1 転移初日
突然現れた人間に興味を持った親猿が顔を覗き込んでいる。
目を開けると、猿の顔が目の前にあって驚いたレオンはガバッと起き上がった。
頭突きを喰らった親猿が逃げて行く。
屋上にいたはずだが、ここはどこだろう。
見回すと緑の木々が生い茂る森の中だった。
屋上にいた後の記憶がない、
立ち上がると、猿の群れが後ずさって行く。
陽の射す方向に歩いてゆくと森の外に草原が広がっていた。
レオンの知っている日本の森や草原とは全く様相が違う。
森から出て小高くなっている見晴らしのいい場所に座り込んだ。
よっぽどの事でも動じないレオンも、今の事態に戸惑っている。
草原には、獣の姿がちらほら見える。
襲われたらひとたまりもない気がする。
不安になり、どうしようかと考える。
安全な場所はないかと見回す。
草原の中に1本の大木が立っている。近づいてみる。
近くなるにつれて、視線が上がる。
幹の周りが10m以上ある巨木だった。
木の上なら、安全かもしれないと登ろうとしたが、掴む所も、足を掛けるところもない。
何かないかと学生服を探るが役に立ちそうなものはない。
背中にリュックがあるのに気付き、開けると、ノートと銀色のナイフというより短刀が入っていた。反りのある片刃で30㎝以上ある。
幹に当てると、豆腐のように切れた。
横と斜めに切り込みを入れ、足がかり、手がかりを付けながら登る。すると高さが8m近い二股に着いた。
そこは4畳半ほどの広さがある。
ここなら、動物に襲われる危険は少ない。
上を見上げて見ると木の実や果物の木が生えている。
食べられるのか不安がカスメタガた人間に興味を持った親猿が顔を覗き込んでいる。
目を開けると、猿の顔が目の前にあって驚いたレオンはガバッと起き上がった。
頭突きを喰らった親猿が逃げて行く。
屋上にいたはずだが、ここはどこだろう。
見回すと緑の木々が生い茂る森の中だった。
屋上にいた後の記憶がない、
立ち上がると、猿の群れが後ずさって行く。
陽の射す方向に歩いてゆくと森の外に草原が広がっていた。
レオンの知っている日本の森や草原とは全く様相が違う。
森から出て小高くなっている見晴らしのいい場所に座り込んだ。
よっぽどの事でも動じないレオンも、今の事態に戸惑っている。
草原には、獣の姿がちらほら見える。
襲われたらひとたまりもない気がする。
不安になり、どうしようかと考える。
安全な場所はないかと見回す。
草原の中に1本の大木が立っている。近づいてみる。
近くなるにつれて、視線が上がる。
幹の周りが10m以上ある巨木だった。
木の上なら、安全かもしれないと登ろうとしたが、掴む所も、足を掛けるところもない。
何かないかと学生服を探るが役に立ちそうなものはない。
背中にリュックがあるのに気付き、開けると、ノートと銀色のナイフというより短刀が入っていた。反りのある片刃で30㎝以上ある。
幹に当てると、豆腐のように切れた。
横と斜めに切り込みを入れ、足がかり、手がかりを付けながら登る。すると高さが8m近い二股に着いた。
そこは4畳半ほどの広さがある。
ここなら、動物に襲われる危険は少ない。
上を見上げて見ると木の実や果物の木が生えている。
特にたわわに実る桃のような果実は食欲をそそる。
食べられるのか不安が掠めたが、空腹に耐えられず捥いで食べてみた。
食べ応えのある果肉の甘い果実だった。旨い。
2個、3個と捥いで、食べる。
腹が満たされて、落ち着いてきた。
リュックからノートを取り出し開いてみると何か書いてある。
最初のページに『〇〇より』と書かれていた。
次をめくると、
『君たちをこの異世界に転移させた。今いる場所は異世界のどこかだ。今はここまでしか出来ない。ここでは、生きるのは過酷だが、頑張って欲しい。この世界の言葉を解するようにしておいた。魔法が使えるよう魔力も与えておいた。
追伸:オリハルコンの小刀に切れぬものはない。』
とある。
〇〇とは、何か。どうして、転移させたのか、一切、書かれていない。
屋上で雷に打たれた気がする。それだけで、一瞬のうちにこの状況になった。
文章に違和感がある。もう一度読んでみる。
『君たち?』
どういうことだ。自分以外の誰かがいるのか。
あの時、一緒にいたのは、自分(一色蓮音)の他に屋上でノートに火を付けようとした、甲斐大翔、子分格の大山日向と稲田雄太。
確かめるしかない。
レオンは大木から降りて、自分が倒れていた森に引き返した。
猿たちの群れは、木の上にいた。
周囲を見るが、人の気配はない。
大木に戻ろうとした時、繁みの中に黒い何かが見えた。
短刀で草木を掃ってみた。
「ウアッ。」と声がした。
藪の中で、甲斐大翔が、震えながら、蹲っていた。
「蓮音か、蓮音どうなっている。ここは何処だ。」
レオンは、黙って暫く見つめていたが、何も言わず、森を出た。
ハルトが後をついてくる。
大木に戻ると、二股まで登った。ハルトは下から見上げている。
「そんなところにいると、獣に食われるぞ。」
ハルトが足を掛け登り始めたが、途中で諦めた。
「僕には無理だ。」
レオンは、木の蔦を垂らした。
「切り込みに足を掛けるんだ。」
何とか登って来た。
「すまなかった。許してくれ。仲間に煽られて、酷いことをした。」
涙を流して、土下座している。
果物を捥いで、渡してやった。
ハルトは、レオンの眼をみて、大丈夫と思ったのか、齧り付いた。
2個、3個と夢中で食べている。
満腹になったのか、倒れ込むように眠ってしまった。
レオンは、ハルトに対して、馬鹿な子犬が悪さをしている位にしか思っていなかった。まして、恨みなどない。それと帰宅部だったハルトは、体力も力もないように見えた。
ハルトのリュックを外し、中を覗いてみた。
同じく手紙と銀色の短刀が入っていた。
獣が襲って来た時、何かあった方がいいと、レオンは巨木の枝を切って木刀を作った。
巨木には、色んな生き物が住んでいる。
鳥、リス、昆虫、蛇など。
上の方には、他の生き物もいるようだが、直接影響なさそうなので考えない。
森の方を眺めていたら、狼に追われる子猿が見えた。
草原を、両手両足を使って、懸命に逃げている。
狼の後を、親猿が追いかけている。
下に降り、木刀を掴んで、子猿の方に向かって走った。
子猿が狼に追い付かれそうだ。
レオンは石を拾って、投げた。
運よくか悪くか、狼の頭に当たった。
狼はレオンに目を止めると、狙いを変え向かって来る。
その間に、親猿が子猿を抱えて帰って行く。
レオンは、巨木まで戻ろうと、駆けた。
追い付かれそうになり、振り返ると同時に木刀を振りきると手ごたえがあった。
頭から血を吹き出しながらも、狼が木刀に嚙みついている。
木刀が動かなくなる。
でも、離さない。離せば、終わりだと、第六感が告げている。
睨み合いになった。