8 孤児達
「お兄ちゃん、僕らは独立することになった。孤児が増えて、孤児院のベッドが足りない。」
「じゃあ、孤児院から野菜を仕入れて、売るのか。」
「うん。」
孤児が増えたので、年長組を追い出したに違いない。
カルロスは仲間達の気持ちを考え、追い出されたとは言わない。
カルロスの肩にかかる重圧はどれほどのものか。まだ、子供なのに。
レオンは何とでもして、支えることに決めた。
「寝る場所が足りないな。」
「1階で寝る。」
「それじゃ、眠れないぞ。この辺に空き家はないか。」
「店の後ろが売りに出てる。」
「あれは、倉庫じゃないのか。」
「中は部屋になっている。」
「明日、見てみよう。今日は皆、2階で雑魚寝だ。」
翌日、家主と一緒に倉庫を見る。
「何部屋あるんですか。」
「6部屋ある。従業員の宿舎として改造したものだ。」
「倉庫は何に使っていたのですか。」
「工場で作った寝具を入れていたが、廃業した。」
レオンは金貨65枚で買い取った。
「カルロス、使うといい。」
「お兄ちゃんは、どうして、そこまでしてくれるの。」
「カルロスが頑張っているからだ。」
「お兄ちゃんは、いつも、助けてくれる。他の大人とは違う。仲間も働けるようになってほんとに嬉しい。」
「カルロス達は、家族だ。気にするな。」
孤児院から、20人、荷車を引いて、引っ越してきた。
店には6人、倉庫には14人住むことになった。2人1部屋には足りない。
大工を呼んで、倉庫に部屋を建て増ししてもらうことにした。
朝、起きると、一緒に食事をする。テーブルに座り切れないので、順番で食べる。
その後、野菜などを孤児院に取りに行き、店を開く。
元気な子供達が見ていると、自分も元気を貰うような気がする。
夕方になると、子供たちが店の片づけをする。
女の子達が、先に風呂に入り、男の子達はレオン達と一緒に風呂に入る。
それから、皆で食事をする。全員一緒に食べられないので、レオンとハルト達が食べた後、順番に食べる。でも賑やかで楽しい。
テーブルと椅子を買い足した。
その日はギルドで、掲示板の依頼を見ていると、シンシアに声をかけられた。
「何かいい依頼あるかしら。」
「帰られたのですね。」
「久しぶりに、のんびり出来たわ。レオンは何していたの。」
「引っ越しました。」
「家を買ったの。」
「はい、今、子供達と一緒に住んでいます。」
「子供達って。」
「孤児達です。」
「事情はわからないけど、楽しそうね。」
「ええ、楽しんでいます。」
5人はオーク討伐依頼を受けて、街を出た。
村の村長にオークの住処を聞き、山の麓のあばら家に向かった。
遠くから見ると、数匹のオークが屯している。
「数は30位と聞いたけど、もっといそうね。それに大きい。」
「ルキアはショートボウか。マリウスは剣か」
「練習したの。」
「僕とハルトが攻撃するから、逃げてくるのを頼みます。」
「わかったわ。」
2人は、あばら家に近づいて、屯しているオークを攻撃した。
ハルトが風刃を放つと同時にレオンは槍を振るう。3匹のオークが動かなくなり、2匹が血を流している。
止を刺して、あばら家の中に火球を連投する。
火だるまになったオークが次々と飛び出してくる。
レオンとハルトが槍で突き刺して行く。
惨殺しているような気分になるが、相手は魔獣だ。
ルキアもショートボウを放って、当たるとマリウスが止めを刺す。
ハルトが走り出し、逃げるオークを突くと、マリウスが切り倒す。
ひたすらに戦い続けると殆どのオークが倒れた。
全員怪我はなかったが、息切れしている。限界が近い。
突然、ひとまわり大きなハイオークが燃えるあばら家から飛び出してきた。
気づいたハルトが風の刃を放つが、倒れない、シンシアに向かってきた。
レオンが槍で足を払った。
ハイオークは突進を止めず、シンシアが跳ね飛ばされた。