表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超越者が紡ぐ物語  作者: あるき
エンキドゥ「静かに紡がれる友情の叙事詩」(全8話)
34/44

6神々の審判

天の高みでは、神々がふたたび評議の座に集っていた。人間界で起きた一連の出来事に、神々の怒りと懸念が渦巻いていたのである。大気の神エンリルは激しく憤りを露わにした。「人間ごときが神の定めを犯し、フンババを殺し、天の牡牛をも屠った。看過できぬ暴挙だ」これに愛の女神イシュタルも激しく同調する。「その通り。このままでは神々の威信は地に堕ちましょう。罰を与えねばなりません」女神は自らへの冒涜に対する怒りもあらわに語った。天空神アヌは静かに頷き、全知の賢神エアも目を閉じて同意を示す。一方、太陽神シャマシュは沈痛な面持ちで進み出た。「しかしギルガメシュとエンキドゥは、神々の思し召しによって結ばれし友。その功績はウルクの地を災厄から守ったとも言えましょう」友情に篤いシャマシュは二人を弁護しようと試みた。だがその声は怒りに燃える神々の前では掻き消されてしまった。


最終的な裁定を下したのはエンリルであった。「傲慢への罰として、人間に死を与えねばならぬ」しかしギルガメシュは女神の血を引く王、神自ら手を下すにははばかられる。そこで槍玉に挙げられたのがエンキドゥである。彼は生まれいずれ土へ還る定めの身、人間界の罪を背負わせるには格好の存在であった。イシュタルもまた強く頷く。自らを侮辱したその男に報復できる好機と見たのだ。かくして神々の意志は決した。「エンキドゥに死を」——その冷厳なる宣告が天上に響き渡った。創造の女神アルルは静かに目を伏せ、自ら生み出した者の運命に胸を痛めているようであった。


私は評議の間に満ちる張り詰めた静寂を見つめていた。神々の顔から怒りの色は消え、代わりに揺るぎない運命の影が宿っている。死の神がひそかに人間界へと遣わされ、エンキドゥへの命の糸を断たんとしていた。


地上では、勝利に浮かれていたエンキドゥに突然の倦怠が押し寄せた。宴の最中、彼は激しい眩暈を覚えてよろめいた。額に冷たい汗が滲み、胸の鼓動が妙に速い。ギルガメシュも心配そうに彼を気遣ったが、やがて酔客たちの喧騒に紛れてしまった。奇しくもその夜更け、エンキドゥは不吉な夢にうなされる。暗い荒野に稲妻が閃き、巨大な翼を持つ闇の存在が現れて自分を冥界へ連れ去ろうとする夢であった。跳ね起きた彼は寝台の上で震える体を抱え、茫然と夜明けを待った。私は彼の枕元に佇み、見えざる死の影がすでに肩越しに取り憑いているのを感じていた。やがて東の空が白み始めるころ、エンキドゥの身体は炎のような高熱に侵されていたのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ