表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

かさぶた

作者: 森くん

あの夜は酷く疲れていた。たくさん歩いたのはもちろんだけれど、連日先生に会っていた私は心も体も疲れ切っていた。言うまでもなく先生と過ごすことはとても心地よく、とてもありがたい時間に感じていたけれど、私にも現実世界が存在するのだ。どんなにここはパラレルワールドだからと先生が言おうが、そこはまぎれもなく私の生活する現実なのだ。


深夜自宅に帰りシャワーを浴びた時、鋭い痛みを両足に感じた。先生と街を歩いていた頃から薄々感じてはいたが、酷い靴擦れだった。慣れないヒールを履いたせいか、それは両足かかとの真ん中に大きく存在していた。しばらくすると痛みに慣れ、じんわりと痺れのような緩い痛みだけが残った。


両かかとにできた靴擦れを手当し、次の日も先生に会うためバスの時刻を確認する。先生と過ごす最終日だった。


前日とは違いその日はスーツ姿の先生がいた。私を見つけて微笑みながら近づいてくる先生に吸い寄せられるように隣を歩いた。どこにも行かなくて良かったし、同じ空間に存在していられたらそれで良かった。


先生の飛行機の時間が迫っていた。時間を見ないようにして先生と私は話し込んだ。私は先生の一言一言に喜び、恥ずかしがり、傷付いていた。その感情の全てが心臓に傷を作っていくようだった。


両かかとの靴擦れの傷はいづれかさぶたになるのだろう。そしてきっと、近いうち、そこに傷なんか無かったように忘れてしまう。それでいいような気もするし、ずっと傷付いたままでいたい気もした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ