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第一話「英雄の孫」

 俺の名前は――村上永和むらかみ えいわ


 十七歳。

 冒険者見習いをしている、ごく普通の少年だ。


 ……いや。

 “普通”っていうのは、ちょっと嘘になるかもしれない。


 なぜなら俺は、かつてこの国を救った英雄、村上永和むらかみ とおわの孫だからだ。



 初代・永和。

 彼は百年前、仲間たちと共に魔王ナリ=アーツを倒した。

 人族と魔族、すべてを巻き込む大戦を終わらせた、正真正銘の英雄だ。


 その隣にいたのが、ニイナ=コタルティス。

 皆は愛称で「ニイコタ」と呼んでいたらしい。

 彼女は祖母であり、初代の戦友であり……そして妻となった。


 二人はその後、ザキカメアの街で暮らし、穏やかに年を取り、数年前に亡くなった。

 俺にとっては、話でしか知らない存在だ。

 ただ、祖父母の名はあまりにも有名で、街を歩けば「お、英雄の孫だな」と指をさされることもある。


 少しだけ、面倒くさい。



 父の名は、村上永和Jrジュニア

 祖父の名をそのまま継ぎ、二代目として勇敢に生きた男だ。


 そして母は、冒険者仲間だった女――ミス=エブーイ。

 とびきり明るくて豪快な人で、俺が子供のころか

よく「冒険に行くわよ!」とわめいたものだ。


 ただ、二人とも今は隣国オッカワス帝国に滞在している。

 どうやら向こうのギルドから依頼された仕事らしい。

 数か月前から戻っておらず、俺は一人、祖父母の残した家で暮らしている。


 ……まぁ、近所の人たちが世話を焼いてくれるので困ってはいない。

 むしろ気楽でいいくらいだ。



 そんな俺の日常は、驚くほど平和だった。


 ザキカメアの街は、あの大戦の中心だったとは思えないほど活気にあふれている。

 石畳の通りには商人の声が飛び交い、広場では大道芸人が観客を集め、子どもたちが駆け回っている。

 市場には香草と焼きたてのパンの匂いが漂い、路地裏では猫が伸びをしていた。


 俺は街の冒険者ギルドに通い、簡単な仕事をこなしながら生活費を稼いでいた。

 討伐依頼といっても、大抵は雑草魔獣や逃げ出した家畜の捕獲ばかり。

 危険とはほど遠いが、それでも剣を持って外に出ると、少しだけ祖父の背中に近づけた気がした。


「よっ、永和!」


 背後から声が飛んでくる。

 振り向けば、同い年の冒険者仲間が手を振っていた。


「今日も薬草採りか? 真面目だなぁ」


「しょうがないだろ。俺、金ないんだから」


「ははっ、英雄の孫なのに貧乏暮らしかよ!」


「英雄の孫は腹の足しにならないんだよ!」


 軽口を交わして笑い合う。

 こんな日常が、俺は好きだった。



 夕方。

 仕事を終えて帰宅するころ、街の空は茜色に染まっていた。


 家の扉を開ければ、まだ祖母の使っていた花瓶が棚に置かれている。

 祖父の古びた剣も、壁に掛けられたままだ。

 彼らの思い出に囲まれながら、一人の夕食を用意する。

 焼いた魚とスープ、それだけの質素な食事。

 でも不思議と寂しくはなかった。


 ――この平和が、ずっと続けばいい。


 本気でそう思っていた。



 だが、その日の夜。

 いつもよりも少し肌寒かっただろうか。


ーー突如、街の中心部に警鐘が鳴り響いた。


 低く重い鐘の音が、夜空を切り裂くように響き渡る。


 冒険者ギルドから兵士が飛び出し、住民たちがざわめく。


「魔王だッ!!」

「国の外に……魔王が現れたぞーーッ!!」


 誰かの絶叫が、街を駆け抜けた。


 血の気が引く。

 足がすくむ。

 それでも、心臓は高鳴り、体は熱を帯びていた。


「……魔王、だと……!?」


 ザキカメアの夜は、一瞬で色を失った。

season2です!!

是非続きも読んで頂けると嬉しいです!!

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名前どうなっとんねん
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