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超越者が紡ぐ物語  作者: あるき
エンキドゥ「静かに紡がれる友情の叙事詩」(全8話)
33/44

5天より降りし災厄

ウルクへの凱旋の日、ギルガメシュとエンキドゥは巨木を抱えて戻り、フンババ討伐を成し遂げた英雄として市民に迎えられた。人々は二人を称え、宮廷では盛大な祝宴が開かれた。私は高殿から王が誇らしげに勝利を語る姿を静かに見守った。その傍らには忠実なる友エンキドゥが控え、共に歓喜に浸っていた。


だが祝宴のさなか、一人の熱い眼差しがギルガメシュに注がれていた。愛と戦の女神イシュタルである。彼女は王の輝かしい容貌と武勇に心奪われ、ついに天界より宮殿の庭に降り立った。燦然たる女神の出現に場は静まり返る。イシュタルは甘美な声で王に告げた。「ギルガメシュ、その勇姿に私は魅了されました。どうか私の夫となってください」――彼女は豊穣と富、そして戦での無敵の力を与えると誘惑する。


しかしギルガメシュは毅然と答えた。「女神よ、どうかこの求めをお許しください」――王はイシュタルの求婚を退けたのである。彼はその理由を隠さなかった。女神がこれまでに愛した者たちが皆、不幸な末路を辿ったことを挙げ、自分も同じにはなれないと告げたのだ。この拒絶にイシュタルの顔は羞恥と怒りに歪んだ。永遠の存在である自分が、一介の人間に辱めを受けたのである。彼女は憤怒の叫び声を上げ、そのまま天へと舞い戻った。


イシュタルは天上の父アヌのもとに駆け込み、声高に訴えた。自身の恥を注ぐ血で洗うため「天の牡牛」を貸し与えよと迫ったのだ。アヌが躊躇すると、イシュタルは怒りに震え、もし願いを退けるなら冥界の門を打ち破って死者の軍勢を地上に放ち、生者を喰らわせると脅した。天を揺るがす激しい懇願に、ついに天空神は折れた。アヌは天界の厩から巨大な牡牛を解き放ち、イシュタルの手に委ねた。


漆黒の角と炎の瞳を持つ天の牡牛が雲を割ってウルクの地に降り立った。大地が揺らぎ、空が暗転する。牡牛が鼻息ひとつ吹きつけるごとに地面が裂け、人々が次々とその裂け目に呑み込まれた。豊かな田畑は荒れ果て、川は涸れ、街は阿鼻叫喚の巷と化した。私は都市全体を覆う混乱を見下ろし、この災厄に神々の激しい怒りを感じ取った。ギルガメシュはただちに武具を取り、エンキドゥと共に荒れ狂う牡牛に立ち向かう。


天を揺るがす巨獣と人間の死闘が始まった。牡牛の突進とともに大地が裂け、二人は激しい衝撃に襲われた。それでもエンキドゥが巨獣に飛びかかり、猛る角をがっしりと掴む。振り回されながらも必死にしがみつき、ついに牡牛の頭を地に押さえ込んだ。「今です、ギルガメシュ!」エンキドゥが叫ぶ。王はすかさず剣を振り下ろし、その首筋に深々と刃を突き立てた。猛々しい咆哮とともに天の牡牛は崩れ落ちた。


かくして二人は天の牡牛を仕留めた。城壁の上でこの光景を見ていたイシュタルは悲痛な叫び声を上げた。最強の切り札が絶命したのだ。女神は涙と呪いの言葉を吐き、復讐を誓う。エンキドゥは怒りに燃え、牡牛の腿の一部を引きちぎってイシュタルへ投げつけた。「貴様も同じようにしてやれたら!」激情のあまり叫ぶ。女神は激昂して天界へ退き、巫女たちと共に牡牛の亡骸の前で嘆き悲しんだ。


勝利したギルガメシュとエンキドゥは神々に感謝し、牡牛の心臓をシャマシュ神に捧げた。そして戦利品として牡牛の角を宮殿に持ち帰り、凱旋を祝って再び宴を催す。ウルクの民は二人を称賛し、街には歓喜が満ち溢れた。だが私は見ていた。神々の怒りは頂点に達しつつあり、この勝利はやがて訪れる悲劇の前触れに過ぎなかったのである。

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