3 新米冒険者
野獣の森からの脱出ができるのか。レオンとハヤトが奮闘します。
ハルトが槍を握っているのを確認して、
「待っていろ。狼が来たら、槍を突き出すだけでいい。」
ハルトが頷くと、走る。
レオンに気づいて襲って来た狼の腹を槍で突き刺す。
倒れた狼から、槍を抜くと、狼の群れに火球を放ち、狼が怯んだところに踏み込んで槍を振るって、2匹を切り裂く。
次に襲って来た1匹を拳で頭を殴りつけ、風刃を打ち込むと首が落ちた。
逃げようと背中を見せた最後の1匹がハルトに向かった。
レオンは風刃を放とうと思ったが、ハルトがいる方向だ。
ハルトは迫って来る狼に槍を突き出したが、躱された。
「ハルト、槍を振り回せ。」
ハルトは振り向き様、槍を振るった。
その槍は狼の腹から背中を切り裂いた。
レオンが風刃を放って止を刺す。
「ハルト、やったな。」
「言われた通りにやっただけだよ。」
「それが難しいんだ。ハルトは槍使いの素質があるぞ。槍というより薙刀だがな。」
2人で狼に止を刺して回る。
「大丈夫ですか。」
レオンは3人に声をかけた。
女性冒険者が抱きついてきた。
「命拾いしたわ。」
「ありがとう。」
「強いな。助けてくれてありがとう。」
女性が顔を赤くしてレオンから離れた。
「ごめんなさい。助かったと思ったら嬉しくて。私たちは新米の冒険者なの。薬草採取に来たら、狼に囲まれて。もう、助からないと覚悟したわ。それにしても、魔法と槍も使えるなんて、凄いわね。」
少女は、栗毛のセミロングの髪に青い瞳で、茶のパンツに厚手のスエットに胸、肘、膝に皮の防具を付け、バッグを下げている。武器は持っていない。
3人は、暫く、狼の死骸を見ていたが、落ち着いてきたようだ。
「君たちは冒険者ではないようね。見たことのない服だけどどこから来たの。」
少女は、初めて見る、レオンたちの黒い学生服に違和感を持ったようだ。
「遠くの村から来て、今は、取りあえずこの辺りで生活しています。」
「こんなところで生活って。」
レオンは、答えようがなかった。
「私は、シンシア。緑の集いという冒険者パーティのリーダーをしているの。あなたたちは。」
「僕はレオン、こっちは、ハルト。」
「これから、どうするの。私たちは街に戻るけど。」
「一緒に連れて行って貰えませんか。ここで暮らすのは厳しいので。」
「それはそうでしょう。もう少し、薬草を集めるから、持ち物を取りに行って来たら。」
「持ち物は、これで全部です。」
レオンは背中のリュックを指さした。
「そうなの。じゃ。少しだけ待って、依頼分の薬草を集めるから。」
集めている間に、レオンが、狼に触れてゆく。5匹が消えた。
ハルトが目を大きくして、驚いている。
「ハルトもリュックを持っているじゃないか。」
「僕のバッグにも入るのか。」
「今度試してみよう。」
「アイテムバッグ持ちなの。凄いわね。」
シンシア達3人の後をついて、森を出た。
草原を暫く歩くと、街道に出た。街道を歩く。
「私は、ルキア、こっちがマリウス。皆、冒険者で、同じ村で育った、幼馴染なの。」
少女は、シンシアとほぼ同じ、服装で、小剣を、長身の少年はつなぎを着て、銅剣を下げている。
「冒険者はどんなことをするんですか。」
「私たちは、まだ、ランクが低いから、薬草採取や街の手伝いをして小銭を稼いでいるけど、ランクが上がると、魔獣を討伐して、報酬をもらったり、素材を売ったりしてお金を稼げるようになるわ。今日、君が倒したフォレストウルフはギルドで買取りして貰うといいわ。」
「僕達も、冒険者になれますか。」
「登録すれば誰でもなれるけど、ランクを上げないと、食べていける程稼げるようにはなれない。」
「やってみます」
「君達は強いから、大丈夫よ。」
「必死なだけです。」
「そうは見えなかったわ。武術の心得があるでしょう。」
さらに、1時間程歩くと、高さ5mはある、塀が見えて来た。
街を取り囲んでいるようだ。
塀に扉の付いた門があり、上部にカイル街と書かれた銘板がある。
ケピ帽のようなものを被った、憲兵が、出入りする街の住人、旅人や商人達を止めて、検問している。
「私たちはギルド証があるから、いいけど、君たちは、通行税として銀貨1枚いるわよ。」
「あの、文無しです。」
「貸してあげる。命の恩人だもの。」