった人々が、まるで奇跡でも見たかのように頭を垂れる。


「マセマ様……!」


「女神官様が……!」


 マセマは静かに歩み寄り、俺と少年の前に立った。

 そして神殿騎士たちを見回すと、柔らかな声で言う。


「この場は私が預かります。槍を下げなさい」


「し、しかし……!」

「命令です」


 一瞬で空気が変わった。

 抗うことなどできない絶対の権威。

 騎士たちは渋々槍を下げ、数歩退いた。


 その光景に、俺は思わず口を開く。

「……助かった」


 マセマは俺へ視線を移し、穏やかに微笑んだ。


「旅人さん、あなたの勇気には敬意を表します。 ですが……軽率ですわ。 この国で“異端”に関わることは、すなわち自らを危うくするということ」


「危うくてもいいさ」

 俺は即答した。

「この子を見捨てるくらいなら、その方がマシだ」


 マセマの微笑みが、一瞬だけ深まった。

 まるで「待ってました」と言いたげに。


「……なるほど。やはりあなたは面白い方ですね」


 隣で、ニイコタが俺を小突いた。

「永和! 本気で言ってるの? この国じゃ異端は罪人よ! あんたまで巻き込まれる!」


「それでもだ」

 俺は迷わなかった。


 少年の震える肩を支えながら、はっきりと言った。

「俺は俺のやり方でやる。たとえ異端だと呼ばれてもな」


 その言葉に、マセマの瞳が一瞬だけ怪しく光った気がした。

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