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とある悪魔と意外にも幸せに満ちた日々を送っていたら、私を陥れた義妹たちへ神罰が下りました  作者: 万丸うさこ


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第12話 理由を知りたい

 「でもさー」と、マーディンさんが唇を尖らせながら続けた。


 「現実問題として、宝石龍は愛し子が幸せを感じてないと鉱石を作る力を溜めらんないわけよ。愛し子が不幸だってわかったら、ドッカン! 一発で国消し飛ばすよ? つーかオレがそうするし」


 宝石龍と愛し子の関係は、結末を必ず〝幸福〟で語られる。

 フランカのようにその立場を乗っ取られて、衰弱死一歩手前まで追いつめられた愛し子の話など聞いたことがない。


 だから幸せでなかった愛し子とその宝石龍が、いったいどういう結末を迎えるのかをフランカは知らない。


 それがもしマーディンさんの言うようにドッカン――つまり、愛し子を不幸にした者たちを国ごと消滅させることが結末なのであれば、少し前なら確実にそうなっていただろう。


 宝石龍が今〝ドッカン〟しないのは、フランカが幸せを感じているからだ。


 でもそれは、自分を〝じゃないほう〟として扱ってきた国や、フランカが正しい愛し子だと知りながらその立場を乗っ取ったペトロネラから与えられた幸せではもちろんない。


 飛び立つ鳩の白い息が存外綺麗に見えたことを、温かい朝食を食べながら思い出す。そんなささやかなことを幸せに変えてくれたのはマーディンさんだ。


 何も知らない国民たちに罪はないけれど、たとえばここのカフェのオーナーのように店の土地が一等地になったことを喜ぶのならば、愛し子の像があるこの広場を誰が整備したのかを気に留めてくれてもいいのではないかとも思う。


 広場の整備だけでなく、こうした事業のことは責任者や請け負った業者のことなど全て公に公開されている。

 フランカ自身も責任者として足を運んだこともあったし、彫刻の素材を扱う業者や地面の整備を行う現場の職人たちを顔を合わせて話をしていた。


 ともに仕事をした人たちには貴族もいたし、平民もいた。

 彼らは事業を進めるフランカのことをなんだと思って接していたのだろう。


 どうして皆、〝愛し子ペトロネラをいじめていた悪女フランカ〟という、誰かが流した噂を鵜呑みにするのだろう。


 結局自害の手段がなく命を終わらせることができなかったフランカは、ペトロネラの言葉に従うのは業腹でも寿命が尽きるまでは民のために頑張ろうと思っていた。

 けれどフランカのそういう努力をないがしろにし、何も知ろうともせず、目先のことにだけ喜ぶ国民たちに少しだけ嫌気がさした今は、〝ドッカン〟も致し方ないのではないか……なんて、ちょっと思うのだ。


 実際はきっと〝ドッカン〟はないだろう。

 だって今、マーディンさんのおかげでフランカは幸せを感じているから。


 だけど、だからこそ不思議なことがある。


 「マーディンさん、あなたはなぜ……」


 いったい何の見返りがあって、義妹に愛し子の立場を乗っ取られたふがいないフランカのもとに現れて、愛し子と宝石龍に必要な幸せをくれたのだろうか。


 「どうして、私をこんなにも大切にしてくれるのですか?」


 フランカの何がマーディンさんの琴線に触れたのか。

 塔で寂しさで凍えそうになってつい言ってしまった「最期の時まで一緒にいてほしい」という願いを、こんなにも丁寧に叶え続けてくれるのはなぜだろう。


 不思議な力を持つ悪魔であるマーディンさんなら、こんな面倒くさい願い事を叶えるのだって魔法ひとつで済ませられるだろうに。


 たとえばフランカを死ぬまで眠らせて、マーディンさんが側にいる夢を見せ続けるだけでいい。それでもきっとフランカは幸せだったと思う。


 「マーディンさんが私に幸せをくれる理由を知りたいのです」


 真っ赤な瞳を見つめてそう言うと、マーディンさんはちょっと面食らったような顔をした。

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