6 魔獣討伐2
二人の討伐は続きます。ハルトの動きが良くなり、互いの信頼も増して行く。
畑に行くと、大猪の魔獣が寝そべっている。
2人に気づくと、起き上がり、ブフォと一声上げて、突進してきた。
突進を躱して、背中に一撃した。
少しよろけたが、立ち直る。
掌を向けて氷槍を放つが、頭を振って砕いた。
ハルトが風刃を放つが、厚い皮と脂肪で跳ね返してくる。
やはり、槍でないと通らない。
風刃を連発しながら駆け寄ると大猪も突撃して来る。
ぶつかる一瞬、レオンは槍を立てて跳躍し、着地すると同時に槍を後ろに振り抜いた。
槍先が大猪の後ろ脚を断ち切ると、横倒しになった大猪の首をハルトが上から切り落とした。
「ハルト、いいぞ。」
「上手くいった。」
ハルトは嬉しそうだ。上達している。
村長に報告して、猪をリュックに取り込む。
ギルドで、討伐報酬、金貨5枚と買取り金貨2枚、それに魔石代金貨5枚、合計金貨12枚を貰った。
まだ、時間があるので、そのままモグラの魔獣退治の依頼を受けた。
金物屋に寄って、麻のロープ、ワイヤそれに杭を買い揃えた。
街を出て、依頼の村に向かう。
村長から話を聞いて、畑に行く。あちこちに土の盛り上がりがあり、作物が被害を受けている。
「土の中じゃ。難いな。」
レオンはワイヤとロープを取り出し、モグラの穴にワイヤの輪を作って置き、杭で止め、ロープをつけて、引くとワイヤが締まるように細工した。
ハルトにロープを持たせて、モグラが見えたら、引くように頼んだ。
別のワイヤを、別のモグラの穴に入れ、掻き回す。半時これを繰り返していると、モグラがやっと出て来た。大きい。猪と同じだ。
ハルトがワイヤに付いたロープを引くと、首にワイヤが填まった。
力一杯締め上げると、モグラは潜れなくなった。
非力だと思っていたが、力がある。
槍を突き刺した。だがモグラは逃れようと体を左右に振る。
槍を2度、3度と突き刺すと、動きが弱まり、遂に息絶えた。
「ハルト、あんなに暴れたのに良く押さえたな。」
「必死だった。」
「こんなに力があるとは思わなかった。」
「馬鹿力だけはあるんだ。」
「馬鹿力は一瞬だ。これだけ持てば本物の怪力じゃないか。」
村長に報告して、モグラをリュックに取り込んで、ギルドに戻り、報酬金貨5枚と買取り、金貨3枚、ぞれに、魔石代、金貨1枚を貰った。
「買取りが高いですね。」
「モグラの討伐なんて、普通、失敗する。素材に貴重なものがあるそうだ。」
1日で、金貨21枚になった。
翌日も、2人は依頼を受け、金貨18枚を稼いだ。
「ハルト、稼いだお金は渡してないけど、2人のお金だ。半分渡そうか。」
「いいよ、持っていてくれ。俺は飯と宿があればいい。」
「何かあれば言ってくれ。」
「うん。」
「ハルトは日本に帰りたいよな。」
「何でそんなことを。レオンはどうなんだ。」
「俺とハルトはこの世界に無理やり送られたけど偶然ではない気がしている。何か理由があるはずだ。俺は知りたい。」
「同じことを思っていた。俺の親父はレオンの父親と付き合いがあったんじゃないかな。俺がレオンの父親の話をするといつも笑っていたし、『彼奴らしい』と言ったことがある。」
「知らなかった。」
「この世界に来たときは、帰りたいと何度も思った。だが今は日本に帰れなくてもいい。お前がいるし、出来ることが増えて来た。俺は勉強が嫌いだし、やりたいこともなかった。そりゃ、かあちゃんに会えないから寂しい夜もあるけど、ここでなら出来ることが見つかりそうな気がするんだ。」
「俺も帰ることは諦めた。ハヤトとなら何とかこの世界で生きて行けそうな気がする。」
「そうだな。俺も同じさ。」