第69話 人生二周目の教員
6月17日
空調機器が唸り声を上げる頃には
日下部の同窓生達を筆頭にカラオケで盛り上がっていた
「神チ神チ神チ~~♪
神の太腿レベチ過ぎてマジ神チ~~♪
山と間違え昼過ぎまで寝ていた千年前の午後~~♪」
「「「「「 孫悟空じゃぁあるめぇし♪ 」」」」」
月衣に愛の手をする同級の中には嘉村と中西も混ざっている
隣の席で酔いを冷ましている恵美に寄り添って上げている日下部
そんなラブラブな二人と柴塚は談笑していた
「恵美さん大丈夫ですか?」
「酒が弱いだけですのでお気になさらず……」
「全員高校時代からの付き合いって聞きましたけど
お二人がお付き合いされたのも高校で?」
「えぇ…… 町内の秋祭りで距離が縮んだのが始まりです
ただ…… ちょっと色々説明出来ない彼との馴れ初めもありまして」
「説明が難しい……?」
「陽君…… フフッ…… 人生二周目なので」
「ちょぉちょぉ…… そんなこと言ったら柴塚さんは困惑するでしょうよ」
ふざけているのかマジなのか 酔った勢いなのかなと柴塚は話に合わせる
「ヘェ…… じゃぁ日下部先生 この先に何が起きますか?」
「っ…… いやいや参ったなぁ」
するとカウンターから吉野が参入して来て
「大戦争よ」
「えぇっ?!!!」
「おい染飴……」
柴塚は吉野の目をジッと見つめる
何故か嘘を言ってるようには見えなかった
「……本当なの?」
「ンフフ…… な~~んてね♪」
「もしかして占い師さんとか?」
「残念だけど個人の情報は見れません
インパクトの強い 大々的にニュースになるレベルじゃないとね……」
「あぁ大予言って奴ですね 雰囲気が何かオカルトチックって感じで様になってます」
上機嫌でお酒を飲んでいる吉野
日下部は少し表情が曇っていたが人知れず元に戻っていた
テッペンを跨いであっという間にお開きの時間
「ごめんなさい嘉村先生…… あまりお話出来なくて……」
「スナックに来たんだから 求めていたのは寧ろ今夜みたいなのよ!!
柴塚さんがうちの学校に来てくれなかったら このパーティーにお邪魔できなかった」
「いえいえそんな…… こちらこそ誘って頂いてありがとうございました」
「こっちも元気でた!! トアル探偵事務所の柴塚さんね……
学校からも近いしまた飲みましょう……!!」
「えぇ勿論です!」
タクシーに乗せて見送る柴塚
日下部達も久々に合流した友人達と別れを告げていた
「本気でお前バイクで帰るのかよヤナ」
「おぉよ…… 行きも漫遊 帰りも漫遊
テレビだけじゃぁ得られねぇ珍道巡りて諸国満開ってな?!」
「相変わらず何言ってるか分からねぇぜ 関東でも達者でな!!」
「おぅ!! 月衣も店守っとけよ?! また帰ってくるからな!!」
「潰さねぇよバァカ!!」
エンジンを吹かして木島は遠くの彼方へ 正確には交差点の赤信号で一時停止してたが
そして恵美と桃坂も別のタクシーで帰ろうとしていた
「今日は桃坂の家で泊まるんだろう?」
「うん…… 陽君も遅くまで飲まないようにね」
「分かってる」
二人を見送り 残ったのは柴塚と中西と日下部と吉野の四人
劉親子は後片付けの為 店の中へと戻っていた
「嘉村先生と同じ方向だろ? 乗らなかったんですか柴塚さん?」
「えぇちょっと風に当たりたくて…… あと余韻がまだ残ってまして
今日は久し振りに楽しかったです ここ最近ゆっくり出来なかったものですから」
「そりゃぁ良かったです!!」
「日下部先生と中西先生が楽校を見捨てていないのも嬉しかったですし……
その…… 他の教員達は……?」
「残念ながらほとんどが退職されて行かれました 退職金の事も含めてテンヤワンヤですよぉ」
「でも大丈夫です
私と日下部先生が軸となって生まれ変わったフリースクールを作ってみせますから」
風格が段違いで頼りになる中西先生に
柴塚はふと失礼な質問をしてしまう
「中西先生って実は本当に雪女さんとか?」
「えっ……!!!? ちっちち違いますよぉ……」
「その動揺はどっちなんですか?!」
「ではタクシーが来たので私も帰らせて貰います」
はぐらかされてしまった そして最後は柴塚が帰るタイミングだが
「さっきの大戦争って本当に出鱈目なんですか吉野さん?」
「さぁ…… 人生二周目の男にでも聞いて見れば?」
「俺に振るなよ染飴……!?」
「私はまだ一周目なので何とも言えませんねぇ~~」
何故か親密で秘め事を共有し合っているかのような二人
タクシーは来てしまい そこを深掘りするのも野暮ったいので聞けなかった
「では柴塚先生…… 妻夫木や日野達のこと よろしくお願いします……!!」
「任せて下さい!! ……と言ってもまだまだ難局の渦中なんですがね」
全員が帰って日下部と吉野がスナックに戻ろうとする
「何であんなこと言ったんだよ? 柴塚さんが本気にしたらどうするつもりだったんだ……」
「だって本当の事なんですよね? 松助さんが知っていた情報でしょ?」
「まだそれで呼ぶのか俺のこと……」
ここでは明かされない二人の特殊な関係
語られるのはまた別の物語
「皿洗い手伝ってくれ陽!! ……人数が人数だっただけに終わらねぇよぉまんず!!」
「お前の母ちゃんは一人で切り盛りしてただろうが……
まったく手伝ってやるからバイト代出せよ? 現時点で俺は無職なんだからよぉ」
「……じゃぁ私は帰るから」
手伝わされるのを察した吉野はそそくさと退散
掃除を終えた日下部と月衣は朝まで飲み明かしたそうな




